出会いと魔法
1週間も間を開けてしまいました.....
僕はもう少しで4歳の誕生日だ。
前世同様に誕生を祝うという文化はどこにでもあるようで、僕は固形物も少しずつ食べれるようになってきた2歳の頃にはケーキが出てくるようになった。
砂糖は高級品らしく、甘いケーキが楽しめるのは誕生日だけなのだ。
甘党だった僕は、これが楽しみで仕方ない。
そういえば、最近家に豪華な服を着た人が来るようになった。
貴族か何かだろうか。
確か僕の記憶では現世の中世ヨーロッパでは、騎士は貴族の下の位だと聞いた事があるから、父さんの上司とかなのかもしれない。
そんな事を思っていると、丁度その貴族のような人が家に訪れていた。
「ご機嫌よう」
僕は粗相のないように、かしこまって挨拶する。
窓からの光が相手の金色の髪を照らす。
「ご機嫌よう。そんなに畏まらなくてもいいんだよ?」
物腰柔らかな人だった。
怖い人じゃなくて一安心。
でも、何かあると父さんに迷惑がかかりそうなので、僕は庭に出る事にした。
ーーーーー
特にやることも無いので、身体強化をかけて庭を走りだす。
僕の家はとても広く小学校程度の大きさで、庭はグラウンドのように広い。
小さな体ではグラウンド一周するだけで疲れてしまいそうだが、身体強化のお陰でかなりの持続力を持って走ることができる。
家の花壇の近くまで差し掛かった所、その子は花を見つめていた。
淡いピンクの髪とタレ目が特徴的で、幼いながらも目鼻立ちの整った顔。
同い年位だろうか?
話しかけてみようかな?
僕はその子に近づく。
「君、花好きなの?」
急に話しかけられて驚いたのか、少し黙ったあと、「うん」と頷いた。
「そうだ、これあげるよ」
僕は庭の花を1つ摘み、この子に渡す。
「いや、いらない」
あっさり断られてしまった。
何も考えずに抜いてしまったけど、母さんの花壇だし後で怒られるかも。
まぁいいや。
「君、名前は?」
「名前を聞く時はまず自分からでしょ?」
「どこにでもあるもんなんだね」
「?」
声に出ていたようだ。
これは失敬。
でもそれもそうだ。
「僕はアンリ・エルシア」
「私はアリス・キャロル!よろしくね!」
その子、アリスはそう言って笑った。
ーーーーー
僕はアリスに連れられて森に来ていた。
母さんが言うには森には怖いお化けがいるらしいが、アリス曰く「そんなの出るわけないよ」との事。
確かにお化けが出るって言われても僕の精神年齢は20歳後半、そんなのにビビっている訳ではない。
決してない。
「アンリは外に出た事がないの?」
スカートのままヤブを超えていくアリス。
大人しそうな子だと思っていたが、意外と活発なのかもしれない。
「そうなんだ。これが初めて」
「ふーん、珍しいね」
素っ気ない返事をする。
「庭が広いからいっつも庭で満足しちゃうんだよね」
庭よりも外に出る機会なんて無かったし、あんなに広いとそれより外に出る事なんて考えてなかった。
「確かにお庭広かったよね!私も広いお庭で毎日遊びたいな〜」
「いつでも遊びに来ていいんだよ」
1人でいてもやる事なんて魔法の練習ぐらいだし、父さんは騎士としての仕事で帰ってこない。
兄さんも剣術学校の寮で過ごしているからありえないぐらい暇なのだ。
「ほんと?やったぁ!」
アリスは無邪気に笑う。
やっぱり話し相手が居ると全然違う。
僕らが他愛無い話をして、森を探検しているとどこからか地響きがする。
「行ってみよ!」
アンリは興味津々だ。
かくいう僕も何が起こったのか気になる所だ。
「うん、行こうか」
僕らは音の鳴る方へ向かった。
僕は気づかなかった。
森に動物が1匹もいなかったことに。
ーーーーー
ズドン、ズドンと地響きは一定のリズムで進んでいく。
だんだん近づいているみたいだ。
僕らはワクワクていて、歩く速さが早くなっていた。
すると、ズドーン!と近くの木が倒れて行くのが見えた。
僕らはワクワクから一転し、顔は恐怖に染まり、息を潜め、ただ1点だけを見つめる。
そこには、赤い皮膚に1本の角の生えた巨人が木を倒しながら進んでいた。
「なに......?あれ?」
アリスが僕に聞くが、もちろん
「僕にも分からない」
こんな恐ろしい物が森には居たのか?
母さんが言っていたお化けとはこの事だったのか?
わからない。
わからないが、僕らは一先ずここから逃げ出すのが得策だろう。
だが、
「痛っ!」
アリスが木にスカートを引っ掛けて転んでしまった。
大した傷ではなかったが......
今の声で巨人は僕らに気づいてしまった。
巨人は僕らの方に向かって歩みだす。
「アリス!逃げよう!」
僕はそう叫ぶ。
「ダメ......足がすくんで動けない......」
泣き出しそうな顔でアリスはそう言った。
そういえば、僕はこの巨人を本で見た事があったかもしれない。
名前はオーガ。
知能は無く、人を好んで食べるそうだ。
つまり、このままでは僕らは食べられてしまう。
「どうにかしなきゃ......」
そうだ、魔法。
僕は身体に魔力を纏わせて身体を強化する。
「こっちだ!オーガ!」
大きな声を出し、僕はオーガの注意を引き付ける。
ただの風を吹かせる魔法では駄目だ。
「風よ!」
強風がオーガを煽るが、オーガはそれをものともしない。
「ガァァァァアッ!」
オーガは僕に近づき、腕を薙ぎ払うが、僕は上に飛んでオーガの攻撃を躱す。
近くの木がオーガの腕によっていとも簡単に折られる。
「攻撃1つでも食らったら骨折だけじゃ済まなそうだな」
「風よ!」
今度は強く、もっと強く風を吹かせる。
それでもオーガはそれを苦としない。
どうやったらダメージを与えられる?
冷静に考えろ。
オーガの攻撃を上手く避けながら思考を巡らせる。
ただ風を起こすだけじゃ駄目だ。
ダメージを与える風魔法といったらやっぱり......
僕はRPGゲームでよくある風魔法をイメージする。
風で敵を切り裂くイメージで!!
魔力を込めて。
声高らかに!
「風よ!!」
1つの風の刃がオーガに向かう。
そしてそれは、オーガの片腕を切り落とした。
リアルが立て込んでまして、もう少ししたら安定して投稿できるようになりそうです。