第47話 小さな商会
50話まで掲載後、10日間くらい修正したりするので休みます。
領主邸の厨房が刷新された。
料理長はドヤ顔で部下の料理人に自慢しているが、施工前にリースにアドバイスを聞いていたことはみんなが知っていた。新厨房のほのぼのとした、やり取りをのぞき込んでいたファティマに、リースは背後から声を掛ける。
「ファティマさん。例の商会に行きますよ?」
「はいっ!びっくりした~!驚かさないでくださいよ。」
「あ、ごめんなさい。」
「もー、リース様、持っていくものは、こちらのカバンですか?」
「そうです!では行きましょう!」
◇◇◇
リースとファティマは、ある商会を尋ねるため、領都中心へ向かった。
「あの、リース様。」
「なんですか?」
「その、えらく白く輝く犬は、リース様の犬ですか?」
「うん、そうですよ。ローガって言います。かわいいでしょ。」
「ファウン。」
いつの間にかついてきたローガをなでなでしながらファティマに答える。
「さっ、行きましょう!」
しばらく歩いていると、ファティマはリースの背中にある動物が引っ付いているのに気付いた。
「あの、リース様。」
「なんです?忘れものですか?」
「い、いえ、その背中の赤い動物は何ですか?」
「ああ、お猿さんのテンだよ。よろしくね。」
「ウキキッキッキー。」
「あ、はい。あの先ほどまでは、いなかったと思ったのですが。」
「そうだっけ?かくれんぼしてたのかな?いたずら好きだから。それより、今日行く商会だけど、主の方が盗賊に襲われて亡くなったんだ。まあ、盗賊を放置していた責任がないと言ったらうそになるんだけど、出来る限りの支援はしてあげたいと思って。」
「なるほど…ですね。ところで、リース様の肩に乗ってる青い鳥はリース様のペットですか?言っておきますが、もう驚きませんよ‼」
「うん、ファディって言うんだ。かわいいでしょ?」
「ピョー。」
「ははは、そうですね。ちなみにあと何匹いるんですか?」
「種類が全部違うけど、10匹くらい?」
「す、ごいですね。普段どこにいるんですか?」
リースが召喚魔法で召喚したり、テンたちが勝手に転移してくるので、普段どこにいるのか知らなかった。説明が面倒になったリースは、話題をそらすことに決めた。
「えっと、そろそろついたよ。」
バサササ
「あっ、鳥さん行っちゃいましたね」
領都の中央通りの中ほどに小さな商会がある。
ここは、先日行商部隊を盗賊に襲撃を受けた商会で、跡取り息子を亡くしていた。亡くなった息子には、病気がちの妻と三人の子どもがいる。
子供は、リースより2歳年上の姉と1歳下の弟、4歳下の妹だった。
店舗の中で、初老の男と小さな少女が口論をしていた。
「…だから!このお店は、私が守るっ‼」
「いやしかし、と言っても、今この商会は仕入れもままならない。
このまま続けていく事は難しい。わかってくれ。」
「でも、でも、お父さんが護ったお店を無くしたくない‼無くしたくないの!」
「俺も頑張るから‼」「えーん‼」
小さな男の子と女の子は姉の後ろで必死に宣言する。
カランコロン
「こんにちは!」
リースとファティマは、口論が続く中、かまわず店舗に顔を出す。
「でた、リース様の空気を無視する戦略的申し入れ…。」
「ファティマさん、何か言いました?」
ファティマは過去の経験から、自分の行動を押し通すリースの手段に感心して、そして呆れていた。
「い、いえ、なにも!あはははは。」
初老の男性は、リースをちらりと見ると孫娘の方を向き、
「今立て込んでいるから、またにしてくれないか?」
リースは構わず一歩店舗に入ると、
「悔しい時に泣くんじゃ無い。悔しい時は歯を食いしばるんだ。
涙は、嬉しい時と悲しい時に流すものだから!」
「誰?あんた。」
9歳の少女は、リースに向かって場違いな声掛けに、冷静になれた。
「俺はリーフィス・セファイティンと言います。リースって呼んでね。」
「おじいちゃんが言ったでしょ、今忙しいから、またにして。」
「ちょっと待て。あのもしかして、領主家の方ですか?」
「はい!そうです!お取り込みのところ申し訳ありません。」
「何君!今忙しいって言ってるでしょ⁈」
「あっ、こら!こちらは、領主様のご子息だ!」
「あ、いや僕は、ただの貴族の四男坊、なので、どうぞお構いなく。」
「はぁ。それで今日はどの様なご用件でお越し頂いたのですか?」
「商品の販売契約を結んで頂きたく参りました。」
「販売?」
「契約?」
「そうです。」
「あのさっきの話し聞かれていたかと思いますが、お店を閉める内容だったのですが…。」
「仕入れもままならないと聞こえました。ならば仕入れがあれば良いのでしょう?」
「いや、しかし、販売するにしても、この子はまだ小さい。」
「あなたが居るじゃないですか?」
「いや、わしは。…。」
「息子さんが亡くなり、気力がなくなったんですよね?
ですが、このお孫さんたちを路頭に迷わして良いのですか?あなたの息子さんが残したお孫さんを」
「…っ、わかりました。お話しだけでも聞きましょう。」
「そうこなくちゃ。」
「あの~、あの犬さんなでなでしてもいい?」
「いいよ。」
一番小さな妹はローガを撫でたかったようだ。
◇◇◇
「で、取り扱う商品は何ですか?」
「石鹸です。」
テンはリースの頭を毛づくろいしている。
「石鹸ですか?たいした利益にならないのですが。」
「今までの石鹸は、輸入した石鹸の転売か、安い粉石鹸で、一般家庭は灰などを代用した物だったと思います。ご覧ください。こちらは、天然植物由来の石鹸です。香りも良く、汚れもよく落ちます。いくつか種類があり、それぞれ洗いたい専用の石鹸をご用意しております。いかがでしょうか?
まずは手始めに、この商品を扱ってみませんか?」
「洗うものに対して、石鹸が変わり、この美しさ…。これは間違いなく売れる‼しかし、なぜですか?私どもの商会よりも、立派な商会がいくつもあるのに。」
「それはですね。まず
一つ、他のしがらみが少ない商会である。
一つ、我が領を拠点の商会である。
一つ、危機的状況である。
一つ、取り扱う商品が少ない。
一つ、従業員が少ない。
一つ、盗賊の犠牲になってしまった。
以上です。」
「盗賊の犠牲になってしまったのは、盗賊を野放ししていた我が領の治安維持騎士団の不備でもあります。そのお詫びもあり、残されたご家族の生計を保障できるよう取り計らうことも理由の一つです。
もちろん、全面的な支援は出来ませんが、間接的な支援は惜しみません。いかがでしょうか?
まぁ、他に思い当たる商会が無いって言うのが、最大の理由ですが。」
「わかりました。そこまでおっしゃるなら、私どもで出来る精一杯の事をさせていただきます!宜しくお願い致します。」
「それで良いですか?お姉さん。」
「は、はい。ありがとうございます。私、ミューレと申します。
こちらは、弟のファオ、妹のサフィーレです。」
「うん。こんにちは。」
「先ほどは失礼しました!パパは死んじゃうし、ママは病気だし、お店は無くなるって言うし、もう、お店しか…、私たちにはお店しか無かったんですぅー。」
「グスン。」「わ~ん。」
小さな3人は泣き出した。
「うんうん、そうだよね。わかるよ。でもね、これだけは覚えておいて欲しいんだ。君たちのパパやママは、お店を残して欲しいっていうのが一番の希望じゃない。君たちが幸せになってくれることの方が一番の幸せなんだよ。だから、お爺さんが君たちの事を思って「店を閉める。」といったのも間違いじゃないんだ。だからそこはわかってあげてね。」
「はい。わかりました。」「うん。」「?あい。」
「よし、ではお爺さん、契約内容を確認してください。製造はこちら、販売は元はそちら、卸値は変えないでください。当面は値下げしません。ファティマさん資料を渡してください。」
「…はい。」
「ど、どうしたんですか?」
「いえ、感動してしまって…。」
ファティマは、今までのやり取りを静かに見つめ、うっすらと涙を浮かべていた。
「それでは、商品の説明をします。
こちらは、貴族向け商品、冒険者向け商品、家庭向け商品を提供します。
ガバランさんはまず、一般販売と卸の商いをお願いします。」
リースは、汚れた布をバケツの中で石鹸を使いきれいにする。
「どうですか?この泡立ち、汚れもこんなに落ちますよ!」
「これは凄い。今までの石鹸がもう使えなくなります。」
「リース様どうして石鹸なんですか?ほかにもいろいろ…。」
ファティマは、疑問に思いリースに聞いた。
「石鹸を選んだのは、腐らない、運ぶのに便利、一定の需要がある、などいろいろあるけど、生活水準を上げるためなんだ。不潔だと病気になりやすいからね。まずは、この領の公衆衛生を向上させるのも目的なんだよ。」
「?私には、良く分かりませんが、この石鹸が皆さんに喜ばれる事はわかります。」
「あの、リース様。私頑張ります!
パパが残してくれたお店をママが倒れて、私が弟や妹の事、パパに頼まれているから‼」
「ミューレさん、僕のことはリースでいいよ?同じ子どもだしねー?
それに頑張ろっ!大丈夫‼周りの皆さんがお手伝いしてくれるから、1人じゃないからねー!」
「リース君」
「リースのにいちゃん」
「ありがとう」
「じゃあ、打ち合わせ始めようか?」
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7月の末までに表現が荒いところと、説明が足らないところの修正を入れると思います。
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