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第7話 目覚め

(やっべ、頭がガンガンする…。お酒飲んだっけ?うーん、身体が重い。)

見の覚えのない頭痛の原因に思いを向ける。


なんだか、柔らかなものに包まれている感覚を覚えつつ、二日酔いに似た頭痛と後ろに引っ張られる感覚の体を起こす。



ふっと目を覚ますと、見たことのない天井がそこにはあった。

(大きなベッドだな~。どこだここ?)

洋風な凝った造り、電灯が無い天井。間接照明かな?と思いつつ、重い体を起こした。


見たことのないキングサイズのベットの中に自分はいた。

外国人の少女がソファーに、もう一人の少女が同じベッドに突っ伏して寝ていた。

そして、部屋の端の椅子にメイドが、うとうとと舟を漕いでいた。


ごそごそ動いた振動で目を覚ましたらしい。

「やぁ、おはよう。」


「・・・・・・・・」「・・・・・・・・」「・・・・・・・・」

ん?何その表情?

目が合ったその少女達は、ウルウルと目に涙を溜めていた。

ダ、ダ、ダ、   ボフッ‼

自分に勢いよく向かって、見習いメイドのプリーツ(レナの娘9歳)が飛び込み、自分の頭を胸に抱く‼

「「リー――――ズ‼リースちゃん‼「リーーーーズざばぁぁぁぁぁ〜⁉」」」


左右から、三女レティール(10歳)と四女ララティナ(9歳)がリースに抱き着く‼


部屋で大きな声が響き、部屋の外から何人か駆け付けた。

女の子は泣きついたまま頭をぐりぐりお腹に埋める。


苦し…い…。


何だ⁇この大きな少女は?

…違う!俺は手を見る。


オレの身体がむちゃくちゃちっちゃくなっている!

まさか、毒を飲まされたんか?

〇〇トキシン4……。身体は子供、頭脳は大人!

いや違う!病院で見すぎたマンガの影響だな?自分が主人公になる夢にまで見るなんて?


ズキン‼

一瞬頭に雷が走ったように痛みが走る。

(ぐっ、こ、これは?これは、生まれてからの記憶か?それと、生まれる前の記憶がある。)

脳裏にフラッシュッバックとなって、生まれた時からの記憶がよみがえる。

俺の名前は、リーフィス・セファイティン。

東の辺境伯の四男坊。もうすぐ5歳でちゅよ~。か?

5歳じゃ何もできないな…。


「うわわぁ~ん!リースぼっぢゃば~~~~~‼」


「ちょっとプリーツ、泣かないで?大丈夫だから!」


「リース様!よっがまえに突然倒てぇ~、ずっと寝てらしたんですぅ~うわぁわ~~~ん!」


目の前で起こる状況にプチパニックになっていると、ちっちゃなメイドが教えてくれた。

「一週間前に伯父様と森に出かけた後、グス…。体調を崩し、四日前から意識がなくなって、ずっとうなされていたのよ・・・。」

三女のレティールが、泣きながら補足する。四女ララティナも泣きながら、レティールに抱き着く。


◇◇◇


何分かすると落ち着いたのか、見習いメイド女の子は顔を赤らめる。

「すぐに奥様とベルン先生をお呼びしますね!」


「やれやれ、プリーツは相変わらず、あわてん坊だな?ごめんね。レティールお姉ちゃん、ララ姉ちゃんもう大丈夫だよ。」

思い出した二人の名前を確認を込めて呼ぶ。


「だめ。まだ寝ときなさい!レフィーナママとベルン先生が来るから…グス…。」

こうして、数日に及ぶ高熱を経て、前世の記憶を取り戻したのだった。

リースはこれが後に、神の御業と思しき封印の一つが解けたと解るのであった。


◇◇◇


…タ

・タタ、タタタ、

タタタ、ダダダ、ダダダ、ダダダ!

ズダダダダダダ‼

ドカン‼‼

「リィー―――スゥ――――――――――――――ッ‼」

ボスッ‼


やがて20代の青みがかった銀髪のとても美しい女性が、またまた泣きながら部屋に入ってきた。辺境伯の第三婦人で、リースの生みの母親レフィーナである。


「もう少しでまた死ぬところだった」

…と後日談。


「リース!目が覚めたのね‼良かった。もう少しでベルン先生をやぶ医者認定するところだったわ。」

(それ、さっき聞きました。

思い出した。伯父さんに連れられて、森の中の崖にある変な石板を触たら、何かが体の中に入ってくる感覚があって、そして熱くなってきて、屋敷に帰ってきたら、立っていられなくなったんだった。あの後の記憶が無い。気絶したのか?)

と心の中で素早く思い出す。


「リース。大丈夫?どこか痛いところある?」

そう言ってまた抱きしめてきた。

柔らかいものに包まれて、しばらく動けなかった。


「奥様、リース様は、まだ起きたばかりで、無理をさせてはいけません。もう少し様子を見て、ベルン先生に見て頂かないと…。」

メイド長のレナは、薄く涙を浮かべながら、やさしく言う。


「そうね、ベルン先生に見て頂いて、食事をとらないと。スープなら食べられると思うから、プリーツ。先生に伝言を手配して、ララ、料理長に精のつくもので用意してと伝えて。レティール。いつまでも泣かないの、イズンを呼んできて。」

「はいっ!」「…はい。」「はい!」


3人はパタパタと部屋を出て行った。


しばらくすると、レティールが、20代後半の男性を連れてきた。

その時は既に意識がはっきりとし、記憶も思い出した。

今世の父、辺境爵イズン・フォン・セファイティンだ。

「リース!目が覚めたか、良かった良かった!心配したぞ。どうだ?わかるか?パパだぞ?」


「わかりますよ。父上?」

リースは、父が過去にやらかした際の記憶を頼りに、挨拶をする。


「あれ?パパって呼んでくれないの?」


「もう、大きくなりましたので…。」


「いや、まだ4っつ・・・。」


ベッドが、キングサイズかと思っていたら、自分が小さかった。

そう、生まれ変わって、辺境伯の4男に生まれ変わったのだった。

どうやら熱にうなされた時に、前世の事を思い出したようだ。

そうすると、見た目は4・5歳だが、中身はいい歳のオッサンである。

パパなんて恥ずかしくて言えるか!


扉がノックされ、ララと、見習いメイドのプリーツが、カートに乗ったスープの入った寸胴を持ってきた。

「リースさま、スープを持ってきました!」


ク~・・・

においにつられて、お腹が鳴った。

そういえば何日も食べてない。のどもカラカラだ。


「ふふ、今ご用意しますね。」

プリーツが、寸動からスープをお皿に取り寄せると、スープの豊潤なにおいが広がる。


レフィーナが、スープが入った皿を受け取り、スープを掬うと

ふーふーふ~。

「はい。あーん?」


スプーンで掬った熱々スープを吐息で冷まし、口元に持ってくる。ちょっと恥ずかしかったが、空腹には抗えない。

「・・・・ん?まいっ!」

芳醇な香りが広がり、適度に整った温度で喉元を過ぎる。そして体の中心に入ったスープは、体内で弾け、力がみなぎる感じがした。


(塩味ベースの白いドロッとしたスープが、んまい‼それにしても、今世の母は、美人だな。)リースは、スープを飲みながら、母の顔を確かめるように伺い観る。

「ふふふ、まだまだありますからね。病み上がりですから、ゆっくりと飲んでね。」


「ママ!今度は、レティールがします。食べさせたいです‼」

レティールは、レフィーナの袖口を引き、食べさせっこをしたがる。


「ふふふ、はいどうぞ。」

母のレフィーナは、実娘のレティールの一生懸命な訴えに応える。


レティールが、掬ったスープに息を吹きかける


ふーふぅー

「はい、あーん‼」


「あちっ!まだ冷めてないよ⁉」

吐息は、スプーンの上空を過ぎていったようだ。


「あれ?フーフーふ~?   …あーん?」


「・・・ごくん。」


「リース、どう…かな?」


「うん、おいしいよ!レティールお姉ちゃん、ありがとう‼」

幼女に、食べさせっこされるのもハードルが高いな。。。


「今度は、ララティナがリースちゃんに食べさせたいです‼」

・・・・しかし、飢えた体を癒すべく、スープのお代わりを繰り返すのだった…


「ん まい! もう一杯‼」


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