第6話 前世
その時リースは、前世の体験してきた事を夢見ていた…。
◇◇◇
「うっ、くっ…、頭が、針金で締め付けられる様だ…。」
左手で目を覆い、日記を書く手が震えているのが見える…
前世は、元をたどれば神社傍流家系の末っ子で、幼なじみと伴に、親戚の営む古武術道場で、心身を鍛えていた。古武術を習得することを条件に、高校は自由にしていいと約束した為、幼なじみには内緒で、高校生になるまで秘伝の裏の技を一通り修練した。
秘技を全て会得した以降は、自由に学生生活を楽しんでいた。
いつからか、なかなか眠れなくなった。
高校生の時、激しい頭痛から脳腫瘍が見つかった。眠れない代償に、知力・記憶力・判断力・身体能力が異常になり、知力・記憶力は、あらゆる言語を数日で取得し、辞書数百冊分の情報を正確に記憶してしまう。判断力・身体能力は、常人の数倍となった。
怪物じみたチカラに人知れず悩んでいた。
「私がそばにいてあげるから大丈夫!」
幼馴染が、元気付けるために言ってくれたのがわかった。
「よろしく頼むよ?」
体調が良くなったある日、幼なじみの誘いで、デートをすることになった。
◇◇◇
●●、助けて…。
まだ、ちゃんと言ってないのに…。
◇◇◇
その日、
幼なじみが、交通事故で亡くなってしまう。
前世の俺とデートするのに寝坊してしまって、走って横断歩道を渡っていた。安全確認を怠ったトラックの交通事故に巻き込まれて死亡してしまった。
後悔と自責の念から、幼なじみと過ごした道場で、倒れるまで技を鍛えるのであった。病気が悪化して、死んでもいいと思っていた。
それから数年がたち、いつしか、脳の腫瘍の進行が止まり、日本から逃げるように海外の大学に進学する。
スラム街近くのボロアパートに住み 、古武術の経験から、日本の忍者道場でアルバイトをし、持ち前の語学力や武術力、マンガの情報力のおかげで、街の住人の問題を解決していき頼りにされる。このころから、街の人達の明るさに救われ、元気になっていった。
大学では飛び級で医師の資格を取り、病気を隠し、病院で勤務をしていた。
何人か年上女性の同僚に言い寄られていたが、不治の病を抱えていた為、恋人は作らなかった。
医療工学系企業との共同研究で、数々の実績をあげ、男性の同僚の医師に妬まれ、飲んでいた薬から、不治の病気をあばかれた。病院はそれを重く見て、解雇した。仲の良い同僚に手紙を残し、数年勤務した病院を後にした。(その同僚は、事実を知り涙した。)
ちょうどその頃、食品化粧品繊維化学を扱う企業からオファーがあり、転職した。なぜか、その同僚も一緒に住むこととなった。
「うっかり者のあなたは、一人で過ごすのは心配だから…。」
転職は、能力にもあったのか、すぐになじんだ。様々な分野の者たちと(マンガ等の)議論や問題解決に向けてのプロジェクトが生きがいだった。
いくつか掛け持ちをしていても、苦ではなかった。
また眠れなくなっていたから…。病気の進行が進んでいる気がしていた。
◇◇◇
いや、やめて!●●、助けて‼
◇◇◇
冷たい雨の日。
日本に出張で仕事をしていると、彼女が亡くなったことを聞いた。
暴漢に襲われたということだった。
事件の内容を知ったのは、彼女の葬儀の日、その日も冷たい雨の日だった。
犯人は以前の職場の同僚で、彼女が追いかけて転職後、ストーカーと化していたという事だった。生前彼女は、心配を掛けない様に事実を隠していたのだった。
犯人は、彼女を殺した後、逃走中に事故で死んだそうだ。
「…どうして、気付いてやれなかったのか、守もれたのではなかったのか。もっと一緒に過ごせば、知ることができたのでは…?またしても、俺は…。」
と後悔した。…
他の同僚たちから、慰めを受けるが、そもそもそんな資格はないと、日本に帰ることを告げた。日本に戻ってきた時、頭の痛みから、空港で倒れた。
夢の中で幼なじみと、女性の同僚が見守る中、
『眠れるようになったね…。良かったね。』
『ふふふ、先に行ってるよ、待っているから。』
『ああ、待ってな。すぐ見つけるから。見つけたら、のんびり過ごしたいな…。いろんなところに行ったりしてさ…?
なんか今すごく眠れそうなんだ、だからちょっとだけ、一休み…。』
これまで、眠れなった分、安らかに目を閉じた。