第29話 風呂
リースの街おこし日記。
辺境伯の四男坊は、跡を継がなくてよい、気が楽だ。面倒なことは全て兄たちに押し付け、せいぜいのびのびと過ごさせてもらう!そうだな、今日は、お風呂を作る製作日記を書こうと思う。
アヴァルート王国は、基本的に湯船に浸かるという行為はしない。風呂があるのは、王都王家・公爵・伯爵邸・騎士団宿舎などの限られた場所と、ごく一部温泉街のある街でしかしない。しかも、体を洗うために溜める程度である。貴族も基本的にサウナか、湯あみ程度で、一般庶民は水浴びか、お湯で拭く行為で済ませる。そんな日常にある人物がキレた!ある人物とは俺だ!
もともとの性分か、生活改善にはチカラを入れていきたい。食べたいものは食べ、飲みたいものは飲み、歌いたいときには歌い、踊りたいときには踊る。そんなラテン生活を送ると決めている俺様に、この問題があることに、気付いた!
「うが~‼風呂に入りたい‼」
俺は、領都の兵士が駐在するところに来ていた。
「リー坊じゃねえですか?どうしたんです?」
と従士長バナンが、聞いてくる。
(こらっ!貴族のご子息様だぞ!言葉遣いがなってない‼ひかえおろぅ~‼と昔の時代劇のセリフを思い出した。特に俺は気にしてないけど、上級貴族が来た時大丈夫か…?)
「土魔法の得意な人に手伝ってもらいたいのですが…。もちろん父には伝えていますし、特別手当も出します。」
「土魔法の得意な奴は10人?くらいはいるがどうするんだ?まあ闘いの時に陣地形成に必要だからな。」
「穴を掘って欲しいのです!深く‼」
「はあ?何でまた?」
「温泉を掘り当てたいと思いまして!」
「…さ~あ、今日の業務は何だっけ?スティングランド?」
「ちょっと、バナンさん…?」
「リー坊!俺たちは忙しいんだ‼今日も、これからっ…。」
「巡回くらいしか、最近は特に用事はないですよ?従士長。」
(副長さん知ってるよ!だから来たんだよ‼暇な工兵を借りに‼)
「…そうですか?従士長は、…当分お忙しいのですね?」
(コノヤロー、裏は取れてんだぞ‼父上から仕事しろって言われてるのを!)
「お、おうともよ!従士長だからな‼」
(誰がバナンを従士長に任命したんだ!あ、父上か。緊急時の対処が超一流でなければ…。ぬぬぬ‼)
「わかりました。ミラティナさんに3ヵ月は忙しいとそう伝えてください。副長さん。」
(くくく、夜のお気に入りお姉さんに言いつけてやるぞ♡)
「リース様、わかりました!ミラティナさんですね。」
副長スティングランドさんは愉快そうだ。
「おい!スティングランド‼リー坊!ミラティナの事をなぜ?」
「…。忙しい従士長さんは、どぞ、仕事を始めてください。どぞどぞ。」
「おっ?そう言えばあの件はキャンセルになったんだったな?リー坊!いや、リース様、土地魔法が得意な奴は何人必要で?」
(急にごますりやがったな⁈このおっさん‼)
「多ければ、それだけ早く済みますので、できるだけお願いします。」キリッ‼
◇◇◇
小さい時は、(とは言えまだ6歳だが、)気にしてなかったが、基本風呂は部屋で身体を拭く、週一で、サウナ、週三でシャワー室みたいなところで、湯桶にあるお湯を使って髪を洗っていた。しかし、風呂は浸かることが何事にも代えがたき存在である。よく見たら、なんだこの世界のごつごつした石鹸は?これで髪も洗うのか?母様や、姉さんたちの髪がウェ~ブしてたのは、くせっ毛じゃなく痛んでいたのか?前世の知識をフル活用して石鹸類の改善にも力を入れることが必要だな。
先日もらった小遣いで、裏庭に、土魔法の得意な兵士を呼んでもらった。
領主邸は、なだらかな山の中腹にあり、領都を見渡せる場所にある。ちなみに山頂には、遠方を監視する塔が建っている。
事前に調べて知っていた場所は、ちょっとだけ切り立った崖になっており、ここに露天風呂をつくりたい。そこのすぐそばに直径20cmくらいの穴を開けてもらう。決定事項だ!
20cmにしたのは、子どもが落ちない様にするためだ。安全を考慮する。さすがだ俺!
6人の魔法兵士に交代で開けてもらう。なかなか優秀な人達だ!
探査魔法で確認したら、100mは掘ってもらった。だが、探査魔法でわかっている目標は520m、今日はこれくらいにしてもらおう!
1人づつ、リースの小遣いから日当を渡し、酷く喜ばれ、さっそく夜の飲み屋に消えて行った。あとで聞いたら、1週間分の給金らしい、やりすぎた。次回は3日分だ!
その夜こっそり、自室を抜けて1人で現場に来て土魔法で追加の穴を掘った。
500mまで掘ってもう少しの所で中断した。成功させるのはあくまで他の人だ!俺が目立つのはよくない!後々面倒だからだ!悪いか?
土魔法で土管を作り、穴に打ち込んでいった。地味な作業が大変つらい。
「あれ?この穴にこんな加工をしていたっけ?」
魔法工兵の1人が言った。
「昨日そこに置いていた、管を誰かが、打ち込んだんだろ?」
とそう話ししていた。察しが悪い奴らだぜ!まあその方がいいさ!
「うわっ‼ほんとにお湯が出た‼」
翌日追加で穴を掘ってもらうと、穴からお湯が溢れてきた。皆んな大喜びだった。
あらかじめ、職人に依頼していた様に、穴の近くの岩に仕込んでいた、ライオンに似た彫像の口からお湯を出し、露天風呂を作り、配管を工夫して、館内にも風呂を作った。簡単にまとめたけど、工程は2週間くらい掛かったけどな!
そのまま、作っていた土管を埋設し、郊外の浴場施設を建設し、シンプルな構造の風呂は、公衆浴場とし、いろいろ仕組みが有る風呂は、前世の記憶を生かし、スーパー銭湯として運用することにした。これもふた月くらい掛かったな~。いつのまにかまた、産業が増えていく。スーパー銭湯と公衆浴場を運営し、疫病が流行る可能性をつぶし、領の収入も増えた。父上もウハウハだろう!いつの間にか一年後には近くに宿場町が出来ていた。
俺はとりあえず、ウチに風呂が出来たので、満足だ。
姉達に風呂は大好評だった!
「きゃ~‼温かいお湯のお風呂がなみなみと⁈」
露天風呂は男達に大好評だったが、女性には、
「「「「どこから見られているかわかんない‼」」」」
とのことで、しばらくは男達の縄張りとなった。が、見えない設計だと気付くと、男たちは、すぐに駆逐された‼くっ、かわいそうに!男たちから、血涙の猛抗議が入った。誤解しないでほしい。覗けないような仕様にしたのは、俺の身の安全のためだ。姉たちの仕返しを恐れてのことだ、…わかってほしい。姉妹が入らないのであれば、憂慮はした。結局、露天風呂の取り合いとなったが、そのうち時間で分ける事になった。もちろん男が2で、女が8だ。妥当な判断だ。男たちも命までは惜しんだらしい。
裏庭にローズマリーなどのハーブ類や、色とりどりの花を植え、ついでに養蜂をしてはちみつを作った。料理にも使えるし、自家製シャンプーも作り放題さ。
手作り洗顔石鹸・シャンプー・コンディショナーに涙したお母様達に感謝されたが、何歳若返るんだよ⁈
「素敵…。」「肌が…、つやつやに…。」「髪が光り輝いてる…。」「このさらさら感…。」「これで…イズンも大満足…⁈」
夫婦の怪しい発言に焦ったが、母様たちもスベスベ、父上もウハウハだ!
父上が、四公爵のうち、温泉街がある公爵家と仲が良いので、石鹸類の販売を条件に、近く温泉街のノウハウを聞いてくれるらしい。使い道のない卵の腐った臭いがする砂(硫黄)をもらって来てもらう。
今度、領の南方にあるゴムの木から取れる樹液から、天然ゴムと炭と硫黄で、靴の裏底を作って売る。馬車のタイヤを作るのもいいな。そしたらまた産業が増えて収入も上がる。
父上もウハウハだろう!
あれ?父上が一番少ない労力で利益を得てない?
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