2.人生の階段
予想はしていたが、目が開くようになってそれは明白になった。
単刀直入に言うと、僕は本当に異世界に転生してしまったみたいだった。
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今日、僕は転生して1年目を迎えた。
1年も経てば大体の言葉は理解出来るようになったし、文字も理解できるようになった。
それにもう立って歩くことだってできる。
今日は初めて家の2階に上がってみようと思う。
1か月前は筋力が足りなくて登ることができなかった階段という難関を超える。
何とも胸熱ではないか。
「アンリ〜階段は危ないわよ〜」
僕の母さん、ラフィーネの声が聞こえた。
お母さんは金髪碧眼でいかにも異世界って感じの見た目だ。すごい美人。
そして僕、アンリ・エルシアは母さんと同じく金髪碧眼。
鏡を見てビックリしたが、相当イケメンに育ちそうな様子だった。
「だいじょぶ」
僕はそう簡単な受け答えをする
1歳にして赤ちゃん言葉以外の基本的な言葉を喋れるようになったのは一重に僕の努力の結果だ。
産まれてから半年間まともに喋れない苦痛は相当堪えた。
一言二言でも人と喋れるってありがたいなぁ。
思いふけるのもここまでにして、僕は最重要課題に取り組む。
目的は階段の上、2階の探索だ。
恐らく僕の家は相当広いと思う。
それも屋敷レベルに。
1階だけでもかなりの物があったが、2階には何があるのか、僕はかなりワクワクしていた。
階段の1段目をよじ登る。
その後も2段目、3段目とよじ登っていく。
やっぱり相当体力使うんだよなぁ......
前回は7段目まで行って力尽きてしまったが、今の僕は違う。
成長期ということもあってどんどん筋肉が付いてきた。
今ならやれる。
7段、8段と少しずつ少しずつ登っていく
そして──
僕は2階に辿り着いた。
僕は探検の第一歩を踏み出したのだった。
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2階の1番近くの部屋にはお父さんの書斎があった。
僕は本が好きだし、この世界の本にも興味がある。早速物色しよう。
『精霊王伝説』
よく兄さんが読んでくれる絵本と同じタイトルだった。
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ある日世界に魔族が出現した。
魔族は自身の放つ瘴気を世界中に蔓延させた。
人類は魔族に狩られるのをひたすら待つのみ。
そう思われていたが、世界に1つの希望、精霊王が現れた。
精霊王は自身を分裂させ、7体の知性のない精霊を生み出した。
精霊は世界各地に飛び回り自身の魔素を、精霊王は知性と引き換えに人類に魔力を与えた。
精霊王は力を使い果たし、魔力源野という土地で力尽きた。
人類は魔族に対抗する魔法という力を持ち、更に繁栄して行った。
精霊王の眠る魔力源野は未だに魔力の源である魔素が溢れ、大気に魔素を振り撒き続けている。
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とまぁこんな話だった。
絵本ではただのファンタジーに見えたが、もしかしたら本当の話かもしれない。
そう思って僕は魔法の本を探すことにした。
それはあっさり見つかった。
『魔術師アーネスの魔導書 上』
上・中・下からなる3つのうちの上巻だ。
これには初級魔法について書いてあった。
上巻なのに下位の魔法ってのがややこしいね。
魔法ってのは自身の魔力を火とか水とかに変化する必要があるみたい。
それを発射するのにもまた別の工程があるそうだから、かなり時間がかかりそう。
僕はバレないように1階の自分のベッドの下に置くことに決めた。
8時に3話投稿します。
遂に魔法です。