第20話 学習報告
辺境伯セファイティン家の4男坊リースが、家庭教師でトライをはじめて半年後、
「カーセリック、今朝の朝食は、サンドイッチだったか?美味しかったな?」
辺境伯イズン・セファイティンは、今朝の新メニューを思い出しながら、執務をこなしていた。
「そうですね。バルカン料理長が『ぐぬぬっ⁈』と唸って、次回からメニューに入れると、と言っておられました。」
執事のカーセリックは、楽しそうに告げる。
「ははは、バルカンも災難だな?」
「ですが、どこの貴族よりも料理の種類が増えて、バルカン殿は、王宮料理人にも引けをとらなくなってきています。リース様によってですが…。」
「ははは…。」
◇◇◇
イズンの執務室に足取りの重い人達が尋ねてきた。
コンコン。
執事のカーセリックがドアを開ける。
「「「イズン様」」」
「ん?どうした?三人揃って。」
「リース君のことですが、2年分のカリキュラムが終わりました…。」
セーラン・セファイティン魔術師が、告げる。
「何…?どういうことだ?」
「…私から報告します。先日より、なんとな~くお伝えしていましたが、リース君に教えることがなくなりました。ぶっちゃけ、私より凄いです…。」
「いやいやいや、魔術師団所属だよな?セーランは?リースはまだ5歳だぞ?」
「はい、そうです…。」
「お前より凄いって、どう凄いんだ?」
「魔法のコツを習っています…。」
「…誰に?」
「リース君に…。」
「なんでそーなる?」
「ですよね~‼気付いたら、習っているのはこちらだったんですぅ~!私も何を言っているのかわからなくなるのですが、確かにこちらが教えていたんです‼でもね?同じ魔法を撃ったら、リース君の方が、威力が凄いんです!最初、魔力の量かな~?って思っていたんですが、魔法の使い方を聞くと、私の魔法の威力が上がったんです‼」
「あの…、私からも良いですか?」
王都学園の助教授だったパルピスが、セーランの勢いに合わせて発言する。
「パルピス君、…もしかして、君もか?」
「…はい、リース様に算術以外に法律・理術を習っていました…。」
「ど、どういうことだ…。」
「最初は、学術・算術を教えていたのです。ですが、いつの間にか、こちらが習っていたのです。よく思い出してみると、例えば、算術の答え合わせをしていた時、もっと解きやすい方法を提示してくるのです。確かにそちらの方が、少ない労力で確実に導かれる方法だったりするんです。…そんな感じで、少しづつ、すこ~しづつ、リース様の意見を先に聞くようになったら、いつの間にか、習っていたのは私だったんです‼」
「そ、そう!私も!私もそんな感じ‼」
セーランは、前のめりで同意する。
「いや⁈まさか?…ボルデリアは違うよな⁈」
冒険者ランクはAランクの元騎士団所属でもあるボルデリアは躊躇いながら発言する。
「…同じです…。」
「は?…なんで?」
「体力作りの課題を普通にこなしている時『体力作りは、朝しておきますので、課題を先に教えてください!ボルデリア師匠に技を教わる時間が勿体ないので‼』と言われた時は、感動しました。その後、確かに課題は済んでいたのですが、しばらくして気付いたら、リース坊の日頃の自己鍛錬の課題より、私の提示した課題は、…激アマな課題だったんです‼」
「っ…。そ、そうか、それで?」
「剣の模擬戦でいつも胸を貸していたのですが、なぜか、私が強くなったんです‼」
「…?は?まて、意味がよくわからないのだが…?」
「つまりですね。胸を貸す方が強いはずですが、私が強くなったということは、相対する者がもっと強いという事なんです‼」
「いやいや、それはお前の勘違いだ!」
「違うんです!まだあるのです!野外訓練で狩りに出かけた時です。 『対人組手をしたいので、素手で戦って良いですか?』 って聞くじゃありませんか?」
「ああ、それで?」
「私は、領主邸に戻って訓練の話かと思って許可出しましたよ?そしたら…。」
「「「「そしたら…?」」」」
「ゴブリン相手に無手で闘いを挑みに行ったんです‼」
「なに~⁈」「え~?」「まあ!」「さすがです!」
「それで、その時ゴブリンの体格がリース坊と同じくらいって気付いたんです。」
「…ゴクッ、それで?」
「200匹は居るゴブリン村を殲滅しました…。」
「「「「…。」」」」
「その時の体術があまりにも素晴らしく、どのようにしているのかを聞いたら、『ゴブリンの数が多かったので、やりすぎてしまいました!すみませんが、内緒にしといてください!代わりに、姉さんたちの指導の時、師匠の技という名目で護身術のコツをお教えします。』と言われたので、私の代わりに指導時にお嬢方にも教えていって、お嬢達も強くなられました。…そう、とても。」
「あっ、そうそう!こっちもリース君の助言で、他のみんなの魔法が格段とすごくなった!たぶん同年代の子たちなんか相手にならない、中位魔術師よりちょっと強いくらい。私も強くなったし、魔術師団長くらいには強くなったと思う!」
「実は、私もなんです。こちらに来て、知的レベルが数段上がって、算術については、少なくとも、他の国に追いついたと思われます。」
「いやはや、リース様は素晴らしいですね。旦那様。」
カーセリックは無条件で称賛する。
「…リースはそんなにか?ちなみに、キースとカーズは?」
イズンは、リースのあまりにも優秀なことに驚愕する。
「お二人とももちろん優秀です!お二人だけでなく、お嬢様方も。おそらく学園には入る誰よりも…。ただ、きっかけはリース様なのです。」
「…。そうか…。それでリースの今後のことはどうすべきか?という事か?」
「「「はい!」」」
「リースはなんて言っている?」
「『王都の学園に行くまでは、自己鍛錬します!王都に行くまでにやりたいことがありますので‼』と!言われています。」
「なるほどな?そうか、リースは好きにさせてみるか?」
「そうですね。一通り学習して、今必要性を感じていないなら、それでよいと思われます。」カーセリックが同調する。
「とりあえず、君たちは、他の子達の教育を続けてくれ。リースはほっといても良い。」
「「「わかりました!」」」
「リースのやりたいこととは、なんだろうな?」
「そのうちわかりますよ?楽しみですね。」
「ふ~む。わかり次第報告してくれ!」
「承知いたしました。」
◇◇◇
コンコンコン‼
「イズン様、失礼します!」
「どうした⁈」
執務室で繰り広げられた報告会に、従士の副長スティングランドが緊急の報告に来た。
「隣の村で魔獣の大量発生の報告が入りました‼」
「なんだと!急ぎ殲滅に迎え‼」
「は!既に従士長が向かっております。それと…、」
「それと?」
「リース様も、隣村に狩りをしに行ったと報告が…。」
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