入学初日
つい先日6歳になった俺は、王立ビフレスト学院初等部に入学することになった。
エルフは6歳になると身体が成人になる20歳までこの学院に通うのが習わしらしい。ちなみに、エルフは20になると成長が止まりそこからはすごくゆっくりと老化していく。
お金がない家庭には国から補助金が出ており、地方の田舎の村からも子供が集まってくる。
アルフヘイムに住む子供が全員集まるので学院は王城より立派になっている。
そんな学院の入学式に行くために俺は現在馬車に乗っている。
「うっぷ。出そう……」
馬車がこんなに揺れるものとは知らなかったため〈脳内図書館・小〉で本でも読もうと思ったのだがそれが悪かった。
すごく吐きそう……
「ソロ、もう少しだから我慢してね。」
と、母が優しい声で励ましてくれる。
それからしばらくして馬車が止まる。
「や、やっと着いた……」
「やっとって家から五分しか経ってないじゃない。」
「うう。そうなんだけど。」
必死に我慢していたから体感時間はすごく長かった。
「じゃあ、母さんはここまでだから学校で友達いっぱい作ってくるのよ。」
「うっぷ。が、頑張るよ。」
油断したら吐きそうだ……
校門まで行くと門番が立っていた。
「そこの坊主!今日から入学か?」
「は、はい。そうです……」
「おいおい、顔色が悪いぞ。大丈夫か?」
「ええ。ちょっと馬車酔いしちゃって。」
「なんじゃそりゃ。入学式中に吐くなよ。」
そう言って門番の人は高らかに笑う。
「お!ソロモンじゃねーか!久しぶりだな!」
門をくぐるとそこには去年のユリアの誕生日パーティであったジークがいた。
「ああ。久しぶり。」
「なんか体調悪そうだな。大丈夫か?」
俺はジークに馬車で酔ったことを伝える。
「お前、馬車で酔うって……ぷっ。馬車乗ったことないのかよ」
そんなことを話してると後ろからすごいスピード何かが走ってくる気配がした。
「ソ〜ロ〜モーーーーーーン!!!!」
「ぐわぁっ!!」
例のごとく王女が後ろから抱きつくように突進してくる。
「ユリア〜。いつもいきなり抱きつくなって言ってるだろ。」
そう言って俺はユリアの両頬を引っ張る。
「いひゃいっ!ごめんなひゃいっ!」
「はぁ……まぁ、言っても聞かなんだろうけど。」
「ははは。モテる男はつらそうだな。」
隣でジークが何かほざいているが無視する。
そうこう話しているうちに入学式の会場に着く。
「うわぁ。人が多いな。」
「そうか?国中から集まってくるからこんなもんだろ。」
「そうよ?毎年すごい数の子供が入学するんだから。」
こうして、校長やよく分からない偉い人の話を聞き、無事に入学式を終え、現在はクラス分けされた各々教室にいた。
「ねぇねぇ。君ってソロモン君だよね?」
と、俺の右隣の席のうさ耳にピンク色の髪をした女の子が話しかけてきた。
「ああ、なんで俺の名前を?」
「僕、去年のユリア王女の誕生日パーティに居たんだよ」
なんと、この娘は僕っ娘だった。
「なるほどな。」
「ソロモン君すごくカッコよかったよね〜。」
「あはは。そうかなぁ。そういえば、君の名前聞いてないな。」
「ああ、そういえばそうだね。僕、ルネっていうのよろしくね。」
そう言ってルネは花が咲いたようなかわいい笑顔を見せた。
そんなルネの笑顔を見ていると後ろから気配がした。
「ソ〜ロ〜モ〜ン〜!」
後ろを振り向くと頰を膨らませていかにも怒っていますよという顔をしたユリアがいた。
「浮気はダメ!」
そう言って俺の腕に抱きついてくる。
「いや、まだユリアとは婚約もしてないでしょ。」
「むぅ。じゃあ、婚約して!」
「考えとくよ。」
「そうやって。いっつもはぐらかして。もう!」
そう言ってさっきよりもっと頰を膨らませる。
「あはは。まさかこんなにユリア王女がソロモン君にぞっこんとはね。」
「ソロモンはあげないからね!」
「ははは。大丈夫だよ。ユリア王女の恋を応援させてもらうよ。それにしてもエルフの国でよかったね。」
「どういうこと?」
「だって人間の国だったら身分が違いすぎるとかで結婚できないとか結構ある話だからさ。エルフの国は身分の差別ってほとんどないでしょ?」
「そうね!そのおかげでソロモンに抱きついても誰にも文句は言われないわ!」
「いや、俺が文句言ってるんですけど。」
「誰にも文句は言われないわ!」
「なぜ二回言った……」
「ふふふ。ソロモン君もなんだかんだユリア王女との関係を楽しんでるんだね。」
「まぁ、ユリアと居ると楽しいのは否定はしない。」
「ソロモン〜」
そう言って頰を赤らめて上目遣いで俺を見てくる。正直、顔が整っているのですごいかわいい。
「ふふふ。2人といると学校が楽しそうだ。2人ともこれからよろしくね。」
「ああ、こちらこそ。」
「ソロモンに色目を使わないんだったら友達になるわ!」
「おい……」
こうして、入学当日はうさ耳美少女の友達をゲットしたのだった。