創立パーティは豪華絢爛ディナーと共に その三 暗躍者達の遭遇
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「ぶひぃっ!!」
「ひゅい!?」
プールサイドで一匹の豚の鳴き声が響いて、ちょうど盗みの計画の進行段階を伝えようとしていたユリシスは小さな悲鳴を零してビクリと全身を跳ねた。
プールサイドの石畳に生えている巨大キノコの椅子から慌てて立ち上がり、琥珀の双眸が周囲に警戒を巡らせる。しかしそのときには既に豚とジウルーンは道を跨いでおり、その姿が見えることはなかった。
周囲の客は少ない。皆、異界の日没を目にしようとツアーに向かっており、ユリシスの近くにいたのは水に浅く浸かっている二足歩行ロボットのような金属生命体と、異界に生息するらしい老廃物を食べてくれるゼリー状の生物が敷き詰められたプールに猫のような顔つきと毛を全身に生やした獣人ぐらいなものだった。
穏やかな時間が過ぎていた。涼しげな水音。椰子の木を抱きしめる真っ赤なカニがジィジィと鳴き声をあげている。ユリシスは肩の力をおろし安堵の溜息をついて今一度キノコに腰を下ろした。
褐色の脚を組んで、念話を行うための呪力を指先に込める。そして別行動中のシュトラフに繋げた。
(るー、るー! 聞こえる―?)
(嗚呼、聞こえるとも。こっちは予告状も仕上がった。これから陽動もかねて派手に送るところさ。そっちはどうだ)
(バッチシ。展覧会に入れなそうな奴も何体か食べに来たけど、目標の個数は消費できた。あと手元に残ってる二つあとは私が詠唱すれば、食べた奴はみーんな、私と……恰好いいシュトラフになるわ。沢山、沢山。ふふ……)
ユリシスは人目も気にせずに微笑んだ。暮れ時の穏やかな風が真っ白な髪を靡かせる。彼女の頭のなかで乾いた男の笑いが響く。
(ははは……そうか。なら時間まで少しの間だが異世界旅行を楽しむといい)
(はーい! ダーリンもがんばってね?)
(ダーリンはよしてくれ。……怪盗っぽさがなくなるだろう?)
シュトラフが照れを隠すように低い声でそう指摘すると念話が切れる。
「ふふ……。んふふー!」
ユリシスは数秒の間を置いて、相棒のリアクションを思い出して生娘みたいに顔を赤らめてニヤニヤと破顔して身悶える。しかし直後、少女の小さな肩ににんやりとした金属が触れた。
「ねぇ、一つ頼みたいことがあるんだけど」
「ひゅぁい!? ……は、はい? どうされましたかお客様」
表情こそ緩んでも警戒はしていた少女は、背後を取られたことに過剰に驚き小動物みたいな声をあげた。慌てて振り返る。
ユリシスに声をかけたのは勇者だった。真紅の長い髪を揺らし、金の瞳がユリシスを睨む。白銀の甲冑は地面を這った所為か泥で汚れていた。




