風呂創造
入学式の次の日……
俺たちは現在魔法の講義を受けていた。
「皆さんはじめまして!私は、ミサっていいます!このクラスの担任になったのでこれからよろしくね!」
と、金髪の優しそうなエルフのお姉さんーーミサは子供に語りかけるように話す
「それじゃあ、みんなは魔法って何種類あるか知ってるかな?」
簡単だ。四種類。属性魔法、特殊魔法、創造魔法、次元魔法だ。
「はいはーい!俺知ってるぜ!7種類だろ!火、水、土、風、光、闇、無の7属性だ。」
「はい。正解です。よくできました。」
あれ?それは属性魔法を細かい分野に分けただけであって全て基礎魔法陣が同じだから1つの魔法として属性魔法と呼ばれているはずなんだが。
そんなことを考えているとさっき答えた黒髪の獣人の少年ーーガルフと目が合う。
「ふんっ!」
なぜか、この少年には嫌われている。
「え!?魔法って4種類じゃないの!?」
と、俺の左隣に座っているユリアが声をあげる。
「ええ。それはユリアさんはたぶん基本属性の火、風、土、水だけだと思ってたのね。」
「いや、そうじゃなくてむぐっ……!」
「ユリア、それ以上言うと話がややこしくなる可能性がある。何か理由がわかるまで話すな。」
ユリアの口を手で塞ぎ、小声でそう言うと彼女は小さく縦に頭を振る。
「それじゃあ、まずは、簡単な魔法からやりましょうか。」
そう言ってミサ先生は黒板に魔法陣を描く。
「魔法の発動の流れは頭の中で黒板に書いてある魔法陣を構築してからお腹にある魔力炉に落とし込むイメージをしましよう。」
その後ミサ先生が「さぁ、やってみて。」と言うと各自各々魔法を使い始める。
「これって魔法陣からして〈火属性魔法・灯火〉よね?」
「ああ、たぶんな。だが、無意味な紋様がなんであんなに書いてあるんだ?魔素の無駄じゃないか。」
なぜ、紋様や基礎魔法陣などを教えないんだ。いや、もしや……
「先生」
「はい。質問ですか?」
「あの魔法陣に書いてある模様は意味があるのですか?」
「魔法陣とは神が与えられたものと言われているのでほとんどの模様の意味はわかっていません。ただたまに遺跡などから発見される古文書などによって意味がわかったものもあります。」
なるほどな。確かに、魔法陣は神から与えられたものというのは色々な文献に書いてある。なんにせよ、ユグドラシルにあったことがあるから神がいないとは言えないし、神から与えられたというのはあながち間違えではないと思う。
しかし、こうなってくるとあの本の作者イグニ・スーリヤはなぜ紋様の意味を網羅した本を書けたのか。いや、もしかすると魔法文明がどこかで衰退したか?
その後、俺はいくつも仮説を立てていくがどれもしっくりくるものがなく授業は終わっていった。
「しかし、ソロモンもユリアもすげーよな!一発で魔法使えるようになるなんて!先生も驚いてたぞ!」
と、ジークは自分のことのように喜んでくれる。
「ははは。まぁな。」
「しかし、魔法ってあんな難しいんだなぁ。」
「なぁ。ユリア難しかったか?」
「そんなわけないわよ。あんなの私たちが読んでる本の方が100倍難しい……いや比べるのもおこがましいわ。」
そんなことを俺とユリアは小声で話す。
「それよりもうそろそろ帰ろう。」
そうして俺たちは家に向かって歩き出したのだった。
「ユリア!?なんでこっち来るの?王城は向こうだよ?」
「そんなのこのままソロモンの家に行くからに決まってるじゃない!」
決まってるんだ……
◇◆◇
そして、家に帰るなりいつものように俺の部屋で各々魔法の勉強をしていた。
「う〜ん。ここの紋様どれにすれば効率が上がると思う?」
「これだろ。」
「んー?あー!確かに!さすがソロモンね。」
たまに互いに分からないところを教えあっていた……いや、俺が一方的に教えていた。
が、そんなことが気にならないほど今の俺は気分が高揚していた。
「ふふふ。」
「ど、どうしたの?」
「聞いて驚け。なんと……ついに〈初級創造魔法〉完全習得しましたぁ!!!」
「ええ!?流石に早すぎるよ!」
「やっとだ。やっとしっかりしたお風呂に入れる。」
「お風呂?お風呂ならあるじゃない。」
「ちがう!あんないちいち水魔法で水だして火魔法でちまちま温度調節するようなもんお風呂とは呼べない!」
「あ、そ、そうなのね。」
ユリアはどうやら俺のお風呂愛に若干ひいているようだ。
「ユリアついてきて!お風呂を今から改造する!」
そう言って俺は歩き出し、ユリアも遅れまいと急いで付いてくる。
「ねぇ!ちゃんとご両親に許可は取ったの?」
「いや。いつも頑張っている両親にサプライズプレゼントだ。」
「へー。本当は覚えた魔法を早く使いたくて仕方ないとかじゃないの?」
「……」
「否定しなさいよ!」
ユリアはこういう時の勘が鋭い。そういえば、某国のお抱え錬金術師も言ってたよな。勘のいいガキは嫌いだよって。
「さぁ、行くぞ。」
そう言って俺は胸の前で両手をパンッ!と合わせた後その両手を地面に付く。
すると青白いスパークを放ちながらどこにでもあるような普通のお風呂場が綺麗な大理石に変わっていく。バスタブは近代の高級ホテルにありそうな円形のものに変わる。
最後の仕上げに〈創造魔法・魔石刻陣〉を使って魔物から取れる魔石を2つ取り出しそれぞれに〈水属性魔法・水生成〉と〈火属性魔法・熱生成の魔法陣を刻む。これら2つの魔石を〈創造魔法・錬成〉によりくっつけて温度調整ようのとってを付けお風呂に水が入るように設置する。しっかり排水管も作ってあり俺のほぼ全力を使って王都外の川まで伸ばした。そのおかげでここら一体の魔素は現在枯渇しているが数分で戻るので心配いらないだろう。
「ちょ、ちょっと!今のどうやってやったの!」
「どうやってって普通に。」
「違うわよ!今の普通にやろうとしたら600層以上の魔法陣が必要よ!こんなの初級魔法の本には載っていないはずでしょ!」
「まぁ、俺が今作ったからな。」
「はぁ……やっぱソロモンといるといると飽きないわね。とゆうか、最初の手を合わせる行動といい青白いスパークといい、あんなの魔素の無駄遣いじゃない。」
「それは、俺の故郷では普通だったんだ。」
日本でいきなりそんなことしたら病院連れてかれそうだよね。
「あなた、故郷って王都育ち王都生まれでしょうが。」
そうだった。やはり日本人の漫画の民としてはやりたくなってしまうものだ。
しかし、かなりいい出来栄えだ。母さんと父さんもきっと喜んでくれるだろ。
あ、ジャクジーも付けておくか。