表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/140

第2話 誕生

時は数年さかのぼる


新しく母となる女は、夢を見ていた…。


暗くくすんだ世界を一瞬で浄め、光り輝く天空から、光の柱が降りてきて、女の身体に生命が…、力が漲る感じがした。


目が覚めると、

お腹の子に、とても優しく、とても強く、そして愛おしく呟いた。


「もうすぐ逢えますね。」


すると、


『待っててください。』

と、ポコポコと動いてるお腹の子から、そんな風に言われた気がして微笑んだ…。


◇◇◇


その日は、前日からの雨が続き、肌寒い春の日だった。


ドタドタと、三名のメイドが廊下を走り、執務室に駆け込む。

「旦那様」 「イズン様、いらっしゃいますか⁉」


「コラッ‼ノックもせずにドアを開けるな⁉」

執事のカーセリックが、書類を持ったまま軽く叱責する。メイドが慌てる理由に心当たりがあるため強くは言えない。


執事の叱責を受け流し、

「おめでとうございます」「ついてますよ、男の子です!」

「レフィーナ奥様も、健康です!」

三人のメイドは矢継ぎ早に領主のイズンに報告する。


「っ…。そうかっ!よくやった!無事生まれたか‼」

東の辺境伯のイズンは、今朝から公務に身が入らず、遅々として進まない書類整理に辟易していたところだった。


すぐに小走りで産婆室に向かうと、廊下の丸椅子に、産婆のメルボーナが真っ白に燃え尽きて座っていた。

「メルボーナ‼でかした!さすが我が領最高の産婆だ!ありがとう」

感激のあまり、ゆさゆさ揺らす!


「だわわっ…!旦那様‼ いっ、いえいえ、どうぞ中にお入り、ご子息を抱いて差し上げてください。」

目を回しながらメルボーナは答えた。

「ああっ‼もちろんだとも‼」



「おっ、おおお~、かわいいなぁ!レフィーナ、お前似だな?」


「フフフ…、あなた、名前は決まっていますか?」


「ああ、リースだ、リーフィス・セファイティン」


「私のリーフィス、いい名前ね…。」


「そうだろう、ずっと前から考えていたからな!」


「あら、あなた。この子?私達をじっと見つめて、何か言いたそう?」


「俺の子だし、賢いからかな?  それより、ちょっと休め、疲れだろう。

明日には、アールティナ(第一婦人)と、 フィンリール(第二婦人)が王都から戻って来る。」

産後にすぐの面会は気を使うだろうと、2人の夫人が配慮した。窓を開けると、いつの間にか、雨がやみ、暖かな日が差していた。


「まあ、わざわざ?ありがとう。

    それと、リースが賢いのは、私の子だからですよー。」

いたずらっぽく笑う母のレフィーナに抱かれ、赤ん坊のリースは頷いている。

…様に見える。


東の辺境伯セファイティン家は、長兄が領地の後継者として申し分なく、家督争いも問題が無いため仲が良い。

外敵に対する抑止力として存在する辺境伯としては、近年は、他国の干渉も少なく、王都の政争にも巻き込まれず、比較的平穏に過ごしていた。また、この平穏時でも軍の練兵には余念がなく、最近は物流と、交易によって領内も潤って来ていた。

それは今代の領主がいかに優秀であるかの証左でもある。


太陽の光がリースを照らし、窓の外は虹が掛かっていた。


「きっとこの子は、何かの使命がある…。

いえ、幸せになってくれればそれでいい。」


後にこの波乱に満ちた世界を 安寧を導く、子供が生まれたのであった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ