第67話 領都へ
アップですが、不定期のぺースになります。
時々修正もしています。
ジゼル達遺跡調査隊が侵入した静の森の入り口、この場所は長年キャンプ地として利用されてきた。ジゼル、アズン、リースの調査部隊と別れた駐屯地部隊は、簡易宿泊施設の設置が終わり、調理担当ファティマとノンカは、夕食準備をしていた。
「ファティマさん。今回の調査って、何か重要な事が分かるんですかねー?」
ノンカが夕食の下ごしらえをしながら、ファティマに話しかける。
「さあ?遺跡で重要な事が判るなんて2割も無いらしいわよ?」
ファティマは、鍋や材料の選別をしていた。
「そうなんですかぁ?
じゃあ、成果ないかも知れないのにこんな大事で大丈夫ですかね?」
「まあジゼル様は、何か見込みがあっての事じゃないかしら。」
「それより、ファティマさん。
リース様が領都に置いて来たレシピって、新作のお菓子ですよねー!」
「そうみたいね…。」
材料を確認していたファティマの手が止まる。
「まだ食べて無いんです!わたし!」
「…そうなんだ。……じゃ、リース様に作ってもらわないとね~。」
「むっ、大人の対応…… はっ⁈ まさか!
ズルイです!ズルイです!ズルイですよぉ‼ どうして呼んでくれなかったんですか!」
「えっと、なんかリース様の置いていた焼き菓子を食べたらしいじゃない?…ラッピングしたやつ。」
「ラッピングしたやつ?
あっ、あれは、違うんです!」
「違う……?」
「いや、違わないかもですが、私の命に関わっていたんです!」
「どうせ、前日食べすぎて、お腹壊して、朝ごはん食べれず、お昼になる前にお腹空いて、こっそり食べたんでしょ?」
「…な、なぜそれを⁉」
「リース様が言ってましたよ?『真実はいつも一つ』って。」
「くっ、バレていたのか…無念。」
「領都に帰ってから、お嬢様の試作を頂いたら、良いじゃない。」
「はっ⁈そうですね!その手がありました!
………
ふっふっふ…。ふっかぁーつ!」
ノンカは、両手をあげてジャンプした。
「では、さっさと下ごしらえして、夕食の準備を終わらしましょう!ファティマさん。」
「ふふふ、現金ね。」
「ふぅ~、終わったら、ちょっとお昼寝して良いですか?」
「いいわよ。ここ数日立て込んでいたからね」
ノンカは、夕食の下ごしらえが終わると出来立ての簡易宿泊施設で昼寝に入った。
◇◇◇
時は、リースがスカレイで空から舞い戻った時刻に遡る。
ドゴン!ガガン
「な、なに?」
「ふぁ、どうしたのかな。」
ゴソゴソと寝具から抜け出す。
「うん、行ってきます」
リースがファティマに挨拶する。
「ん?なんですか?今の音?」
「あれ?リース様?ファティマさん、どうしたんですか?」
「……ちょっと問題が発生したみたい。」
「そうなんですか?」
「多分、調査は中断ね。」
「え?という事は……、
帰る。帰れる、帰られる。
やっ、ァバァダバァ(やったぁ~)」
ファティマがノンカの口を慌てて塞ぐ。
「シー!多分悪い事が起こっているから、はしゃいじゃダメ!
わかった?」
「ファイ…。」
ノンカはファティマに注意されて項垂れた。
◇◇◇
アズンは沈痛な表情で女性陣にお願いをした。
「囚われた彼女達の世話をしてくれ……。」
「「「は、はい。」」」
「こ、こんなにボロボロになって、酷い…。」
治癒魔法を掛け、毛布でくるむ。
「ファティマさん、ノンカさん。ここに風呂を作りました。身体を洗って、食事を勧めてください。」
リースが、トラニカとは反対側から連れてきた女性たちだが、盗賊にひどい扱いをされ全員うつろな目をしている。
「はい……」
「今は無理でも時間が解決してくれることが有ります。カウンセリングをしてもらえる方を探します。領都まで、寄り添ってください。」
「はい。」
◇◇◇
時は進み、静の森から一週間が過ぎた。領都に戻って来た一行は、盗賊の処分、囚われた女性たちの保護、遺跡の調査の考察、ゴーレム農機と対応に追われた。結局来週王都へ報告に行くことが決まり、領主のイズンの代わりに兄のアズンが名代で報告に行くこととなった。もちろんジゼルとリースも随伴要員である。
「……という訳で、商業宿舎から帰ってきたんだけど!」
セーラン姉が、リースの厨房で愚痴をこぼす。
「女性たちのカウンセリングの相手が娼館のお姉さんってどうなの?」
「うん。聖女様や、教会系の治癒系の方々がカウンセリングすると、高潔過ぎて自分の価値がないものと感じ易く、立ち直りが悪い場合があるんだけど、娼館のお姉さんは、それが仕事だから、自分の体験をそれぞれが話すうちに前向きに生きることが出来て立ち直りが早いらしい。……アズン伯父さんの情報だからわかんないけど。
まあ、それが向いている人と向いていない人がいるから、両方とも面会させているんだけどね。一応教会で施設を作る予定にしている。」
「そう。立ち直ってくれたら良いけど…」
セーランは窓の外を見てつぶやく。
「ところで、今日はどうしたの?」
「リース君が、甘味を作っていると聞いたから、こうして駆けつけたんじゃない!
試作を品評する人がいるんでしょ?
任せなさい!ちゃんと辛口で厳しく採点してあげる。」
「え?いや、忙しいならいいよ。申し訳ないよ。」
「え?いいのよ。全部仕事は押し付けて来たから。試食をするまで帰られないって言ってあるから大丈夫!」
「あ、そう。(これはお土産を渡さないと血を見るな…)」
「それより、今日は妹ちゃん達は?」
「ロー(ローベルティ)と、クリス(クリスティ-ル)は、今の時間は孤児院に行って、お菓子の差し入れと、地域の子供達と勉強会かな?」
「妹ちゃん達も、もう行ってるの?」
「うん、早い方が打ち解け易く、貴族の高いプライドを持った頭の硬い人になるより、民の事をその目で見た方が、民のために考える様になるでしょ。貴族は民の為にあるのだから。それに民にも貴族の顔を見てもらっていた方が、安心するでしょ。」
「ふうん。良く考えているのね。ほんとに8歳?
時々リース君と話していると、同じくらいの歳の人の気がするのよね〜。」
「ハハハ。(精神年齢はおっさんだけどね。)」
「ところで今日は、何を作っているの?」
「アップルパイさ。」
「アップルパイ?」
「うん、このくだものとこの小麦粉を使った生地で焼くんだけど、比較的簡単だから、セーラン姉も作ってみたら?」
「私は無理!食べるの専門だから。」
「そうなんだ。でも、自分で作れると、食べたい時に食べれるんだけど…」
ピクッ
セーランが表情を止め、肩が微動した。
「好きな人が出来た時に、その人が食べたい物を作れると、その人は作った人にまた作って欲しいと言って離れられなくなるらしいよ?」
「え?どうして…。」
「セーラン姉は、領都で通う食堂ってある?」
「それは、うさぎのしっぽ亭よ。美味しいもの」
「でしょ。他の店行きたい?」
「美味しいお店なら行くけど、あまりネー…」
「それと一緒だよ。セーラン姉の作るご飯が美味しかったら、食べて幸せになるでしょ。例え最初は美味しくなくても、一生懸命に作ってくれたご飯って、食べたら幸せになれるんだ。未来の旦那さんに心を込めた美味しいご飯を食べさせたいと思わない?」
「うっ、確かに。でも、どうやってかわかんない」
「それはいつもの逆さ」
「いつもの逆?」
「いつも魔術を教えているでしょ。こんどは他の人達に習えば良い。話題も広がり、会話も弾む、悩みを聞き、信頼され、料理が出来る。
素晴らしいと思うんだけど…」
「やってみる!」
「そうこなくちゃ!」
「あれ?セーラン様、何作ってるんですか?お手伝いします!」
ノンカが割り込んできた。オヤツ目当てだろう。
◇◇◇
ここは、ジゼトラード帝国(勇者召喚陣の有る国)の帝城皇族が過ごす部屋。エレルト・ラ・ジゼトラード帝王と息子たちが食後のチェスをしていた。
「お父様、セル兄様(第二皇子ヴァーセル・ラ・ジゼトラード)が、アヴァルート王国に親善大使で伺うと耳にしました。私も同行させてください!」
ローズティア・ラ・ジゼトラード(第六皇女ローズ)は、兄たちとチェスをしていた父エレルトに申し入れた。
「ダメだ。
帝国の血筋の者が2人も行く事は、我が国の品格を下げる事になる。
此度の訪問の目的は、大使館の設置、ウリットバーンの動向の確認、飛翔騎士団の訪問、新種の石鹸の輸入、穢れの詩の対応動向と多岐に渡る。お前のわがままに付き合える時間は無い。」
「でも、ローズはどうしても行きたいのです!」
「それはどうしてだ?」
「…アヴァルート王国に、サーカスがいて、それらを見に行きたいのです。そして、この帝国に来てもらえる様に誘致しようと思います。民がすごくすごく喜ぶと思います。」
「むむむ、かわいいお前がそんな事を考えていたとは、だが、皇女としては行く事は出来ん。……おい、ライダースを呼べ。」
「は。」
側仕えのものが短く返事をし、宰相のライダースを呼びに行った。
◇◇◇
「ライダース。ローズがアヴァルートに行く為にはどうしたら良いか知恵を借りたい。」
「……それでは、恐れながら申し上げます。
ローズ様を随伴の公爵家の息子と言う事にして、同行させてはいかがでしょう。まだ、ローズ殿下は、体格は女性となっておりません。幸いにも身長は有りますので、年齢も偽ることができます。さらに言うと聡明でありますので、皇子殿下以外の別働隊として行動も可能かと思います。ま、あくまでも別働隊ですので、本流から離れた行動、例えば石鹸を取り扱う商会への話や、サーカスの誘致などはお任せしても宜しいかと思います。」
「ふむ。さすがだ、ライダース。
………では、その様に段取りを取ってくれ。」
「…御意」
「やったぁ!お父様大好きです!」
ローズは、父エレルトに抱き着いた。
「これ!はしたない。これから、お前は公爵家子息の立ち振舞いをせねばならん。
稽古の時間が増えるぞ。覚悟は良いか?」
「はぁ〜い。」
抱き着いたまま返事をする。
「これ!ローズ」
「はい!お父様、頑張ります!」
「うむ。」
末娘のローズティアは、ただかわいいだけじゃなく賢いのだ。エレルト帝王がついつい甘くなるのは致し方のない事であった。
◇◇◇
「ライダース様。」
宰相の側近の一人が、疑問に思ったことを尋ねる。
「なんだ?」
「どうして第六皇女殿下の動向をお許しになったのですか?」
「聡明であるからな。」
「はぁ?」
即答で返された内容に訝しむ。
「第二皇子ヴァーセル殿下は、政治と軍事は鋭い感性をお持ちだ。だが、民への視点が希薄であらせられる。政治軍事の物事は全体でみる必要がある。一見関係ない事でも、元を辿れば本質を捉えている事がある。
今回の親善訪問はアヴァルートからの申し出だが、人員を送るのはこちらから先に出した。穢れの詩と呼ばれる時期は、国際関係は微妙な時期になる。公然の秘密だが、こういった時期に国際関係を乱す事は、他の国から圧力を掛けられても反論できない。だが、そう言った事を知らないのか、敢えて無視をしているのか、他国を干渉している愚かな国がある。本来なら国力を高め、勇者を召喚する体制を整えなければならない時期に不穏な流れを断ち切る必要がある。
陛下はそれが判っているアヴァルートに、勇者召喚が出来ない国にそれを求めた。
第二皇子ヴァーセル殿下は、国際関係を良く判っていらっしゃるが、この不穏な流れを第六皇女ローズティア殿下に取り留めるチカラが有るのではと感じていいらっしゃるのだ。」
「アヴァルートにですか?」
「まだ分からぬが、あの国には確かに何かある。
影の手の者がなかなか手に入れられないものが…」
「それにしても、第六皇女殿下は、どうしてアヴァルート王国に行きたいのですかね?」
「さあな。何かしらを感じられているのやも知れん。」
◇◇◇
「ふふふ、アヴァルート王国。魔女様の言った通りなら、そこに今新しい風が吹いている。確かめなくっちゃ!」
ローズティアは、自室の窓から外の月を見つめ、つぶやくのであった。
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つぎ王都に行きます。




