第15話 報告
辺境伯の父イズンは、王からの緊急招集により、王都へ来ていた…。
「イズン、今着いたのか?」
同じ辺境伯で、西の守護を任されている、カード・モイガン辺境伯が、王城に就いたばかりのイズンに話しかける。
「ああ、カードか?俺の領地は、お前の領地より、王都から場所が遠いからな?それより、緊急招集の内容は知っているのか?」
「知っている。既に早くに集まった貴族には報告があった。そのまま城にて報告を受けるがいい。俺からより、直接の方が良いだろう。言っておくが、悪い話だ…」
「…やはりそうか」
◇◇◇
コンコン
イズンは、王の執務室を尋ねる。
「イズン・セファイティン辺境伯参上仕りました」
「入れ。」
執務室に入ると国家運営に関わる数人の重要な役職がいた。
「イズン。遠くから済まぬな。重大なことゆえ内容を知らせる訳にはいかなかった」
王が着いたばかりのイズンにねぎらいの言葉を掛ける。
「単刀直入に言おう、マーノルーナ王国の王都が人為的魔獣の大量発生による壊滅の危機にあった」
「なんですと!人為的な魔獣発生⁈…それで王族はいかがされた?」
「うむ、諜報団団長デュオナ」
王は、情報収集を管轄する諜報団団長デュオナに報告させる。
「はい。
イズン様、結果からご報告しますと、王族の皆様は無事です。こちらの資料をお持ちください。では詳細をご報告します。ひと月前に遡ります。マーノルーナ王国は我が国とは友好関係にあり、今現在、隣国のウリットバーン帝国が、近隣小国家群を蹂躙して、マーノルーナ王国にも侵略を始めるのでは?とうわさされて警戒していたところに、内部の王都が魔獣によって、壊滅的な打撃を受けました」
「…それはウリットバーンの仕業なのか?」
イズンは、少し冷静さを取り戻す。
「それについては、現在調査中ですが、公的には、ウリットバーンは否定しております」
「それはそうだろう」
「はい、それで、人為的に起こった魔獣の大量発生の仕組みですが、魔獣を興奮させる薬が用いられた形跡があります。マーノルーナ王国は、この情報を友好国の我々に非開示するか検討されたらしいのですが、不明薬物の検査施設も壊滅にあった為、こちらに試料を送ってこられ、こちらが解析し判明しました。この成分は、魔獣を強い催淫効果があり、また、ひどく空腹感(食欲)を増大させる効果があるようです。詳しくは、魔術師団から報告があります」
と諜報団団長デュオナからの報告に、イズンは腕を組み思考する。
「それで皆様はどのようなご考えに至っておりますか?」
「セファイティン卿。情報分析をした結果は、十中八九ウリットバーン帝国の仕業であるといえる。しかし、それ以外の国、または組織が起こしたとも否定はできない。なので、諜報活動のレベルと、国内国外の森の警備状況の警戒レベルを上げている」
宰相は、淡々と事実を告げる。
「マーノルーナ王国を魔獣によって弱体化させ、侵略の機会を作ったということですね。」
「このような方法を取るとは、事実であれば、許しがたい。同じことをされないように警戒する必要があり、また、打ち破る、発見する技量を身につけねばなりませんな」
「うむ。マーノルーナ王国は、我が国の準同盟国でもある。支援に関しても要請があれば、検討しなければならん。そういった事態が起こる可能性があるので、兵たちのますますの研鑽に磨きを懸けよ!」
「「「は!」」」
「そして、ウリットバーンの奴らは、平民をも蹂躙して、山賊のごとき振る舞いらしい。また、違法奴隷を巧妙に売り捌いたりしている。我が国にそういった輩はおらないと信ずるが、注意喚起を怠るな」
「御意‼」
◇◇◇
執務室に、王、宰相、公爵、軍務卿、諜報団団長、魔術師団団長、辺境伯のイズン、カードが残った。
「今回の魔獣大量発生は、今後どのように防ぐ?」
「今回のような、魔獣発生は、物量的には防ぎようがなく、実際に発生する直前で、族を捕らえる事は不可能に近い」
軍務大臣ビスターが、腕を組んで客観的事実を述べる。
「魔獣誘引剤は、密封された瓶か壺か、樽に収められている。だからそういった荷物を重点的に検閲する必要がある。また、魔石の成分が検出したから、魔石の管理を徹底的に厳格化すると多少影響があるはずだ。またその成分の詳細に突き詰めると製作には少なくとも数年掛かる。理由は、効果的に使用するには大量に使用する、その為、魔石も大量に必要となり、それをまかなう量を流通以外から集めるだけで数年かかる計算だ」
老齢だが目力強い魔術師団団長ビニルエルが、調査の報告をする。
「とりあえず、現状では一つ、関所を設け、検閲を厳しくしよう。二つ、魔石の管理を厳しく取りしまる。三つ、魔獣誘引剤の解除剤もしくは、魔物除けの研究。四つ、大量発生魔獣の戦略的対抗策。五つ、ウリットバーン対策だな」
「また、随時報告が上がるだろう。各々には、現状に甘んずることなく日々研鑽に励み、情報収集には余念がなきよう、よろしく頼む!」
王が集まった皆に言う。
「承知いたしました」




