衛星ブホテルの死闘 1
━━宇宙。
それは無限のコスモエナジーが蔓延する、神秘の世界。
宇宙を股にかける人間なのに、コンドルの中のコンドルであるキャプテン・コンドルが乗った宇宙船がベッ・ドィーン宙域で帝国軍とデッドヒートチェイスを繰り広げ今━━あ、今撃墜された。
船内に響き渡るアラーム、激しく赤ランプが点滅し、目の前が赤一色でずっと見てたらちょっと気分悪くなってきたかも。
おっと、今の爆発でエンジンが全部イカれちまったみたいだ。どうやらこの船を止めるすべは全てなくなってしまったようだな。
だが俺はキャプテン・コンドル。人間なのにコンドル・オブ・コンドルの称号を持つ宇宙で一番モテる男。
そうだ、解決策はきっとまだある。だが俺は考えない、アイデアとは自然と降ってくるものだ。ん?何か物理的に降ってき……おお、これは買ったばかりの今月のエロ本ではないか。ひとまずこれでも読んで良いアイデアが降ってくるのを待つとするか。おっと、この娘めちゃくちゃタイプですやん。後で抜くためにしおりを挟んでおくとしよう。しおりはどこにいったかな……。よしあったぞ。
『オイゴラテメェ!非常事態になにしれっとカッコつけてエロ本読んでるんだ!』
「頭を叩くなOBF。しおりがズレたじゃないか。俺は綺麗に貼る主義だ」
このケツドラムより素早く俺の頭をスパンキングしてるのはパパンが誕生日に買ってくれた俺のバディロボ。名称はOBF。多機能搭載型だが俺はコイツのポケットWi-Fi機能しか使っていない。つーかそれ以外どんな機能があるか知らない。
「あ、そうだムラムラしてきたからお前オナホに変形しろ」
『そんな機能ついてないわ!つーかあと30秒で地面に墜落するぅ!』
「ほーん……じゃあ俺トイレで抜いてくるから、着いたら呼んで」
『何を優先してんだよ!あ、ナニか』
どうやらOBFは自分で答えを見つけたようだ。いや、頭から煙が出てるから回路がショートしたようだ。
だがしかしキャプテン・コンドルはクールにその場を後にした。船が墜落しようが関係ない。そんなことよりオナニーだ。
無事墜落。
キャプテン・コンドルを見捨て命からがら脱出ポッドで生き延びたOBFは、爆発が起こる船の残骸から急いで離れた。OBFは一人考える。これからどうし……。
『……なんで生きてるの』
船から数メートル離れたそこには、吹き飛んできたはずなのに綺麗に残ったトイレで、エロ本片手に真剣な表情でキャプテン・コンドルがオナニーを続行していた。
「あ、着いた?ちょっと待ってろもうちょいでイキそう……」
その時、不穏な影が一人と一体に忍び寄っていた。
「動くな手を上げろ!ってオヌシ何をしとんじゃあ!?」
「初めましてご老人。俺の名はキャプテン・コンドル。キャプテンの中のキャプテン。そして何ではなくオナニーだ」
『なに冷静に答えてんの!?マズイよキャプテン!』
そこには恐らく現地民の初老の男が立って俺のことを銃で狙っているだろう。音からして電気ショックライフル。しかもずいぶんの旧式だ。見ずとも音でわかる。なぜなら俺はキャプテン・コンドル。キャプテンの中のコンドル。そもそもエロ本から目を離すわけにはいかない。そろそろ出そうだからな。
「あーイクイク」
そして気持ち良く発射した瞬間、俺の意識は途絶えた。
テクノブレイクしたわけではない。
普通に銃で撃たれた。
ここは惑星ベッ・ドィーンの衛星ブホテル。
不毛な大地と岩肌が辺りを埋め尽くす、獣人族の星。