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第35話 発覚

孤児院の襲撃した盗賊を退治した夜。ベッドに寝転がるリースに、フィーヴァが検証していた事実を告げる。


「リース。」


「ん?なんだい?」


「知っているかもしれないが、リースには致命的な弱点が有る。」


「はっ?えっ?どんな?」


「一日のうち、必ず2時間眠りにつく。」


「…健康的だねー。普通じゃん。」


「…わかっているだろう。完全に活動停止状態だ。」


「…っ!やっぱりそうだったか。…冒険者として生きるなら、致命的だよね。

これほどリスクが有る事はない。

2時間は、夜襲に全く対応出来ないって事だろう?」

リースのいる世界は、現代日本のような安全な世界ではない。セキュリティーの甘い危険な世界だ。またさらに、魔法というチカラが不確定な危険を生じさせる。


「ああ、…恐らく原因は、前世の病気のトラウマが関係しているのだろう。眠れなかった反動だろうな。」

フィーヴァが、病気の因子を推測で考察する。


「…って言っても、冒険者になんかならないから関係ないけどね!」

リースは、冒険者になろうとはしていない。自由気ままに旅がしたいのだ。軽く強がって見せるが…。


「…冒険者だけじゃないだろ?」


「そうなんだよね…。この世界はどこまでも自己責任。

だから、どんな時でも即時対応できる様に鍛えておかないといけないのだけど、俺が寝ている間、護ってもらえるガーディアンを作らないといけないってこと…だな?旅をするにしろ、なにをするにしろ。」


「…そうだな。そうしなければならないだろう。ガーディアンがいれば、ある程度リスクは回避出来る。」


「あれ?でもフィーヴァがいれば、ダイジョブじゃない?」


「忘れたのか、リース。我は、単体では大したチカラは発揮できない。契約者を通じて全ての能力を発揮できる。契約者の魔力の範囲内でだがな。」


「…そだね。とりあえず、検証することから始めようか?」


「むっ?どうするのだ?」


「いつ、2時間なのか?合計で2時間なのか?いきなり、寝るのか?などかな?見ていてくれ。」


「…いや、我も眠いから難しい。」


「嘘を言うな!嘘を‼1年くらい寝なくても大丈夫だろう!つか、寝てるところ見た事ないな!俺は‼」


「我は嘘など吐かん!次元の隙間で休んでいるのだ!…まぁ冗談だ。協力しよう。」


「ふふふ、よろしくな!フィーヴァ‼」


「…ああ。

…それともう一つ、リースにはいくつかの殻がある。」


「えっ、殻?って何?それ?」

うすうすは感じていた睡眠の障害とは別に、フィーヴァが告げるもう一つの検証は完全に想定外の為、本気で困惑した。


「鍵とも枷ともいう感じで、リースのチカラに制限が掛かっている。ちょうど良い表現が見つからないため、ここでは殻と呼称する。」


「…。それで?」


「今まで、リースは少なくとも四度、この殻を破って成長している。一度目と二度目は生前だ。三度目は生まれる時、四度目は我を見つけ高熱が出て死にかけた時。おそらく死に掛ける体験をした時に、この殻を破ることが出来ると思われる。」


「っ…⁈事実か?」


「ああ、リースの記憶とこれまでの成長と霊体の残滓を観察するとそういった結論になった。」


「…そういえば、生前も発病で死に掛ける度、能力が上がった様な記憶がある。」


「そうだ。どういった形で死に掛けると、どう成長するかはわからん。そして、それは危険な賭けだ。現状でも十分優秀な人間だ。わからない事に掛けて命を無駄にすることもある。現状そういった殻があるという事と、今までに四度破ってきたというだけの話だ。」


「わかったよ。とりあえず、死に掛けて生還したら、いいことがあるかもよ?っていう程度に思っていたらいいんだろ?」


「ああ、そうだ。」


「わかった!じゃ…寝るわ‼」


「…。」


「ちゃんと見ていてくれよ!俺の寝るとこ‼」


リースは、フィーヴァにビシッと指さし注意する。


「…我はお前の母親ではないのだがな…?」


◇◇◇


ここは王都学園の教室。

「おい!アーク」


「なんだジュランか?」


「おいっ!第二王子に向かって、「なんだ?」って言えるのはお前くらいだよ⁈アーク。フッ、ハッハッ‼」


「学園では、身分は関係ないからな?」


「ふん。明日の野外実習だが準備は万端か?」


「ああ、とは言っても王都の隣の森へピクニックに行くようなものだ。簡単な自己防衛手段と、サバイバルキットぐらいだろ?」


「何言っている?これは従軍訓練だ。今回の想定が魔獣討伐という事なので、それなりの装備を身に着けておけよ?」


「そうか。…わかった。」


アヴァルート王国第二王子のジュラン・キュエル・アヴァルートと東の辺境伯の長男アークフィス・セファイティンは、主席と次席の関係で対等に話ができる唯一の親友だった。


◇◇◇


王都郊外の森、この辺りの森は、だいたい狩りつくされており、危険な魔獣は少ないはずだった。


「おい!ジュラン‼この辺りの魔獣は少ないんじゃなかったか⁈」


「ああ、確かにこの辺りの魔獣は昨今の討伐遠征の影響で、狩りつくされているはずだ!」


「だが、この数の多さは、俺たち学生の身に余る。ジュラン‼隊長のお前の指示で撤退すべきだ!」


「…やもなしか⁈良し!撤退するぞ!魔法部隊は後方を警戒しつつ後退、タンクは最後尾を死守。攻撃部隊は盾役の補助と魔法部隊の護衛に当たれ。他の者は周りを警戒しながら後退だ‼」


「ジュラン‼まずい‼でかいロックベアが来た!この魔獣は、物理攻撃に強い。魔法部隊が少ない俺たちじゃ不利だ!」


「俺が殿をする。アーク、部隊を頼む!」


「何を言っているんだ!隊長のお前が指揮をとらないでどうする?」


「だが、有効な攻撃ができるのは、俺の魔剣か魔法部隊の火力ぐらいだ!」


「だったら、ここでこいつらを食い止めて、部隊が下がったら一気に撤収しよう!俺も付き合うぜ!」


「お前こそ何を言っている!アーク‼誰が撤収の指揮をするんだ⁈」


「案ずるな!ジュラン!俺たちはそんなに愚かじゃない!ポイントアルファーまでの撤退なら、指揮がなくても撤退できる!ここにやつらを足止めして、一気に撤退するぞ‼」


「くっ!ハッハッハッ‼そうか‼やるぞアーク‼」


「おおっ‼ジュラン!どちらが多く倒すか勝負だ‼」


◇◇◇


「ハァハァハァ!あの魔獣たちは、ロックベアから逃げてきたからあんなに多かったのか?」


ジュランは、何とか魔剣の性能で3頭のロックベアを退治した。

「…たぶんな。ハァハァ。」


ジュランとアークは半分背中越しで双方の死角をなくしている。


「油断するな‼」


ロックベアが体を覆う岩石のような体表を使いアークに体当たりをする。

「ガッ!」バキンッ‼

「…クッ‼剣がっ‼」

アークの剣が折れた!とっさにアークは腰に指したリースから貰ったナイフに手を掛ける。刃渡りは50㎝程の大型ナイフである。

ロックベアーの右手が襲い掛かる。


アークは、その一撃を受け止めるべくナイフで応戦する。


「アークッ‼」


スパッ!


「「…。」」


……。

GAAAAA‼ Go‼Gyo‼ooooGa…


ロックベアの右手がキレイに切断された。途中で痛みが増したのかロックベアが悲鳴を上げる。


「…。」「…。」


今までアークの剣は、一振りもロックベアの体表を傷つけることが出来なかったが、ロックベアが切断された右手に注意がいっている、その光景を見て無意識にナイフをロックベアに振るうと、ロックベアがいとも簡単にバラバラに切断された…。一瞬の静寂が辺りを包む。なおもロックベアに囲まれている現状で、


「…。おい!アーク。」


「…なんだ⁈ジュラン。」


「そのナイフは、なんなんだ?」


「…。弟から貰った。」


「おかしいだろ。」


アークは、左から襲ってくるロックベアーを避けながら、すれ違いざまにナイフで傷つけるつもりで振るう。ロックベアは、胴体が切断される。


「…。おかしいよな?」


「…。おかしいな?」


「おいっ!こちらの魔剣で何とか戦える程度なのに、ナイフ一振りで切断できるって、おかしいだろ‼」


「今それどころじゃないだろ‼一気に片づけるぞ‼」


数分後、10頭いたロックベアは、ジュランとアークによって殲滅された。


「ハァ、ハァハァ。ジュラン大丈夫か?」


「ハァハァハァ‼…ああ、大丈夫だ!」


「フゥッ!よし!一度みんなと合流をしよう!」


「ああ、って、おい!そのナイフの事、あとで教えろよ‼」


「おい、王子だろ?小さなことを気にするなよ!」


「王子は関係ないだろぅ⁈…はあ、まあ一応討伐できたことをよしとするか‼」


「そうだな!ジュランと俺でロックベアを殲滅できた。誇って良いんじゃないか⁈」


「おまえが6で、俺が4だがな?そこは普通譲るもんじゃないのか?王子に?」


「王子は関係ないんじゃなかったのか?」


「なんだと⁈   …フフッ!ハッハッハッ‼」


「ハッハッハッハッハッ‼」


王都へ帰る道筋は、二人をやさしく包み込んだ。

翌日、ジュランとアークは、王城で事の経緯を説明することとなった。




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