第19話 家庭教師
「フィーヴァ、初級魔法のだけどこんなに簡単なの?」
リースは、朝早く領主邸から見えないよう、山一つ向こうの森で、魔法の鍛錬をしていた。
「さあな?我は久しぶりに魔法を習得する者に会ったから、基準はわからん。リースが簡単だったのなら、そうなのだろう?」
「そうなのかな?なんか魔法を発動するときって、カッコイイ詠唱とか、ポーズとかあるんじゃないの?」
「我が眠りに入る前の民は、詠唱はしていなかったな。魔法発動の道具を使う事か、ポーズというか、印は結んでいた気がするが。」
「へ~、印ってどんな事?」
「指で文字を書いたり、手の形に魔法発動の理を記すことだな。」
「それって、無詠唱の時とどういう違いで利用していたの?」
「無詠唱は、発動時に発動する魔法のイメージと相応する性質の魔力を蓄積しないといけない。つまり、頭の中でイメージする時間がないときは、体に覚えさせた動作に、相応する魔力を重ね掛けするだけになるから、行程が一つ省略できるということだ。」
「なるほど、確かに近接戦闘している時に、イメージして魔力の蓄積なんかできない場合があるよな?中距離なら魔法をイメージする時間は稼げるが…。」
「…いずれ、精霊の民に教えを乞うとよい。」
「精霊の民?どこにいるの?」
「リースには、いずれ教えよう。今はまだ早い…。」
「ふ~ん?まあいいか?よし!やってみよう!」
「リース。」
「ととっ!なんだい⁈」
「それより時間だぞ?明日以降にした方がいいんじゃないか?」
「えっ?もうそんな時間?あっ、ほんとだ!わかった、今日は帰ろう!」
リースは、身体強化の魔法を駆使して、約10分で山向こうから帰ってきた。
◇◇◇
「リース様、おはようございます!」
リースは、日課の朝の鍛錬を終え、井戸で体を拭いていた。
「おはようプリーツ!どうしたの?」
いつもは、この場所には来ないメイドのプリーツが用事を告げる。
「はい!イズン様がお呼びです!朝食後に執務室に来るようにとのことでした!」
「父上が?わかった。ありがとう!」
◇◇◇
コンコン、
イズンの執務室のドアが開く。
「お呼びですか?父上。」
「ああ、リースこちらの方々を紹介しよう!お前の家庭教師だ。」
「あ、そういえば…、(高らかに家庭教師をつけてトライしたいと言っていたな俺。忘れてた。)」
「まず知っていると思うが、キース、カーズの武術指導、姉達の護身術指導をしてくれているボルデリアだ。時間をずらして、リース、お前の指導もしてくれる事になった。ボルデリアは、冒険者ランクはAランクだ。元騎士団所属でもある。そして魔術指導のセーラン・セファイティン魔術師、こちらは、姉達の指導をする。セファイティン家の縁戚だ。魔術師団にも所属している。優秀だぞ。わざわざ休職して2年の契約で来てもらった。それから、学術、算術などの指導のパルピス君だ。」
「よろしくリース坊」「よろしくね。リース君」「よろしくお願いいたします。リース様」
「はい‼宜しくお願いいたします!」
「明日から朝は学術、昼は魔術、夕方まで武術となる。必要なカリキュラムは2年分だ、しっかり習うと良い!」
「はい!ありがとうございます!」
◇◇◇
翌朝、王都学園の助教授だったパルピスが、リースに指導する。指導する部屋は、リースの勉強部屋兼執務室だ、新しく黒板が持ち込まれ、パルピスが用意したテキストの本が山のようにあるのと、説明をするためのポスターみたいな表をいくつも丸めて箱に入れてきた。
「では、今日から学術始めます。一緒に頑張りましょうね。」
「はい!宜しくお願い致します。パルピス先生‼(先生は美人だな~!)」
「(ふふふ、リース様はかわいいな。)…まず今日は、算術から!」
「はい!(この世界の算術・数学ってどんなんだろ?俺、ワクワクすっぞ‼)」
「算術の歴史は、この世界に召喚された勇者様からの教えで、専門家では無いにも関わらず、この世界の専門家より、高度な知識を持っていた事が始まりです。ですので、算術は勇者様からの教えが基になっています。ですがご存じの通り、我が国は勇者が出現しません。ですので、勇者が輩出される各国の情報からは数世代遅れている可能性があります。」
「(まぁ確かに、それに俺が居た時代より未来から召喚された勇者なら知識は上をいくだろうね。)分かりました!」
◇◇◇
「…凄い。2週間分の算術を1日で‼(元々知っていたかのような学力だわ…。)」
「(まぁ小学生レベルですが…これ以上早くすると、疑われる。よね。)え?天才ですか?僕って?」
「(ふふ、無邪気に喜んじゃって!)すごいですよ!天才です!じゃあ、明日からもう少しレベルを上げますね?(これなら、もうちょっと量を増やしてもいいかな?)」
「(ほほう?良かろう!掛かって来なさい!)わかりました‼」
◇◇◇
魔術指導のセーランから、初歩から始まる魔法の指導が始まった。場所は、領主邸の近くにある森の手前の草原だ。ところどころにごつごつの岩が出ている。
セーランは、ローブ系の衣装にナイフのような杖を持っていた。
「ではリース君。魔力を感じる所から行くよ!準備は良い?」
「あっ、セーラン姉、それは分かります!
自己鍛錬で、多分初級レベルの魔法は扱えると思うので、僕がどれだけ扱えるか、確認してもらっても良いですか?」
「え?そうなの?凄いじゃない‼…じゃない!セーラン先生と呼びなさい!」
「は~い!セーランせんせ~。(セーラン姉きゃわゆ~い!)」
「も~。分かった!しっかり確認しますからね!(へ~、この歳で習う前に魔法が扱えるなんて、凄いけど、まあ我流だからお姉さんが修正してあげないとね!)」
リースは、おもむろに落ちていた小枝を拾い、構える。
「では、火魔法から行きますよ?
ハイ、火球ファイヤーボール(火のポーズ)
水魔法、
ホイ、水球ウォーターボール(水のポーズ)
風魔法、
エイ、風球ウインドボール(風のポーズ)
土魔法、
それ!土球アースボール(土のポーズ)
雷魔法、
やー!雷球サンダーボール(雷のポーズ)
氷魔法
くらえっ!氷球アイスボール(氷のポーズ)
ふぅ~。(いい仕事した‼)…どうですか?」
リースはタクトを振るように小枝を振った。
「…。」
「あれ?どうかしました?(フィーヴァと学習済みなんだよね。)」
「…詠唱破棄?もしかして全属性?(…何?どういうこと?)」
「(あれ?もしかして、まずかった?)はい?」
「ファイヤーボールと、ウォーターボールはまだ分かる。(ちょっと威力がおかしいけど。)他の属性のボールって何よ⁈どうやって球状にするのよ⁉(変な踊りをするし…。)」
「あ、え〜と、丸い球状をイメージして、属性を構築する感じです…。」
「…。あと、その発動時間の短かさ、タメのない発動でその威力。相当に魔力がないと無理。」
「(やっちまったか?末弟もやしっ子計画が…。)いやいや、大変集中しましたから!皆さんと同じですよ!」
「…魔力測定しましょう!すぐに!」
◇◇◇
「希少な全属性、魔力は、魔術師師団員の平均の三倍…、これは、神童です‼リース君!魔術師団に入りましょう‼イズン様にお知らせしなければ‼(キャー、凄い凄い!神童発見‼国中で、セファイティン家の自慢になるわ‼)」
「ちょっと待って‼僕は、魔術師団には入りませんよ?(めんどくさいから。)」
「え?なぜ?準貴族扱いどころか、爵位ももらえるレベルなのよ?」
「うっ!…そうですか?でも僕は世界を旅したいのです。ですので、心身を鍛えること以外に興味はないのです。(自己防衛ができたら、自由が一番だもんね。この弱肉強食の世界では!)」
「そうなの?だけど、(このレベルは、国王に報告するレベルなの。王様の)気が変わることもあるから、その時は(直接王様に)言ってね‼(とりあえず、イズン様に報告しないとね‼天才がいたって‼)」
「わかりました。その時があるならば(ないと思いますけどね。)、宜しくお願い致します。」
「では、引き続き魔力の鍛錬に入りましょう!(やる気が出てきた‼)」
◇◇◇
「夕方まで、武術鍛錬をする。まずは体力作りだ、この領主邸を5周走れ!」
「はい!(一周だいたい1kmだな。さっきはやっちまったから、普通の5歳児レベルで走るか。)」
「40分くらいかけてゴールか。じゃあ、明日は39分で走れるように頑張れ!」
「はい!(良かった。これぐらいからで、徐々に頑張れば良いよね。)」
「じゃあ、剣の素振りをするぞ。この木剣を持って、100回振れ。」
「はい!(おー、100回で良いのか?危なかった。)」
「姿勢は、いいぞ!」
「よし!次は…。 」
こうして夕暮れまで、地味な訓練は続く。
◇◇◇
半年後、
「「「イズン様」」」
「ん?どうした?三人揃って。」
「リース君のことですが、2年分のカリキュラムが終わりました…。」
「何…? 」




