第10話 蠢動
穢れの詩はこの地に滅びをもたらす。
ここはある国の王都。その東にあるスラム街。
路上に横たわる老人が、同じことをつぶやく。
「我らの先に道はない。ただ滅びの時を待てばよい。
その時詠おう穢れの詩を
…もうすぐじゃ。もうすぐこの世界は…、
我を認めぬ世界は終わる」
突然の突風が吹きあれ、砂ぼこりが舞い、老人の姿が消える。
「くっ、くっ、くっ、 さあ、始まりじゃ…」
◇◇◇
王都へ続く街道に、どこにでもある一頭引きの荷馬車がゆっくり進んでいた。
「大丈夫ですか?こいつが、見つかったら、私たちは破滅ですよ!」
荷馬車の御者台に座る灰色のコートを着た若者が、同じく荷台の後ろに座る、小汚く偽装した中年の男性に向かって小声で話す。
「…大丈夫だ。今は、王都の警備も軽い。たぶん荷物の確認も浅いところしか見ていない。近隣の国の情勢があり、国境付近に軍隊を派遣しているのだろう…。それより、この荷馬車を壊さないように気を付けろ。」
「わかりました。もう少ししたら、指定の場所に到着します。そこについたら、街道から外れて、例の荷物を設置して、急いで来た道に戻れば任務完了ですよね。」
「ああ、そうだ。これは作るのに5年は掛かる、慎重にせねばならん。」
「奴等が、逆の方に移動するって言う事はないんですか?」
「くくく、既に実験済みだ。この魔獣興奮剤は、魔獣の住処に近いところに一つ、向かわせたい方向に二つ、その直線上に少し離して三つ、目的の場所の近く、つまり俺たちだが、残り四つ。魔獣達はもっと先にまだ有る、もっと有ると思って目的の場所に進む。四つ目まで来ると中毒症状になり、冷静な判断は出来ん。
単純な思考、単純な行動、もっとも原始的な血の衝動に本能剥き出しで行動する。
その間の全てのものは蹂躙されるしかない。
この樽は、太陽が真上に来たら発動する。 …急ぐぞ!」
「…はい!」
それから、間もなく
大量の魔獣による暴走で、ある国の王都が壊滅の危機に陥った。




