第36話 ラウリーン王国の王都
現在、LINE漫画にて縦読み漫画を連載中の本作ですが、続編が出るにあたり追加のストーリーを書き修正いたしました。
区切りがいいところまで書いていこうと思います。よろしくお願いします!
縦読み漫画もとても面白く、こちらもお読みいただけて楽しんでいただけると幸いです!
一週間後、私とシリウス様は馬車に揺られていた。
とても揺れが少ない馬車で、王都に行くのでとても高級な馬車を用意されていた。
馬車に揺られ続けること数日間、ようやく今日、ラウリーン王国の王都に着く予定だ。
「こうして数日間、馬車に揺られ続けると、ルンドヴァル辺境伯家に嫁いだ時のことを思い出しますね」
私が隣に座っているシリウス様に話しかける。
「ふむ、そうか。あれはもう一ヶ月半以上前か」
「あの時はこんな幸せになって、愛する人と母国の王都に来るとは思いませんでした」
「……そうか」
少し恥ずかしそうに頬を赤らめて、そっぽを向くシリウス様。
いつもはカッコいいのだが、こういう仕草は可愛らしくて愛らしいと思うわね。
「俺も、一ヶ月半前まではまさか聖女を愛するとは思わなかったな。一ヶ月半前の俺に『お前は今後、聖女を一生愛し続けることになるぞ』と伝えても、絶対に信じないだろう」
「ふふっ、落第した聖女と言ったら、逆に信じるかもしれませんよ?」
「自分で言うのもなんだが、俺はそれほど冗談が通じる方でもないな」
そんなことを話していると、ようやく王都に到着したようだ。
王都は大きな壁に囲まれていてとても栄えている様子で、城下町にも多くの人が行き来していた。
私はラウリーン王国にいた頃は、伯爵領から出たことがないので、王都に初めて来た。
ルンドヴァル辺境伯領の城下町もすごかったけど、ここも同じくらいすごいわね。
いやそうなると、王国の王都と同じくらい栄えている辺境伯領の方がすごいのかしら?
私が辺境伯領を贔屓目で見ているだけかもしれないけど。
王都に入ってからもしばらく馬車に揺られていると、タウンハウスに着いた。
辺境伯家の屋敷ほどじゃないけど、かなり立派な屋敷だ。
すでにこちらで雇っていた使用人が掃除をしてくれているようで、中もとても綺麗だ。
「王宮での舞踏会は一週間後だ。長旅で疲れただろうから、ゆっくりと休んでくれ」
「はい、ありがとうございます」
とてもいい馬車だったから疲れは少ないが、お言葉に甘えさせてもらう。
しばらく用意された部屋で休み、夕食もシリウス様と一緒に食べた。
料理人や食材が違うからか、辺境伯家では味わえないような食事で美味しかった。
だけど私はもう辺境伯家で慣れてしまったからか、あちらの方が美味しく感じるわね。
「疲れていると思うが、明日から社交界に出ることになる。王宮での舞踏会の練習と思ってくれ」
「はい、わかりました。でも社交界なんてほとんど出たことないので、大丈夫でしょうか」
「下手なことをしなければ問題ないと思うが、あとで社交界の軽いマナーを勉強するか。俺も久しぶりだから見直したい」
「はい、お願いします」
社交界にもマナーがあるので、しっかりと勉強しておかないと。
夕食をいただいて、部屋に戻って一息つく。
「リリアナ様、お茶をどうぞ」
「ありがとうネリー、いただくわ」
今回の旅にもネリーはついてきてくれていた。
あの作戦の時ともいい、ネリーは本当に素晴らしい使用人ね。
別についてこない人、レイがダメな使用人というわけじゃない。
レイはレイにしかできない仕事もあるだろう。
彼も今は王都まで来ていて、シリウス様と共に仕事をしている。
こっちに来てまで仕事がある、というか隣国の王都だからこその仕事があるだろう。
辺境伯家は魔獣を倒した後に取れる魔結晶で儲けているから、その魔結晶の事業で繋がっている貴族の家がいくつかある。
この国の王都でもそのような貴族がいるから、そことやり取りをしたり挨拶しに行ったりするのだ。
私も社交界のマナーをしっかり学んで、シリウス様の役に立たないと。
よし、王都でも頑張ろう!
そして、翌日。
私はシリウス様と共に、社交パーティーに来ていた。
ある貴族が保有している屋敷の庭で開かれていて、立食パーティーのような感じだ。
会場の庭は綺麗な花々が飾ってあって、いくつか置かれているテーブルの上にはお菓子が置いてある。
座るところも会場の端に置いてあるが、ほとんどの人は立って会話をしているようだ。
「リリアナ、大丈夫か?」
会場に到着して、隣に立ってエスコートをしてくれるシリウス様。
いつもよりも髪もきっちりセットしていてカッコいい。
「緊張しますが、大丈夫です」
私ももちろんドレスを着ているけど、なんだか落ち着かない。
隣に立つシリウス様の腕に手をかけているけど、その手が少しだけ震える。
会場に着いてから、参加者の人達から視線をとても感じる。
おそらく隣国のルンドヴァル辺境伯家が、こちらの国の社交パーティーに参加することが珍しいからだろう。
あとはシリウス様の顔を見て見惚れている令嬢も何人かいるようだ。
まあ、彼はカッコいいから仕方ない。
だからいろいろあって緊張して、手が震えてしまっている。
これが彼に伝わっていないといいけど……。
「リリアナ、そのドレスは見たことがないが、こちらの王都に来て買ったものか?」
「あ、はい。ネリーが準備してくれていたようです」
「そうか、とても綺麗だな」
「あ、ありがとうございます」
いきなり褒められて少し照れてしまった。
このドレスは急遽、この社交パーティーのために買った服だ。
最初は舞踏会しか行かないと思っていたから、ドレスの数を持ってきていなかった。
王都に着いていきなり違うドレスを準備することはできないから、ネリーが今日の朝に服の商人を家まで呼んでくれたのだ。
それでいくつか私に合うものを商人と選んでくれた。
私はよくわからないので、ネリーにだいたい任せた。
『シリウス様もシリウス様です。舞踏会だけだと思ってドレスを選んでいましたが、王都に着いてから他のパーティーにも出ると言うなんて』
社交界では同じドレスを何度も着ることは、そこの家がドレスを買うお金もないほどの貧乏と思われてしまうようだ。
だからルンドヴァル辺境伯家のために、ネリーが朝から動いてくれた。
あの時のネリーは、シリウス様に怒っていて少し面白かったわね。
思い出し笑いをしそうになって、私は口元を手で隠す。
「ん、どうしたんだ?」
「いえ、すみません……今日の朝、ネリーとの会話を思い出してしまって」
「どんな会話だったんだ?」
「えっと……」
あの時にネリーが私の服を選びながら言っていたのは……。
『シリウス様にお伝えください、リリアナ様――』
「――そろそろデリカシーを身に付けないとリリアナ様に嫌われますよ、って」
「ちょっと待ってくれ、何の会話をしていたんだ?」
「ふふっ」
シリウス様の反応も面白くて、つい声を出して笑ってしまった。
いけない、ここは社交パーティーの会場。
いきなり声を出して笑ったら変な目で見られてしまう。
ただでさえ私とシリウス様は注目されているのに。
「ネリーの冗談ですよ」
「本当か? ネリーなら本気で思ってそうだが……」
「どうでしょうか、私はわかりませんが」
「むぅ、そうか……まあ努力していくつもりだ。嫌われたくはないしな」
少し拗ねているようなシリウス様がなんだか可愛らしい。
「大丈夫ですよ、シリウス様。デリカシーがなくてもあっても、私が嫌いになることはありえませんから」
「っ……そうか?」
「はい、もちろんです」
「それなら嬉しいが……だが努力はしていくつもりだ」
「ふふっ、お願いします」
こんな話をしていると、緊張が少しだけなくなって手も震えなくなっていた。
これなら大丈夫そうね。
よし、ほとんど初めての社交パーティー、頑張らないと。
最初に主催者の挨拶があって、軽く話した後に「乾杯!」というかけ声と共にパーティーが始まった。
私はお酒ではなくぶどうジュースを飲んでいる。
お酒を飲んでもいい年齢だけど、まだ飲んだことないからここでは飲まないようにしないといけない。
始まった直後、先ずは主催者に挨拶をしに行くというのが社交パーティーの決まりだ。
「本日はお招きありがとうござます、伯爵様」
「おお、シリウス様。お久しぶりでございます。ルンドヴァル辺境伯はあなたが離れても大丈夫なのですか?」
「はい、問題ありません」
「そうですか、さすがシリウス様ですね。ところで、そちらの方は?」
「はい、ご紹介します。私の妻のリリアナです」
シリウス様にそう紹介されて、少しドキッとした。
彼に紹介されることはそうそうないからこそ、恥ずかしくなってしまった。
その動揺を表情に出さないようにしながら、笑みを作って挨拶をする。
「お初にお目にかかります。リリアナ・ルンドヴァルと申します。以後お見知りおきを」
「ルンドヴァル辺境伯夫人、よろしくお願いします。えっと、辺境伯家に嫁いだということは聖女様でしょうか?」
「はい、そうです」
「そう、なのですね……」
主催者の伯爵様がチラッとシリウス様のことを見る。
シリウスが聖女嫌いということは、隣国でも有名なのだろう。
私も嫁ぐ前はそう聞いていたから。
だから伯爵様は少し気まずい顔をしたようだが……。
「私は彼女が、リリアナという聖女が私のもとに嫁いでくれて、非常に幸せです」
「なるほど、それは素晴らしいですな」
シリウス様の言葉に、私は表情を崩さないようにするのが精いっぱいだった。
多分、顔は赤くなっている。
シリウス様が彼の誤解を解くために言ったのはわかっているけど。
恥ずかしいけど、とても嬉しかった。
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