第58話 ある貴族の子息
アップですが、3日に一回くらいのペースになるやもしれません。
時々修正もしています。
「草薙の風」の窮地を救って15分後。
「ウワー、助けてくれー」
相変わらず生い茂る木々の中、銀の鎧に包まれたリースは、
「遠くで悲鳴が聞こえる。アレか?8人のパーティーか?
ん?いや、2人倒れているな。なんかアドルシークの話をしてる、ちょっと様子を見るか。」
◇◇◇
「月下の炎」「草原の花」Cランクパーティは、先に遭難していた「草薙の風」を合同で捜索していた。静の森で捜索するうち、「草薙の風」と同じようにゴーレムの波状攻撃に追い立てられ、森の中心部まで追い込まれていた。
「ウワー!」
ガン
「くっ!耐えろ!助けは必ず来る!」
小さなゴーレムの体当たりを剣で受ける。
ガキン、ガスッ
「バカヤロー!助けなんて来るわけないだろう!
「草薙の風」の次に強いオレ達「月下の炎」「草原の花」を誰が助けるんだ!」
小さなゴーレムを剣で切り、足で蹴る。
「アドルシークの領都から、調査隊と騎士団が来るはずだ!それまで耐えるんだよっ!」
「ばっか!貴族様が俺たちなんかを助けに来るわけないだろう!
辺境の辺境、トラニカの冒険者なんか。」
「アドルシークの貴族様は他とは違うんだ!」
「なに?なんでだよ!なんでそんなことがわかるんだよ!」
「俺は知っているんだ!俺たちは見たんだ!」
ガキン
「グッ、なにをだ!」
小さなゴーレムが、殴ってきたところを剣で切りつける。
「領都に仕事で寄った時、ギルドで孤児院の子達に生き残るための技術や勉強を教えるための募集で見学に行ったのさ、そしたら…。」
「そしたら?」
「そこに領主のご子息やご令嬢が居たんだ!孤児院にだぞ!」
「えっ?」
「知ってるか?
孤児院にいるような子供達は毎日毎日生きるのに精いっぱいで、希望なんかない。親もいない、身寄りもない!ある孤児は騙されたり、親を殺されたり、親に捨てられたり、そんな心に傷を持った子供たちが、アドルシークの孤児院の子たちは、貴族の子息と一緒にあんなに笑顔になっているなんて…。
俺たちは想像がつかなかったよ!」
「…っ。……。」
「聞けば、数年前までは他の領の孤児院と同じような感じだったというじゃないか?」
ゴキン!
小さなゴーレムが向かってきたところを剣で切り払う。
「だが、領主の子息が孤児院の現状を訴え、領主が自立の支援をする責任があるって、そう言ったんだ!
しかもその子息は口だけじゃないんだぞ。」
「なに?どういうことだ?」
「聞けば言い出したのは、小さな子息っていう話じゃないか。普通なら使用人や騎士を使って支援する。そんなことは貴族の子息だったら誰でも出来る。」
「ああ。それで?」
「でもその子息は、汚いなりに変装して、孤児院に入り孤児たちと友達になったって言うじゃないか!出来るか?貴族が?そんなこと。するわけがない!
そんな話はどこでも聞いたことがない。
その子息は言ったそうだ。
『中に入らなきゃ、友達にならなきゃ、ほんとに必要なものがわからない。全部上から支援を出すのは絶対ダメだ。ちょっとだけ助けてあげて、孤児たちがこの生きづらい世界を自活が出来るように技術や読み書きを教えて行んだ。』
と、そう言ったんだ。」
「…。ぐっ。」
「俺は、その話を他の冒険者から聞いた。その貴族の子息は決して自分が目立とうとはしない。この話だって周りのみんながそれぞれ出した話をみんながまとめて語っているんだ。俺はその話を聞いた時泣いたよ。そんな子息が居る領なのかと。口々に民から伝わるその話を聞いて、アドルシークの騎士団はどう思う?どこの貴族よりも立派な貴族に使えている騎士団だって。誇り高いに決まっているじゃないか!
知ってるか?アドルシークの騎士団の事?」
「なにをだ?」
「アドルシークの騎士団は、我が国初の飛翔騎士団があるんだ!」
「ああ、それなら知っている!他の国にもないような空飛ぶ騎士団だろ?」
「そうだ!だからアドルシークの騎士団は助けを呼ぶ者たちを見捨てない!俺たちの危機も領都に伝わったら、空から見つけ出してくれる!そうさ。もうすでに手を打っているかもしれん。明日の朝には空から見つけてくれるんじゃないか?」
「ホントか?」
「だからともかく、今は耐えるんだ!防御陣地を小さくし、魔法師の負担を減らす。
俺たちは、防御陣地に寄って来るゴーレムを叩くしかない!」
二つのパーティが陣取るこの場所には、小型のゴーレムしか襲ってこなかったが、数が多く、体力的に限界が近づいて来ていた。
「くっ、俺たちのパーティはもう2人も倒れた。お前達の力を借りるしかない。」
「それは、あの2人が俺たちの魔術師を守ったからだろう!お互い様だ!」
「お前ら、いいから、少し休め。」
「俺らはさっき休んでる。お前こそ休め。」
お互いをかばい合い励まし合った合同パーティの者たちに友情が芽生えていた。しばらくすると異変に気付いたリーダーが…。
「…待て、何かおかしい。」
「なんだ?何がおかしいんだ?」
「ゴーレムの気配が…やんだ?」
ズガガガガガガガガ
「うっわ!なんだ⁈
光ったり、消えたりしてる。」
「バカ、それは点滅してるって言うんだ!」
銀の鎧を着たリースが、「月下の炎」「草原の花」の前に現れる。
「大丈夫か?(うーむ。自分の噂話で盛り上がっていたから恥ずかしくて出にくかったけど、そんな話になってるんだ。誰がばらしたんだ?)」
リースは知らないかもしれないが、アドルシーク領の女性陣は話好きであった。
「…っ。助かった。」「あ、あんた。誰だ?」
「えっ?あっ、わわ、我は名もない騎士だ。好きに呼べ。」
「そう言われても。
そうだ!銀鎧の騎士!ポーション持って無いか?
仲間が死にそうなんだ⁈」
「診せて!」
「見せて?(子供っぽい声のような?)」
治療を担当していた女性治癒師が銀の騎士の声を聴いて違和感を覚えた。
「い、いや診せてみろ!
……これは酷いな。」
「血は止まったけど、応急処置程度なんです。
ポーションか、治癒術出来ますか?(あれ?さっきと声質が違うような?)」
けが人のそばにいた治癒師は、リースを見て違和感を覚えた。
「圧迫されたかんじだな。わかった。離れていろ。」
盾を取り出し、怪我人に向ける
「『ヒーリングシールド!』あっ、」
「ぐあぁーっ!」「ぐぉっ!」
(あっ、しまった。先にポーションを与えるべきだった。しかも無詠唱でやっちまった。ばれてないかな?)
ヒーリングシールドは、銀の鎧の付属の武器で、防御のほかに治癒・解呪・解毒機能が付与されている。その効果は絶大だが、欠損した部位は身体の生体エネルギーから補充するから、栄養がないと掛けられた者の体は飢餓状態になる。
リースはけが人の頭を掴み、口を開け
素早く体力回復ポーションを飲ます!
ゴガガガ、ゴックン
「ゲホゲホゲホッ」
「(すまん。ま、助かったようだし、いっか。)あとは、ゆっくり休ませれば大丈夫。」
「あ、あのう、2人は大丈夫でしょうか?(なんか一瞬だったけど、ミイラのように干からびたような?)」
パーティの女性治癒師が二人の様子が心配になり尋ねてきた。
「ん、ああ、大丈夫だ!」
「さっき、悲鳴をあげていたようですが…。」
「い、いや、気のせいだろう。欠損部位も治ったが、失った血はすぐには戻らないから、ゆっくり休ませてくれ。」
「は、はい。そういえば、この盾凄い機能があるんですね。(詠唱省略の機能があるのかな?)」
「えっ、あ、うん。」
「銀の騎士様助かったぜ。」
「もう少しでこの二人は死ぬかも知れなかった。ありがとうございます。騎士様。」
「あ、いや、通りかかったついでの事だ、気にするな。」
「「「「「(通りかかったついで?)」」」」」
こんな闇夜にこんな森の奥で通りかかるわけないだろっと誰もが思ったが口に出さなかった。
「よし、念のためこれを渡しておこう。
治癒ポーションと、体力回復のポーションだ。
とりあえず、1人1本づつ飲め。
我もここで2時間休む。
少し休んだら、この白の騎士と黒の騎士が君たちを森の外に案内する。」
その時、「草薙の風」を送った白い騎士と黒い騎士が戻って来た。
近くに着地し周りのゴーレムを蹂躙したので、飛んで来た事は知らない。
「わっ、この二人の騎士も仲間ですか?…えっ、あなたはどうするのですか?」
白と黒の騎士に驚き、疑問を尋ねた。
「我は、この原因をこのまま調査する。君たちの役割は森の調査なのか?」
「あ、いいえ。
遭難したパーティを探していたのです。」
「5人のパーティか?えっと確か、「草薙の風?」」
「は、はい!そうです!」
「そうか、そのパーティは、先ほど助けて森の外に誘導した。君たちも町に帰ると良い。」
「本当ですか!分かりました!」
「装備がボロボロだな。そうだ。ここまで耐えて頑張ったからコレをやろう。」
練習用に作った魔剣。練習用に作った魔法杖。練習用に作った魔槍。練習用に作った魔盾。練習用に作った魔弓。
ドサドサドサ
「それぞれ同じ物が二つ有る。あと、2種類のポーションと飯だ。」
「あっ、ありがとうございます!」
「うっそ、凄い。」
「いいのかよ。後で無しなんて言わないよな?」
「こらっ!失礼だぞ!」
「嬉しいっす!もう剣がボロボロで…。」
「あの騎士様。
騎士様は、どちらの貴族様ですか?」
ギクッ
「なっ、なぜ貴族だと…?」
「えっ?だって、そんな凄い銀の鎧を纏っていらっしゃって、魔法武器を下賤するなんて、王家か上級貴族だけですよ!」ニコ
「(なっ、なんだと〜!やっちまった。)……。いっ、いや我は名も無き騎士。たまたま持っていた不要な武器を譲ったに過ぎん。我が持っていても荷物にしかならんからな。」
「は、はい!わかっていますとも。
何か事情があってのことですよね。わかっています。」
「い、いや、違うんだ!」
「大丈夫です。
騎士様がアドルシークの貴族の方とは言いませんから。名も無き銀の騎士様。」
「あ、うん。そう言う事で宜しく。」
「あんたみたいな貴族様もいるんだな?俺たちみたいな冒険者を見捨てないなんて!
かっこいいぜ!」
「尊敬するっすよ!さすがアドルシークの騎士様だ!」
「他の強欲貴族に見せてやりたいぜ!手柄を横取りするような貴族どもに!」
「ハハハハハ…。」
◇◇◇
ゴーレムの襲撃も小康状態になり、休息の準備に入っていた。
「(ねむい…。そろそろリミットだな。)
我は瞑想して体力の回復をする。2時間程だ、その間話し掛けない様に。」
「(フィーヴァ、何かあれば、銀鎧の機動制御を頼む。)」
「(ああ、わかった。)」
「(テトラ。この銀鎧の中で寝てるから、時間になったら、起こしてくれ。その後ブランシュとノワールにこの人達の護送をさせる。
俺たちは、深部の調査だ。)」
「(はーい)」
リースは銀の鎧の中で眠りに入った。2時間は睡眠をとらないといけないため、今回は白の騎士と黒の騎士に護衛を任せた。ちなみに夕食後に睡眠をとる予定が、ノンカに暇だからと邪魔をされたのである。
スゥ〜。スピピピピ〜。
「なぁ、あれって、瞑想じゃ無くって寝てるよな?」
リースは、銀の鎧の中で姿勢よく寝ていたが、寝息がもれていた。
「まぁ、さっきから、白い騎士と黒い騎士がゴーレムを蹂躙しているから、俺たちも休んでいる訳だが…。」
パーティのリーダーは仲間に
「2時間後ここから撤退する。
森の外まで4〜6時間といったところだ。朝には森を抜ける。今はゆっくり休んでおけ!」
本来なら夜間に移動は大変危険だが、静の森には魔物がいなかった。また、昼間にゴーレムの活動が多く、夜に活動を停止していたことが多かったため、夜間に移動することが決まっていた。
◇◇◇
「リース様。リース様。起きてくださ〜い。」
「んぁ〜?我は瞑想して…
なんだ、テトラか?何かあったか?」
「いえ、先ほどから、ゴーレムが大人しくなりました。」
「どうしたんだ?」
「単に駒切れだ。
これ程ゴーレムを破壊される事は過去になかったのだろう。
この地の魔素も欠乏している。恐らく何日かは、復活出来無い。」
「あら?そう。良かったじゃん。帰りは安全だね。
ん?フィーヴァは、原因が分かるの?」
「さあな。可能性は三つ。
一つ。単にゴーレムの発生時期に発生している。
一つ。ゴーレムの発生場所を封印して、それが壊れた。
一つ。ゴーレムの発生する核をこの地に移植した。」
「何?そんな事が出来るのか?」
「核の移植の事か?」
「ああ。」
「出来るな。ただ、我らはともかく、人間が使用とすると、高度な知識と大多数の人員が必要だ。また、それによって隠匿しながらは難しい。故にもし何者かがその仕組みをしたなら、かなり以前にしたか、我等の様なチカラの持ち主がやったかのどちらかだ。
まあ、その仕組みを見れば年代が分かる。」
「そうなんだ。…じゃあもう少しだけ調べてから帰るか?」
◇◇◇
「月下の炎」「草原の花」がともに休息を終え、身支度が済み、別れを告げる。
「では、「月下の炎」「草原の花」達者でな?」
「ありがとう!騎士様」
「ありがとうございます!」
「この御恩は忘れません!」
「名も無き騎士様!」
「銀の騎士様!バンザーイ!」
「アドルシークの騎士、バンザーイ!」
「いや、違うから‼」
「は~い、わかってます~!」
◇◇◇
「はぁ~、ったく!
よし。フィーヴァ。ゴーレムの発生場所は分かるか?」
「ああ、ここから600メートルくらいだ。」
「急ごう。
テトラ?……さっきからどうしたんだ?」
「フィーヴァが、こんなにしゃべるのに驚きまして!過去の事例を思い出していました。」
「ふん。」
「ああ、そっち。いいからテトラは、他の魔物の索敵を頼む。」
「分かりました!」
「リース、見つけたぞ。あれが入り口だ」
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