第52話 二柱の聖魔
アップですが、3日に一回くらいのペースになるやもしれません。
時々修正もしています。
「二人ともよいか?致命傷を与えるような攻撃は失格だ。また闘技場から転落しても失格だ。」
審判が、最初の口上をなぞる。
「はい!」
「おうよ!」
「では、はじめ!」
バシャスが不敵に笑い、槍を肩に担ぎ挑発する。
「わりいが、ゼライ様の弟子の件、俺がもらうっ!」
「…」
「いいか?行くぞっ!ハッ」
バキンッ!
「何っ⁈」
「それまで‼」
審判がバシャスの手元から無くなった槍を見る。
「待て!」
「勝者リース。」
「待ってくれ!今のは何かの間違いだ‼こんな簡単に負けるはずがない!」
「バシャス!それが現実だ。お前たちでは束になってもリースには勝てん。」
ゼライは、バシャス達に向かって、現在の力の差を告げる。
「いや、それは言い過ぎというか、何というか?」
リースは頭を掻きながら戸惑いをあらわにする。
「ゼライ様。今の発言は少々この者らの気を焚きつけるには強かったと思われますが、」
サファエルの爺、ベルギダンがゼライに忠言をしようとするが、
「事実だ。なんなら、今からそれを証明してみよう。リースがな」
「このくそ師匠!やるのは俺なんですよ!怖いんだから、この子達。」
「やるよ!我ら8人を一人で相手するという根拠を見せてもらいます、もし我らが勝てばゼライ様に修行を見てもらいます!」
サファエルが、もう一度の好機に手を挙げる。
「いいだろう!全員でリースと闘え」
「おいおいおいおい!あほ師匠!煽るなよ!」
リースは、師匠を罵倒しながらも、体制を整え静かに闘気を燃やしていた。
「(リース)」
フィーヴァが、リースに念話で話しかける。今は透明化して事の成り行きを観察していた。
「なんだ、この忙しいときに」
「(魔力が高鳴り、準備が整ったようだ。)」
「何の準備?」
「(もうすぐだ)」
リースの背後に控えていた創造と破壊を司る聖魔フィーヴァがつぶやく。
「ん?なにがだ?フィーヴァ。」
「(もうすぐ、一柱の聖魔が目覚める…)」
「はじめ‼」
開始の銅鑼が鳴り響いた…。
◇◇◇
「もうすぐ、一柱の聖魔が目覚める…ったって
出産途中の嫁に、看護師が「今子供が生まれる」って当たり前のことを冷静に言いやがって。今それどころじゃないっうの!
なんで今なの。空気読んでよ。
(…そうか、今わかったわ。
妊婦さんをイラってさせたのは、その怒りを出産のチカラに変えるためか〜。
などと現実逃避していたけど、今から闘うんだよなぁ。)」
◇◇◇
「(ふう、やっと目覚めた。意識下では、これが精一杯。
わたしの主人、私の名はテトラ。光と闇を司る聖魔。あなたの魔力で目覚めました。ありがとうございます。)」
テトラは、リースに念話で話しかける。
「(ああ、うん。
ちょっと今立て込んでいるから、フィーヴァ、説明して上げて)」
(あら、フィーヴァ。あなたは目覚めていたの?)
(ああ、テトラ。
リースは今、この世界の者達と自分を高める事をしている。
しばらく、観ておけ。)
(ふーん、わかった)
◇◇◇
全員がリースを囲む。
「良い判断だ!」
観客の誰かが言った。
弓を持ったソアラが初手の矢を放つ
リースは、右後方から来る矢を絡め取り、そのまま矢を飛ばし返す。
ソアラは、弓で辛うじて、返って来た矢を弾いたが、またしても弦が切れてしまう。
続いて、バシャスの槍が左前方から、頭に向けて、刺突が襲う。矢を返した反動を利用し回転したチカラを使い、バシャスの懐に飛び込み、一撃を加える。サファエルの剣が天頂から降りおろされんとする軌道を避け、回し蹴りを叩き込む。サファエルの影から、ジノスの棍棒が曲がって入って来る。振り抜いた回し蹴りの軌道を変え、その反動で上体を避ける。アルテの双剣が交互に襲い掛かるが回転してかわし、背後にまわると背中に気砲を打つ。バルトの蹴りを肘で受け、逆に側頭に蹴りを打ち昏倒させる。
空の軌跡を描く棍棒を掴み手前に引いて、相手の上体を崩す。棍棒を跨ぎ、回し蹴りの連続で、棍棒を叩き込む。カルラの武技の蹴りを空中で蹴りで応戦。その相手の蹴りの反動を利用して、反対の足で側頭に蹴りを叩き込む。
最後に残った、グランデのハンマーをチカラで止め、やがてハンマーにヒビが入り、砕け散る。
「それまで!」
試合開始から約1分。
リースの勝ちが決まった。
「まいった。」
「俺の負けや?」
「負けた。」
「くっ」
「どうして、悔しい」
「くそ〜。」
「なぜ、なぜなんだ、」
「…」
「ふふ。驚いたよ。同年代でこんなに強い子達がいるなんて。これからもっと強くなりそうだ。」
リースは心から称賛していたが、素直に受け止められるほど人間が出来ている者は一人もいなかった。
「まあ、まてまて、約束は守れ。お前たち。そうじゃな。せっかく来たのだ、歓待しよう!今日は宴だ!」
ベルギダンは、こうして無理やり場を納めた。
◇◇◇
(あら、驚いた。
私達が健在していた時代の子より、数段いえ、数十段能力が高い気がするけど、フィーヴァ、あなたの能力なの?)
(いや、リースのこれまでの積み重ねだ。)
(ふうん。
まぁ、あなたが主人を名前呼びしてるほど信頼しているって事はわかったわ。)
控室に移動したリースは、姿を現したフィーヴァに
「ふう、ちょっと焦ったが、何とかなった。フィーヴァ、あれ?テトラは?」
「リース。テトラはまだ意識が覚醒しただけで、実体は伴っていない。」
「なんだ、そうか」
「(あら、大丈夫よ。これでどうかしら)」
ぽん
「うわっ、ちっさ、い…かわいい。」
「ふふふ、アバターだけど、当面はこの姿の方が話しやすいでしょ?」
テトラは分身体を顕現させた。魔力の関係かその姿は体高15cmだった。
「あれ?もしかしてフィーヴァもこれならできたんじゃないの?」
「…。そうだな…。」
「おい、念話はで話し続けるって、結構疲れたぞ!」
控室にゼライが入って来た。師匠にはフィーヴァの事は既に話をしている。ただし鍛錬に興味のないフィーヴァは、師匠の鍛錬時間は、資料室や武器庫に入りびたりだったので会っていない師匠も結構いた。
「リース、そちらがフィーヴァ様か?」
「えっ、ああ、そうです。」
「フィーヴァ様、お初にお目に掛かります。私はリースに千家武舞を教えている、ネオエルフのゼライゼライゼと申します。」
「うむ、知っている。
我が創造と破壊を司る聖魔フィーヴァ。貴殿の指導で、リースが強くなっていくのがわかる。それと、こちらが、先ほど目覚めた聖魔のテトラだ。」
「はっ?二柱目の…」
「私の名はテトラ。光と闇を司る聖魔。私の主人の魔力で目覚めました。まだ、完全覚醒ではないから、この姿だけどよろしくね。」
「はっ、光栄でございます。聖魔様の事は先祖代々口伝にて受け継がれてございます。」
「はいはい、師匠、ところで話があったのでは?」
「ああ、そうだな。聖魔様少し失礼します。リースよ、当面、ここでこ奴らを鍛えて欲しい」
「えっ?僕がですか?それはなぜ?」
「お前は、既に十分強い。ただ、それは孤独に強いだけだ、それではだめだ。弱きものを強くしていくことで、お前自身がさらに強くなる。」
「そうだな。指導することによって、自分では見えなかったものが見えてくる。リース、やっておいて損は無かろう。」
「やれやれ、フィーヴァが言うならそうなんでしょうけど、教えるのが面倒だからってことじゃないですよね?」
「…」
「…、おい、ししょ~う?」
「よし、宴に行くぞ‼」
「師匠、ちょっと話はまだですよ」
◇◇◇
「ベルギダン翁さん、お願いがあるんですが。」
「なんじゃ?」
「今日闘った同年代の子たちと一緒に鍛錬をさせて頂けますか?」
「おお、それは願っても無い事だが…。」
「毎日と言う訳にはいかないのですが、こちらの予定に合わせて伺いますので、宜しくお願い致します。」
「おお、皆に話しておこう」
「ゼライ様」
サファエルが、ゼライに質問を投げかける。
「ん?なんだ?」
「どうして、私たちは負けたのでしょうか」
サファエルがうつむいたままだ。
「それはな、お前たちの里、すべての武術の基になっている基礎が出来ていないからだ」
ゼライは片手に持った酒を飲みながら、語り掛ける。
「「「「基礎?」」」」「…」「…っ」
ゼライの近くにいた、今日闘った者たちは耳をかたむけていた。
「そうだ、継続的な基本の鍛錬が甘く、基礎が出来ていない。だから体幹が維持できず、そして呼吸による気の充実がなっていなかった。だから負けた。」
「呼吸?それってまさか」
「ああ、お前たちの武術の基礎の基礎の呼吸法だな。
しばらくは、リースと共に無手での基礎に励め。半年は武器を持つことを禁じる」
「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」
こうしてしばらくゼライの修行は、大地の城の麓で行われるのであった。
◇◇◇
それから数か月が過ぎ、そろそろ秋に掛かろうとするところ、アドルシーク領の領主邸に、領主の兄アズンが尋ねてきた。
「静の森の奥に遺跡があったようだ。ジゼル様と共に調査に行ってくる。王都へ鳥便を出してくれ。」
「それは良いが、今度はどんな遺跡なんだ?」
イズンが兄に尋ねる。
「どうやら、様々な文字が多数ある神殿造りの建造物らしい。」
「なるほどな。危険はないのか?」
「まあ、多少の危険はあるが、慎重に事を進めるよ?」
「そうか、なら一応護衛は多めに用意しておけよ?ジゼル様もいらっしゃるなら」
「ああ、もちろんだ。わかってるさ。」
「まあいい。そこは信頼しよう」
「そうだ、リースも同行させても良いか?」
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