第55話 トラニカの町で
アップですが、遅くなり申し訳ございません。
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トラニカの町の町長邸に元国王のジゼル(現トレジャーハンター)と、アドルシーク辺境伯の兄アズン(元S級冒険者)が尋ねてきた。この町は農耕と狩猟が主な産業で、人口が比較的多いため、それなりに問題が多い。その書類整理をしていた町長を横目にソファーにもたれて腕を組んで考え込んでいる男がいた。コンコンとノックされたドアをその男が開ける。
「ジゼル様、ようこそお越し頂きました!アズンもな。」
執務室の机から立ち上がり挨拶をする。
町長のジャルマン子爵は、かつてアズンとともにパーティを組んだこともある元仲間の一人だったため気心が知れている。
「ジゼル様ご無沙汰してます。アズン久しぶりだな。」
ドアを開けたべラドランはこの町のギルドマスターをしている。ベラドランもアズンと共にパーティを組んだ仲間で、ジャルマンとは親戚関係となり、趣味は体を鍛えることの為、ボディビルダー並みの筋肉を誇る。
「ああ、ジャルマン元気そうじゃな?べラドランも相変わらずの筋肉じゃな。」
「こいつらは、元気と筋肉だけが取り得ですよ?」
アズンが、久しぶりに会った気心知れた仲間に対して冷やかしの言葉を掛ける。
「なんだと?アズン表に出ろ!久しぶりに体を動かしてやろう。ん?ドランどうした?さっきからいつもと違う感じだが。」
ジャルマンは、売られたケンカを買おうとして、べラドランを見た時、真っ先に反応するはずのベラドランが考え事をしていたのが気になった。
「ベラドラン?どうしたんじゃ?」
考え込んでいたベラドランにジゼルが声を掛ける。
「どうした筋肉?」
アズンが言外に体ばかりを鍛えていて、今頭を鍛えているのか?っていう意味を込めて声を掛ける。
「筋肉言うな!
ゴホン。……ジゼル様、私はこの町のギルドマスターを仰せ使って早数年ですが、潜在的に巨大な魔力がある魔獣をわずかしか見た事が有りません。しかも数頭。王都の魔獣調教師は、ここまで凄い魔獣を従えているのですか?」
ベラドランは気になっていた事をジゼルに問い合わせする。
「ん?ベラドラン見ていたのか?あれを。」
「はい。」「…あれとは?」
ベラドランとジャルマンは同時に聞き返した。
「ああ、そうか、ベラドランは、あれらをどう思った?」
「はい、探知の感受性の高い魔術師ならば、最初は竜種が来たのではないのか?と思うでしょうね。途中から、魔力を抑えたのか、ほとんど感じなくなったのですが、判る者は、判りますからね。」
ベラドランは、過去の経験から評価する。
「しかし、本当に魔獣なのですか?魔力量は通常の魔獣の域を超えています。つまりランクAか、それ以上だと思いますが?」
ベラドランは一般的な魔獣の常識外であると思った。
「うむ。
あれらは全て、イズンのセガレ、リースの召喚獣じゃ。テイムの上級契約になる。」
「召喚獣になると通常の調教だけではなく、召喚する魔法との組み合わせになりますから、難易度は数倍に高くなり、あれほど大型の魔獣となると、ロストマジックの域になりますよ…。」
ベラドランは、ギルドマスターの知識情報から現状ではほぼ再現不可能な契約だと知っていた。
「それは本当か?」
ジャルマンは町長の仕事が本業なので、魔法契約関係はベルドランほど知ってはいない。
「ああ、やはりそう思うか…。」
「どこでそんな技術を?」
「さてな?アズン。」
ジゼルは隣に座るアズンにリースの事を促す。
「わからん。我が甥っ子のリースは、小さな頃から変わっていてな?…っと、ワハハ、まだ小さいが。
読めないはずなのに書庫にこもりっきりで、そうかと言えば使用人の目撃情報は、誰にも習った様子がないのに読めているという証言もあった。またある時は、今までにない調理法でとんでもなく美味しい料理を作りだしたり、他にもいろいろあるが、あの子はイズンの子供達の中でもそこが知れない。
まるで、勇者が小さい時はあんな感じの様な印象を受ける。」
アズンは、底知れない能力をポンポン見せる甥っ子に驚愕の感想を漏らした。
「じゃが、勇者は召喚者じゃ、勇者の子供は、能力は高いが勇者ではない。また、過去にも勇者として覚醒していない。それは事実じゃ。」
「しかし、ジゼル様。各国が勇者の子息の能力を隠匿している可能性もあります。」
「ふむ。それは確かにな。じゃが、我が国に薄い血筋の者はいても、セファイティン家に勇者の血筋はない。」
アズン、ジャルマン、ベラドランは、顔を見合わせる。
「…と言う事は、単に神童と言う事ではないですか?
我が国に神から送られてきた子供ということで良いじゃないですか?」
ジャルマンは、奇跡の事が重なったと思った事を口にする。
「ふむ。まあそれは今更な事じゃから置いていくとして、今回の遠征の事を進めよう。
ベラドラン。今回護衛に就く冒険者はどういった者たちじゃ?」
「うっ、…実は、
こちらのギルドの高ランクのパーティの1つが、静の森の調査に出払っていて、期日までに帰ってきてないのです。それは約2週間前の事になります。そのパーティを捜索する為にあと2組のパーティを合同で送っているのですが…。」
「それらも帰ってきてない…と。」
「はい、なので今回の調査はそれらが帰って来るまでは、可能ならでしたら控えて頂きたいのです。」
「無理じゃな。」
ジゼルは、危険かもしれないという状況に、性分から安全策を取るという事はしない。
「…無理ですね。」
アズンはジゼルの性分を知っていたのでジト目でジゼルを見る。
「無理でしょうね。」
ジャルマンもジゼルの性分は知っていた。あきれ顔で同意する。
「無理だろうと思いましたよ。」
ベラドランもジゼルの性分は知っていたがギルドの責任者としての義務で案内したというだけである。
「ふぅ。」
ベラドランは頭を振り、意識を切り替えた。
「それで今回用意出来たのが中ランクパーティ2組なのですが、この2組の仲が悪くて、何かと諍いが有るんです。
あと他は低ランクパーティになり、皆さんの足で纏いになるので、ランク評価だけで、この2組のパーティを推薦させて頂きました。個々の実力は保障しますが、パーティ同士の連携は多分無理でしょう。」
「なるほどな。
まあ問題ないじゃろう。元々2組は、前後や、交代で別れる必要があるし、騎士達もいる。何よりリースが居るからな。」
「はぁ?それは一体?」
「先ほど言いかけたが、リースの魔獣は、索敵、護衛、戦闘をこなすから、ほとんど心配していない。ここに来る道中も本来ならいくつか魔獣が出没するところがあったが、その気配も無くここまで来た。」
アズンがトラニカまでの道程を語る。
「静の森は危険な魔獣は少ないじゃろう。」
「はい、まぁそうですが、ゴーレムはいますよ?」
「ゴーレム?」
「はい。ここ数年ゴーレムが増えて来まして。その原因がわからないのです。
今回出てきた遺跡に関係があるとは思っていますが、推測の域です。」
「ふむ。まぁ調査の者達が帰って来てないから、わからないのだろうが、ゴーレムの活動が目立つ様になったのは、どれくらい前だ?」
「約半年前です。それと大変言いづらいのですが、こちらの派遣したパーティがもしいたら助けて欲しいのです。」
「そのパーティ名は?」
「草薙の風」Bランク、「月下の炎」「草原の花」Cランクです。ちなみに護衛に就くのは、「大狼の牙」「山猫の黒」Dランクです。
◇◇◇
トラニカの町の郊外に人気のない場所があった。そこにリースと二柱の聖魔がいる。創造と破壊を司る聖魔フィーヴァと、光と闇を司る聖魔テトラである。
今回の調査隊一行はトラニカの町には昼過ぎに着いていた。そこで、各自自由時間となり、その時この場所を見つけ、そのままリースが造りたかった物をフィーヴァに頼む。頼まれたフィーヴァは冷静を装っていたがノリノリで作っている最中だった。夕食前の時間にやっと形が整った。
「リース、記憶の中の『あにめ』にあったモデルを参考にして形作ったが、どうだ?」
「うおおー、いいねぇ!カッコイイ!さすがはフィーヴァ、わかってるなぁ!
後は、大きさは3メートルくらいで、色は黒と白でよろしく。能力は直接攻撃の時はフィーヴァの魔法で、間接攻撃の時はテトラの魔法で攻撃するから、テトラの魔法を付与しておいて。」
「はーい、リース様。ところで色に合わせた属性でいいの?」
「うん、そう。それでお願い!あとフィーヴァ。空も飛べる?」
「もちろんだ。もう一柱の能力なら簡単なのだが、我の能力では見た目が派手になるが構わんか?」
「いいよ。見た目が派手で結構!その方がカッコいいしね!」
「私の能力で移動すると人には見えないけどね。」
「万が一の為にそれも実装していて。テトラ。」
「はーい、リース様。それで名前はどうするの?」
「ブランシュとノワールでいいよ。フィーヴァ動かすにはどうしたらいいんだい?」
「『起動』と命令して、普通に思念か言葉で命令する場良い。通常はオートで待機している。」
「なんだよそれ、カッコよすぎるじゃないか!もう何機か創ろうよ?」
「今は無理だな。材料がないし元から造ると魔力が足りなくなるぞ?」
「じゃあ、俺が乗る分だけでもお願い!色は銀色で。テトラは両方の能力を付与して。」
「いいですけど。魔力大丈夫ですか?…大丈夫そうですね。あと五つくらい作れそう…。」
「うん、まあ、いいか。追加の機体は次回にしよう。それより、そろそろ一度帰らないと怪しまれる。ローガたちもアリバイ作りで動いてもらっているしな。」
リースは完成した3つの物を無限収納庫に収めて、今日の宿に帰るのだった。
「夕食を食べて、みんなが寝静まったら、早速テストしよう!
静の森で。」
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