第31話 伝言
ここは、マーノルーナ王国のとある伯爵家。
2年前、人為的な魔獣の大量発生により、王都が壊滅的な状況に落ちた。
その結果、国境付近に駐屯していた軍を内側に下げてしまった影響で、警戒していた隣国からの急な侵攻に、地方の貴族は対応できなかった。他領からの増援軍が来たときは、その地を守護する伯爵家は、壊滅状態になってしまった。
小高い丘にある伯爵領主邸の一番奥の部屋で、
「何者ですか!」
メイド長が誰何する。
漆黒の衣服に身を包んだ侵入者は名乗らない。
「ほう!これはこれは珍しい。これなら高く買いとってくれるだろう…。 くくく。お前たちは、これから奴隷となって、買われた主人に可愛がってもらうのさ。」
男は、薄笑いを浮かべながら、部屋の中を警戒し、メイド長を見ずに語り掛ける。
「な、なにを‼誰かっ!誰かいませんか⁈」
「無駄だ、護衛の騎士たちは、全て排除した。残った奴らもほぼ捕らえた。お前たちが最後だ。」
「くっ!お嬢様方、私が気を引きます。後ろのドアから逃げてください!今です‼」
メイド長は、短剣を持ち、男に飛び掛かる。男はひらりとメイド長をかわし、
「あうっ‼」
腕を極め背後から、
「無駄だと言ったろう?既に屋敷は俺の配下が逃げ道を塞いでいる。」
「くっ、お、お嬢様‼申し訳ありません…。」
「ふっ、まあまあ、死にはしないさ。幸せではないがな…。くっ、くっ、くっ、はっはっはっはっ‼」
6歳の少女たちは、心の中で叫んだ。その願いは叶わないと知りながら。
「「「「だ、誰か、助けて…。」」」」
この日、マーノルーナ王国のとある伯爵家は滅亡した。
◇◇◇
天空城から、夜遅くに帰ってきて、メイドのプリーツに激おこされたリースだったが、天空城でのひと時が楽しくて、寝落ちは早かった。
「むっ、フィーヴァ!いるか?」
急に目覚めたリースが、フィーヴァを探す。
「なんだ?」
「今、夢を見たんだが、内容が朧げなんだ?解析できるかな?」
「ああ、強い思念波の影響だろう。
まれに波長が合う者同士の思念というか、念話が繋がる事がある。だが、場所の特定はできず、内容の詳細も掴めないことが多い。よくあることだ、気にするな?」
「…そうか?なにか、とても悲しみと絶望の声に、エコー掛かって聞こえた気がしたが…。」
妙な胸騒ぎを持ったが、確かにどうにもならない感覚なので、しばらく心の片隅に預けるのだった。
「…明日も天空城に行ってみるか。」
◇◇◇
ここはリースのいるアドルシーク領から南に位置し、海の向こうの南洋にある大きな島で、一つの国を成していた。漁業と塩の生産がこの国の経済を支えていた。
「ギルド長、ある日、山の中腹に不審な穴が見つかりました!」
「なに?突然か?」
「はい!先日その前を通った木こりの証言ですので間違いありません。」
「よし、冒険者を募り、調査に向かってくれ‼」
「はい!」
◇◇◇
「ギルド長、大変です‼一週間前に依頼した冒険者が帰ってきてません。」
「なんだと!不審な穴の調査してもらうと、手配したあれか?誰も帰ってこなかっただと?」
近くまで行った冒険者の話からギルドの職員は、それがダンジョンだという事がわかり、冒険者を募って、ダンジョンの調査に向かわせた。しかし、またしても誰も帰ってこなかった…。ギルドは島の冒険者では立ち向かうことが出来ないと判断し、外部からの冒険者を募ることにした…。
しかし、その手配は間に合わなかった…。
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