第14話 男の家族会議
…時は数日前にさかのぼる。
ピカッ!ゴロゴロ…
雷鳴とどろく悪天候な日に、
ある伯爵の男の元に、最恐の尋問部隊が到着し、その男は…かろうじて…
ピカッ!ゴロゴロ…
…奇跡的に一命を取り留めた。
「イズン殿…、 ち、力及ばずに、すまん。 ご武運を…」
ピカッ‼ ガガン! ゴロゴロ…
◇◇◇
…ゴロゴロ
辺境伯領主邸の執務室に、密かに男たちが集まった。
「…父様、どうされましたか?」
次男キースが領主であるイズンに尋ねた。
「母さん達には聞かれたくない話しか?」
長男アークが、やれやれといつものことだろうという感じで語る。
「いったいどうしたんだ?父さん?」
カーズは、いつもと違う雰囲気に戸惑う。
「…どうしたのかな?」
リースは、深刻な話かもと身構える。
「お前達に集まってもらったのは他でもない!」
イズンは、力強く威厳に満ちた表情で、4人の息子達に語り掛ける。
「セファイティン家の裏家訓を伝える時が来たからだ‼
アークが王都の学園に入ったら、家族全員が集まることはなくなっていく。
その前に!…お前達には伝えておこうと思ってな」ゴロゴロ…
だんだん肩を落とし、威厳のオーラが霧散する。
イズンは、一人用の上座のソファーにドカッと座る。
「まぁ、お前たちも気付いていると思うが、我が家は、いや、我が領では俺が一番偉い‼」
ちょっと、のけぞりながら、左手の親指を自分に指し威厳のオーラが盛り返す。
「…はずなんだが、
実際にはアールティナ(第一婦人)、フィンリール(第二婦人)、レフィーナ(第三婦人)の順で強い…。アーク以外のお前達も、もし爵位を得たら正室以外に側室を設ける事もあるだろう…。その時‼妻達や娘達を敵に回してはならない⁉
良いかっ!死にたくなかったら、女性を怒らせてはダメだ!これは俺からの遺言でもある!わかったか‼」
強めの語気から尻すぼみで語り、最後は必死さがにじみ出る。
「 …それは、存じていますが、何かあったんですか?」
キースは不思議そうに聞く。
ゴロゴロ…
ギクッ!イズンの体が硬直する。
「い、いや、たいしたことでは無い」
「汗凄いですよ?」
「なんか、やらかしたんだろ?…」
アークは、腕を組み半目で父を見る。
そんなアークを見て、イズンは毅然と心構えを語る。
「それより、アーク!学園に入ったら、女生徒の付き合いは気を付けろ!安易な付き合いはするな。家柄は気にしなくても良いが、婚姻は身分差が弊害となる事を考慮しろ。まぁ低かったら、側室、妾でも相手側が良いなら問題ない。アークは学園でモテそうだから、大変だと思うが頑張れ!」
コンコン
ドアをノックする音がした。
ビクン⁉
イズンが冷や汗とともに背筋が伸びる。
「父様どうされました?」
キースが尋ねる。
「俺は、いないと言え!」
一瞬で執務室の机に隠れたイズンが、キースにいう。リースは、イズンの動きが神速並みの移動に驚いた。
「いや無理だろ?」
アークが兄弟達と向き合ってつぶやく。
ピカッ‼ ガガン! ゴロゴロ。
「なんか急に雷が鳴りだしたぞ⁈」
カーズが、窓の外の天気が悪くなってきたと言った。
「…いないと言えよ‼」ゴロゴロ
イズンは、小さな声で息子たちに指示をする。
「どうぞ!」
アークが合図を送る。
ピカ‼ ガガン‼ ゴロゴロ!
「イズンは居る?」
ドアが開き、第三婦人のレフィーナが低い声で尋ねる。ドアの外には3人のシルエットが…。
「「「「います‼」」」」
兄弟四人がハモって居場所を指さし報告する。
「お前達⁉」
絶望の表情で息子たちを見るイズンに、アークとキースは告げる。
「いえ、父上の言に従ったまでです」
「我がセファイティン家の女性陣に逆らうな!…と」
「良く分かっているじゃない、アーク、キース」
第一婦人のアールティナが微笑みながら息子を褒める。
ガクブル…ガクブル…、
氷点下の環境下に、裸一貫で投げ出された感覚をイズンは味わう。
「もうお話は済んだみたいね?だ・ん・な・さま?」
ゴゴゴゴゴ、あれ?空耳かな?金属がすれる音がする。
第二婦人のフィンリールが、目が笑ってない嬉しそうな顔をする。
「あ〜な〜た?あちらの部屋に行きましょう?」
ガラガラ、ピッカッ‼雷が落ちる。今のは近かった。
アールティナが、妖艶な笑みをして、扇を持った手でドアの向こうを指し示す。
「イズン?いらっしゃ~い?」
全員が、暗黒のオーラが錯覚して見えた。
レフィーナが、笑顔で手招きをする。もちろん目は笑っていない。
「は、はい」
イズンは振り向き。
「良いかお前達!男には負けると分かっていても、戦わないといけない時がある」
と威厳のオーラを起こしたが、
「父様、領地はアーク兄さんが引き継ぐから大丈夫!」
キースが笑顔で、イズンに告げる。
プシュー、と空気が抜けたようにオーラがなくなり、肩を落として連行された。
「アーク兄様、領地経営大変だね?頑張ってね!」
リースは笑顔で言う。
「大丈夫じゃないか?キース兄さんもいるし?」
カーズは当然の様に伝える。
「ふふふ、父様が出来るようだから大丈夫だろう?」
キースが笑いながら言う。
「まあ、なんかあったら、手伝ってくれ!」
アークは、イズンが連行されていったドアを見ながら、嘆息する。
◇◇◇
「あなた。ちょっと、そこにお座りになって?」
アールティナが絶対零度の微笑みで告げる。
「はい。」
イズンの顔は、真っ青だ。HPが枯渇しかけている。
「違う。床に」
フィンリールが厳しめに告げ、手には鞭を持っているのが似合う。
「へ?」
イズンは、間が抜けた返事を返した。
「正座しよっか?」
レフィーナがわかってないなぁ~というような表情で告げる。もちろん笑っていない。
「いや、当主だからね?俺?」イズン・フォン・セファイティン辺境伯6代目
「人前ではね?」アールティナ第一婦人元伯爵家長女の為、正義感が強くまじめ
「旦那様?今私達4人しか居ないから」フィンリール第二婦人元子爵家次女自由奔放
「じゃ、イズン?王都での事。報告して」レフィーナ第三婦人元子爵家長女元冒険者
「お、王都?」アドルシーク領領主の3人の超が付く美人妻を持つ幸せ者
「「「何?」」」鬼嫁隊
「い、いえ⁉」イズンはビビった。12人の子持ちのパパ
「あなた?娼館での事よ?ニコ」アールティナは冷たく笑う。
「い、いや、あれは違うんだ⁈」イズンは、訂正を試みる。
「ふうん?娼館は行ったんだ?」フィンリールは、こめかみに血管が浮く。
「あ、いや、それは…」イズン、訂正は失敗に終わる。
「行って楽しんできたんでしょ?」レフィーナは、笑ってこぶしの骨を鳴らす。
「俺は、やってない‼」イズン、訂正もとい、潔白の証明を再度試みる。
「俺は?」アールティナ(この世で最凶と、後に夫が書いた日記に記載したのがバレル)
「やってない?」フィンリール(この世で最恐と、領都従士長に話していたのがバレル)
「何を?」レフィーナ(この世で最強と、仲良し西の辺境伯に話していたのがバレル)
「あ、えっと、その…、いかがわしい事…です。」イズンは、パニックに陥った。
「ほー?」アールティナ(最近の悩み:睡眠不足で、お肌のノリが悪い)
「へー?」フィンリール(最近の悩み:食べ過ぎで、ちょっと体重が…)
「ふうん?」レフィーナ(最近の悩み:怖い話をして、八女の夜泣きが…)
「本当です‼領主の名誉に掛けて!」イズンの悲壮な決意を語った!絶体絶命の危機。
「あなたの名誉など、どうでもよいのです。では、説明してくださいます?」アールティナ
「もちろん正確に話してくれるのよね?全部?」フィンリール
「嘘は分かるから。分かっていると思うけど?」レフィーナ
魔法道具うそ発見器ぽっくり君。うそを言うと人形の首がぽっくり落ちる。正座するイズンの頭の上に置かれた。
「し、しかし、ある男の名誉と領主への信頼関係が…」イズンは、部下との鉄の絆を誇りに思っている。
「男の名誉?」アールティナ
「領主への信頼関係?」フィンリール
「へぇ~?妻達との信頼関係は良いんだ?」レフィーナ
「実はですね。ある従士長が、女性経験がないとの事でしたので、少女のようにもじもじと悩みを打ち明けられましたから、キモ鬱陶しさから小遣いを渡し、さっさと娼館に行けと言ったのですが、心細いと付いて来て欲しいとうじうじと懇願されて?…私も少し娼館に興味もあったのもありまして、同行しましたが、店内に入り、皆様のご尊顔が浮かび上がりましたもので、ある従士長を置いて、退出した次第です。はい!
その時、アティのお兄さんに出会った感じです」絆は、もろかったようだ。
「…そう言う事ですか?お義姉様の情報道理ですね。」アールティナ(愛称:アティ)
「なるほど…ね?」フィンリール(愛称:フィン)
「…本当みたい?」レフィーナ(愛称:レフィ)
「それが真実だとして、私達の信頼を裏切る行為と言うのは、ご理解していますか?」アールティナは、実兄のふしだらさにも怒りを覚え、こめかみに血管が浮いていた。
「暗に私達に魅力がないっていう事ですよねー?」フィンリールは、肩をすくめて嘆息する。
「じゃあ、伽をするまで、イズンと一緒に寝ると言う事はどうかな?」レフィーナは、両手を叩き、ひらめいたアイディアに目を輝かせて語る。
領都でイズンと三人の妻は、順番に寝屋を伴にしていた。
「…。そうね。」アールティナは、頬を染め、恥ずかしそうに承諾する。
「良い!イズンも仕事で疲れている時あるもんね!」フィンリールは、嬉しそうに同意する。
「でしょ?でしょ!そうでしょ?」レフィーナは、少女のように賛同する。
「…。あ、あの?」イズンは、展開の速さに会話に乗り遅れた。
「…では、あなた。誤解を招いた責任はどう取りますか?」アールティナは、空気を入れ替えて今回の責任について追及する。
「妻達の評判を下げちゃったからねー?」フィンリールは、アールティナに追随する。
「息子達に、遺言を遺すくらいだからねぇ~?考えがあると思うよ?」レフィーナは、とどめが好きなようだ。
「…。はい、もちろんです。」イズンは、切り替えの速さに降参した。
こうして、家族全員で、プチ旅行に行く事になりました。
イズンの足が限界に達した頃。救いの神が舞い降りた。
コンコン、ドアがノックされる。執事のカーセリックが静かに告げる。
「…旦那様、王都より、緊急招集のご連絡でございます。」




