ばけもの子供の物語 膨
どこかの彼方に、膨らみ続けるばけものの子供がいた。
最初は小さかったのに、どんんどん膨らみ続けるばけものが。
ばけものはなぜか膨らみ続ける。
どんどん膨らんでいく。
人より大きく膨らんでいく。
問答無用で膨らんでいく。
待ったなしで膨らんでいく。
建物よりも、膨らんでいく。
タワーよりも、膨らんでいく。
町よりも、膨らんでいく。
そうして膨らんでいったばけものは、やがて一つの惑星になった。
その惑星になったばけものは、大地が自分を支えきれなくなったため、自分がいた惑星をはなれて、ふよふよと宇宙を漂う。
なにもない空間をふよふよ。
そうして彷徨っている間に、どこからかやってきた宇宙船がそのばけものの惑星に着陸。
「故郷が滅亡してしまったけど、これは幸いだ。今日からここに皆で住もう」
その者達は、生きていた惑星を失った人々だった。
長期間の漂流を終えた人々は喜びながら、そのばけものを大地にして住み始めた。
しかしそれは、惑星ではなくばけもの。
ある日、膨らむ事に飽きたばけものが、やせていく事にした。
だから、自分達の足の下の地面がおかしくなっていくことに気が付いた人々が大いに戸惑った。
「どうして惑星が小さくなっていくんだ!?」
「ここは惑星じゃなかったのか!?」
「せっかく見つけたのに!」
人々は再び宇宙船にのって、新しい星を見つけなければならなくなった。
やせてすっきりしたばけものは、自分の体の上でそんな事があったとも知らずに、ふよふよと真空の宇宙をさまよう。
また、やせていることにあきたら、膨らもうとそう思いながら。