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第31話 愛する権利



 そして、翌日。

 朝食をいつも通り、リリアナと一緒に食べる。


 一ヶ月前までは、こうしてダイニングルームで食べることも少なかった。

 ずっと仕事が忙しく、執務室に適当に食事を持ってきてもらっていた。


 自分では気づかなかったが疲れが溜まって集中力も落ちて、仕事の効率も下がっていたらしい。


 今はこうしてしっかり食事を摂ることによって、仕事の効率なども上がった。


 これも全部、リリアナがいてくれたからだ。

 リリアナがいなければ、俺は今も一人で執務室で惰性的に仕事をしながら、食事をしていただろう。


「シリウス様?」

「ん、なんだ?」

「あ、いえ、何か考え事をしながら食べていらしたようですが、大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫だ。少し、君のことを考えていた」

「私のことですか?」


 不思議そうに首を傾げるリリアナ。

 そういった仕草すら愛おしいと思ってしまうのは、惚れた弱みというものなのだろうか。


「リリアナと一緒に食事を摂るのは、とても楽しいと思っていたところだ」

「えっ? そ、そうですか? それなら私も嬉しいですが……」


 リリアナは少し照れたように目を逸らした。

 特に食事をしている時は話したりすることはないのだが、この空気感が好きだった。


 ……部屋の側で控えているレイとネリーが、ニヤニヤしているのが目に入って少しだけイラつくが。

 まあそれも、楽しいと感じる要因かもしれないな。


 朝食を食べ終えて、リリアナに声をかける。


「リリアナ、後で裏庭に来てくれ。そこで、大事な話がある」

「はい、わかりました」


 リリアナにそう言ってから、俺は先に裏庭へと向かった。


 裏庭は庭師に管理されているから、とても綺麗な花々が咲いていた。

 裏庭の真ん中あたりにテーブルと椅子があり、周りの景色を眺めながらお茶が出来るようになっている。


 すでにそこにはお茶と菓子が置いてあった。

 俺は二人掛けの椅子に座ってしばらく待っていると、リリアナが裏庭に来てくれた。


「お待たせしました、シリウス様。なぜかネリーがすごい丁寧に支度をしてくれて」


 ネリーのやつ、俺が何を話すかわかっているのか。

 俺は立ち上がり、リリアナを迎える。


「いや、呼び出したのはこちらだから、待つのは当然だ」

「ありがとうございます」


 リリアナがそう言って微笑むと、俺もなぜか口角が上がってしまう。


 丁寧に支度をしたと言っていたから、確かにとても美しい服、髪飾りをしている。


 リリアナの美しさがより引き出されるようだ。

 もちろんリリアナの美しさは外見じゃなく、心や内面が一番なのだが。


 今も周りにある花々を見て、楽しそうに笑っている。


「綺麗だな、リリアナ」

「はい、裏庭にはそこまで来たことがなかったですが、こんなに綺麗なんですね」

「季節によって花も変わる。もう少し経てば、違う景色が見えるだろう」

「そうなんですね、楽しみですね」


 そう言って花よりも可憐な笑みを見せるリリアナ。


「ああ、その時はまた一緒に見よう」

「はい」


 こう話しているだけでも幸せなのだが、今日は大事なことを話さないといけない。


「リリアナ、座ってくれ。お茶や菓子もある」

「はい、失礼します」


 リリアナが座って、俺もその横に座って軽くお茶を飲みながら話す。


「昨日の疲れは残ってないか? 山道を歩くのも慣れてないから大変だっただろう」

「大変でしたが、お風呂に入ってぐっすり眠れたので、すっかり疲れは取れました」

「それならよかった。魔力も問題はないか?」

「はい、全く問題はありません」


 あんな大魔法を何回も撃ったら数日は魔力が戻らなくて、身体に不調が生じるのだがな。

 まあ体調がいいのなら問題はないだろう。


「……リリアナ、作戦が終わって帰ったら、大事な話があると言ったな」

「はい、そうでしたね。なんでしょうか」


 俺はようやく、話を切り出した。

 緊張で口の中が渇いて、言葉が上手く出てこない。


「その、話というのは、俺達の関係についてだ」

「私達の関係、ですか?」


 リリアナが少し眉を顰め、姿勢を正した。


「そうだ。前にも少し話したかもしれないが、契約のことについても、話したいと思う」

「契約について……あっ、聖女の魔法などについてでしょうか?」

「ん? あ、ああ、そうだな」


 本当は全然違うところについて話したいのだが、俺は曖昧に頷いてしまった。


「確かに聖女の魔法は何度も使ってしまいましたし、あの契約の内容は変えてもいいと思います」

「確かにそうだ。だからあの契約は全部に破棄したいと思っている」

「はい……えっ? 全部、ですか? 聖女のところだけじゃなく?」

「……あっ」


 しまった、本当は俺がリリアナに気持ちを伝えてから、契約を破棄したいと伝える予定だったのに。

 だがもう、ここで言うしかないだろう。


「ああ。あの契約に書いてあったことを、俺が破ってしまったからだ」

「シリウス様が? 聖女のことに関しては私も合意してましたし、むしろ私が破ったのではないでしょうか?」

「いや、そこじゃない……その、互いに相手を愛さないこと、というところがあっただろう」

「確かにありましたが」

「俺はその契約を、破ってしまった」

「……えっ?」


 リリアナが目を丸くして、驚いたように固まった。

 俺は勇気を振り絞り、告げる。



「リリアナ……君が好きだ。愛している。どうかあの契約を破棄して、俺にリリアナを愛する権利を、くれないか」



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― 新着の感想 ―
愛さなくていいよ 契約続行しなさいよ 本当めんどくさいな
[一言] やっと言えましたね。
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