機械仕掛けと世紀末潜入捜査員 その六 犯行の前触れ
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カーテンは全て締め切っていた。ホテルの一室。シュトラフとユリシスはそれぞれやるべきことを終えて合流し、テーブルに座りながら最後の準備を進めていく。発煙筒、呪術用の触媒。拳銃、呪術を付与したタロットカード。それらを懐や亜空間にしまいこんで、ユリシスはニカリと笑った。
艶やかな褐色肌をシュトラフに摺り寄せて、甘えるように彼の顔を見上げる。反してシュトラフは表情を強張らせた。
「ねぇシュトラフ。予告状にはなんて書いたの?」
甘えるような声色。彼女の言葉にどこか安堵しながら、シュトラフは誇らしげに答えた。数日考え続けた自信作で、一文字たりとも間違えずに記憶していた。
「嗚呼、言ってなかったな。……ごほん。――――予告。我々罪人は今宵の宴にて、光が失せ、魔が破裂せし時に狂気の石を頂きに参上します。……だ。しかし期待外れだったよ」
「あのホテルマンの男?」
「嗚呼、そうさ。彼はわたし達の眼を見ただけで全てを見抜いたというのに……予告状を受け取っておきながら未だに何の対処もない。せっかく華麗に部屋を抜け出せるように準備しておいたというのに……怪盗美学を分かっちゃいない」
シュトラフは部屋の入口に仕掛けたブービートラップを不満そうに片付けていく。バロンとバーサーカーが引っかかったいくつもの罠を仕掛けたのも全て彼だった。
「しかしあの動物はなんだったのだろうか……」
「私と同じ呪術みたいのを使える豚ちゃんの話? ふふふ、でもよく分からない動物を助けるために次元門を開けてあげたんでしょ? シュトラフ優しい大好き!」
ぎゅっとユリシスはシュトラフの背に腕を回してぬいぐるみみたいに抱きしめた。密着する少女を引き剥がすのを諦めたシュトラフは小さく嘆息して少女の純白の髪を撫でる。
「部屋にあった眼鏡のおかげで言語は読めたが彼らがどの世界にいたかもわからん。適当に飛ばしたから助けたとも言えん。まぁ本来の目的は達している。装置もまだ見つかってはいない。あとはショータイムを待つだけさ」
シュトラフは電子端末を取り出して画面を見せる。
『正常に稼働可能』
彼らの世界の言葉でそう書かれていた。




