寄生虫
「博士、今日はどんな発明ですか?」
「今回の発明は名づけて『寄生虫』だ」
「・・・。名前を聞いただけで、とてつもなく恐ろしい発明の気がします」
「?」
「寄生虫と言えば、きもい、ぶきみ、グロテスク。三拍子そろった生物ですよね。まさか、人間に寄生して羽化したら人類が滅亡する、SFムービーみたいなことにはなりませんよね」
「キミ、何か勘違いしていないか?」
「寄生虫ですよね」
「ああ、その通りだ。私はかねてから、クワガタムシとカブトムシのどちらが強いか疑問に思っていた」
「は?」
「そこで考え出したのがこの『寄生虫』だ」
「私にはコックピット型のゲーム機にしか見えませんが」
「ここにマイクロマシンを搭載したチップが二つある。このチップを世界最強と名高いスマトラオオヒラタクワガタの首元に取りつける。すると、クワガタの中枢神経をコントロールして自在に操れるのだ。そしてもう一方は昆虫界の王者、ヘラクレス大カブトムシに」
「おぉ。カッコイイですね。われわれが虫に寄生するから『寄生虫』なんですね」
「その通り。この虫たちを切り株のリングの上に乗せる。よし、準備はOKだ。男の子たちの長年の疑問を解決するのだ」
「キミ、どっちに乗る。もちろんヘラクレスです!」
「では、私はスマトラだ!」
ギー、ガシャン。
「完全密閉360度全天球型ディスプレーではないですか?カッコイイ」
「わかってくれるか。私はこういう事には手を抜かない。では、因縁の対決を始めるぞ!」
ガシガシ、ガシ。バキバキ。
「どうだ。はさみつぶしてくれるは」
ゴキゴキ、ガギ。ギシギシ。
「負けませんよ。すくい上げてやりますから」
『ハカセ、ドコダ。サッチュウザイ、カッテ、キタゾ。アッ、ニックキ、クロムシ』
「やめろ!バカロボット」
シューーーーーー!
おしまい。