第42話 旅立ち
7月中旬には準ヒロインが出る気がします。
先日の孤児院による社会科見学で、5つの孤児院にリースは同行し、サーカス一座の裏方を見学させた後、お待ちかねのショーを見せた。
日頃、遊びと称した訓練に飽きつつあった環境から、気分転換を促した催し物だったが、結果、子供たちは大喜びし、
「「「大きくなったら一座に挨拶に行きます!」」」
冒険者志望から、サーカス一座に希望する者が増えたほどだった。
「リース君!おはよう!」
「おはよう!ステラ、今日も早いね。」
サーカス一座座長の孫娘ステラリリは、サーカス一座が宿泊するテントから、公衆浴場に通っていた。朝の一番風呂が好きだった。
その帰りにリースに会った。
公衆浴場は、リースが領主邸に風呂を作るために温泉を掘り当て、その余力で作った。久しぶりにこの領に来たサーカスの団員には、すこぶる評判が良い。
「えへへ、リース君一緒に行こう!」
「ん?ああ、そうだな!」
リースは、サーカス一座座長から、相談事を聞くために朝から一座のところに来たのだった。
「リース様、おはようございます。」
「グラムラさんおはようございます。今日はどういった内容ですか?」
「はい、リース様にお教え願いたいことがございます!」
「うん、スカレイ(マンタ)の事かな?」
「どうしてそれを‼」
「まぁ~。それは座長のマンタを観察する目が鋭いからよくわかりましたよ⁈
スカレイを手に入れたいという事で良かったですか?」
「そうです!リース様のように神出鬼没。透明化や空中でのショーを作っていきたいのです!」
「ふむふむ、なるほど。よくわかりました!いくつか条件付きですが、ご協力致しましょう!」
「…っ!ありがとうございます!」
リースはテイムの情報を他国に漏らさない事、テイムのきっかけは自分達ではなく、アドルシークの者しかできない事。その者からスカレイを購入した事などと細かく決めていった。
◇◇◇
「リース君!難しい話は終わった?」
「ん?ああ。終わったよ!」
「じゃあ、今日は、街を一緒に見て回ろうよ?約束していたでしょ⁈」
「え?そうだっけ?」
「ひっど~い‼リース君約束したじゃない‼それとも私と街を回るのが嫌なの…?」
「いやじゃないよ‼大丈夫!一緒に行こう‼」
「うん!じゃあ、まずは泉のある広場に行こう‼」
ステラは、リースの手を引き泉のある広場に向かった。もうすぐ一座は他の領に移動し、その後に他国を回る。アドルシークに帰ってくるのは10年後くらいにはなる。離れてしまう寂しさから、ステラが握ったリースの手は、今日一日離す事は無いのであった。
◇◇◇
リースは、いろいろ街中を巡り、夕暮れ近くになって、ステラをアドルシーク領でも景観が素敵な丘の上に連れてきた。
見渡せば、近くに鳥たちがたたずむ泉があり、遠くにはアドルシーク領の街が見渡せる。
「わぁ~!キレイ‼小鳥さんたちもいっぱいいるね!」
「そうだね。鳥たちが楽しそうだね!」
「…あのね。リース君。
もうすぐ、アドルシーク領の公演が終わって、次の領に移動したら、別の国に行くの。」
「…うん、そうらしいね。」
「…こちらに戻ってくるのは、数年後になるの。」
「そうなるよね?」
「リース君、また会えるよね?」
「ああ、会えるよ!
ステラは、その時はもっと素敵になっているんだろうね!」
「えっ、…すっ、素敵に⁈」
「ああ、なっているよきっと!」
「…。ほんとは、行きたくないんだぁ。
前までは違ったんだけど、リース君に会ったから傍を離れたくないよぅ…。」グスン。
「ふふ、出会いがあれば別れがある。けどね…。
僕たちは、知り合った。
そして何時かは、再び会う約束もしてる。なんの問題がある?
ないよ‼問題なんて?
ちょっと離れている時間があるけど、
次に会うときに、もっと素敵になっていることを楽しみにしているさ?」
「…うん!もっともっと素敵になっておくね‼」
「ああ、楽しみにしているよ‼
じゃあ、せっかくだから、今度は僕が歌ってみようかな?」
「えっ⁈本当?」
「ギターは、まだこの身体じゃ大きいから、このウクレレでね!」
「ぎたぁ?」
リースは、前世で流行っていた歌を10曲ほど披露し、終わるころには、周りは人だかりができていた。ステラの弟も観客でいて、弟にウクレレをプレゼントすると、ひどく喜んでもらった。
「(ウクレレは作りは簡単だから、そんなに尊敬のまなざしを向けられても…、)照れちゃうよ!
◇◇◇
場所は変わって、ウリットバーン帝国の一室に、金装飾をあしらった白衣の男と灰色の男たちが集まっていた。その中に、一人黒衣の男が壁にもたれかかる男がつぶやいた。
「…お前たちは資金がない、技術がない、そして、知識がない。我々には広域に展開する人員がない。だが、我が組織と目的が同じだ。しかし、我々の方が、お前たちの命運を握っている。それを忘れるな。
あの方が、もたらした術をせいぜい有効活用することだ。」
「ぐぐっ、これは我が国の呪術師に作らせた特別製だ。」
「…。」
「この宝箱を進物に紛れ込ませるのだ。アヴァルート王が、呪いに罹れば儲けものだ。その他王族でも、王の心労は計り知れないだろう。」
「マーノルーナ王国の例の伯爵領を攻略した時に使った草(密偵)を利用して、近隣の裏切り貴族の命乞いとして、貢ぎ物を送り、呪いを仕掛けろ。それでマーノルーナと不仲になれば、我々も攻略しやすくなる。」
「はっ!」
「…ふっ(その程度で、あの大国が揺らぐとは思えんが、まあお手並みを拝見しよう。)」
黒衣の男はほくそ笑み、一室から消えるように出て行った。
◇◇◇
アヴァルート王国の広間の一室に、アヴァルート王家に自国の貴族や、他国の各王家、商家からの貢物が定期的に届いていた。王家は、その貢物と陳情を受け取り、裁量によって再分配をしていたが、貴重な品や、他に比類ない物は王家の宝物殿に収められる。
例の宝箱は、あの会合より3ヵ月も経って届いていた。
アヴァルート王に、内政官からの報告する為、王の執務室を訪れた。
「陛下、マーノルーナ王国からの使者が、親書と手土産を持って来ました。」
「うむ、適当に分配せよ。配分の裁量はトインに任せる。」
内務大臣トイン(内政の行事、貴族間交渉を司る)の仕事は、こうして増えていくのであった。
「はっ!」
◇◇◇
先のマーノルーナ王国からの進物が届いて2ヵ月後、
「姫さま、ここは宝物庫です。許可なく入ってはいけません。」
姫の従者は、主を諫めるために声を掛ける。
「えー、兄様も姉様も呼ばれたではありませんか⁉」
年頃の表情をみせる姫は、従者に反論する。
「それは、アリスティア様に合う物が無いからですよ。」
奏上された品々は、王家に似合うものがあれば、王族の等級の高い者から選ぶことが出来る。
宝物庫に収められたものは、安全性が確保されたものに限り、確認できないものは、地下倉庫に収められる。
第二王子ジュランの魔剣も、ギルドが、ダンジョンと古代遺物から発見した物を王国に寄贈・買取・税金のいずれかで、宝物庫収められたものだった。
「私に合う物が無いのかは、私が、実際見て見ないとわかりません。」
「は〜。仕方ないですね。見るだけですよ?」
従者は、姫の正論におれた。もともと宝物殿は、王族に限り、立ち入り禁止とはなっていない。中の物を持ち出すときに、王の許可を取っていれば、何ら問題がない。
「はーい。」
「まったく、お転婆なのか、しっかりしていらっしゃるのかわかりませんね。ふふふ。」
「んー。どれどれ?
これは。布材や壺に綺麗な石?」
可愛くかしげる姫の前に、例の箱があった。
「ん?この箱綺麗!これもらっても良いかな〜?お父様に聞いてみる!」
パカッ
ブワァー
「きゃあー⁉」
バタッ
箱が不意に開き、半透明な影がアリスティアに襲い掛かる。
「姫さま⁉」
「アリスティア様‼」
従者と、専属メイドが倒れたアリスティアに声を掛けるのであった。
◇◇◇
「陛下!アリスティア様が、宝物庫の中の一つに触れ、倒れられました!」
「なんだと‼従者は何をしていた!」
「はっ、アリスティア様の嘆願に逆らえなかったようで…」
「それを戒めるのが従者の!ええい!そんなことより、アリスティアは、どんな状態だ⁈」
「はっ、治癒師が申すに、呪い系の術に罹っている可能性があり、急ぎ魔術師か呪術師を呼んだ方が良いとの事です…。」
「既にヴォー様にはお声掛けをさせております。」
魔務大臣ヴォー(魔法.魔法具関連を司る)は、この国の魔術関連のすべてを取り仕切る。
「ヴォーに、治癒師と共に解呪の対策をするよう手配しろ!
ワシもすぐに行く。セアト。」
「はい。」
王の傍らにいつも控えている、宰相セアト(情報部、諜報部、宣伝部、計画部を司る)に今からの動向に指示をする。
「今回の件で、どんな経緯か、どんな裏があるのか、誰が関係しているかを…。」
「はい。」
セアトは、意見を述べるでもなく、冷静に返事を返した。長年付き添っている宰相セアトに今更すべてを指示することはない。セアトの冷静さが、娘の大事に意識が奪われていたと気づき
「任せた。」
王は、セアトに託し、アリスティアのもとに向かった。
◇◇◇
「こ、これは!
どうしたんじゃ、これは⁈」
王が、アリスティアの治療部屋に向かうと、その状態に驚愕する。
「アリスティア様は、呪術によって魔力暴走をしています。このままの状態では、
…もって2週間…です。」
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字脱字言い回しのアドバイスお待ちしています。
7月の末までに表現が荒いところと、説明が足らないところの修正を入れると思います。
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