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ダンジョンって未知だよね?  作者: 秋色空
第一章『天才との出会い』
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第一話『Prolog』

新作です。

 この世界の中心には一本の巨大な大木が立つ。この世界に住んでいればいかなる所からも見ることが出来る巨木。一説には神が植えたとされている。だからこそ巨木にはこのような名前が付いているのだろう。その巨木の名は────〈神々の大樹〉。


 この巨木を囲うように出来たのが〈巨大都市アスターテ〉。この都市に住む人々は皆共通の目的を持っている。それが〈冒険者〉。巨木の中にあるダンジョンを制覇(クリア)するために遥々世界の裏側から移住する人もいるほどだ。


 この〈アスターテ〉は木の根元の上に存在している為に高低差が激しい。都市の中央にある大樹を囲うように出来たのが〈ギルド〉だ。


 中央都市〈アスターテ〉は他国からの干渉を受けない不干渉地域とされている。自治はギルドによって行われている。ギルドに所属する事で人々は冒険者となれる。


 そんな冒険者の街で同じく大樹(ダンジョン)に想いを寄せる一人の少年がいた。その少年は、ギルドに所属することが出来る最低年齢に昨日到達したばかりなのだ。その年齢は13歳。ダンジョン内にはモンスターが生息しているために、危険が多い。だからこそこの年齢なのである。


 その少年の名前はフロウ・ミーラス。大樹(ダンジョン)に想いを寄せる新米冒険者。彼の冒険はここから始まる事となる。


 ギルドにおいて冒険者のクラス分けなどは存在しない。力の有無を決めるのは冒険者のレベル。今までに存在する世界最高の値はレベル10。そして最低値がレベル1だ。勿論フロウはレベル1である。


 ダンジョンは現在71層まで制覇(クリア)されている。その71層をクリアしたのが歴史上最も天才とされたレベル10の一人の冒険者。それが3年前の話。その冒険者は異例の15歳でレベル10に到達したそうだ。そしてその冒険者の噂は消えた。誰もその冒険者を見ていないのだ。消息を絶ったのである。


 フロウは貯めたお金で短剣と武具を購入し、ダンジョンへと訪れた。


「ここが〈神々の大樹(ダンジョン)〉……!!」


 意気揚々とギルドの中に入るフロウ。ギルドは冒険者達にダンジョン内での採掘や討伐を始めとした様々な依頼をする場所だ。フロウはその中の一つ──魔物討伐──を選んだ。その依頼書を受付に持っていく。


 受付嬢はフロウから依頼書を受け取ると手を機械に翳すように言った。指示通りに機械に手を翳すと手の甲に紋章が浮かび上がる。この紋章はパーティに属していれば、そのパーティの紋章。属していなければ共通の紋章となる。勿論フロウはパーティに属していない。


 紋章からは冒険者のレベルや魔力、攻撃力、耐久力、敏捷性などが読み取られる。受付嬢はそれを確認するとフロウに告げた。


「その依頼書を受け取る事は出来ません。」


「……どうしてですか?」


 ダンジョンと言えば魔物。そういう固定観念に囚われていたフロウは断られた事に若干の怒りを覚えつつ聞き返した。


「あなたがレベル1だからです。この魔物の討伐推奨レベルを確認しましたか?この魔物の討伐推奨レベルはレベル3ですよ。あなたでは殺される可能性が高いです。」


「そんな────!」


 フロウは最後まで言うことが出来なかった。何故ならとある冒険者が話し掛けてきたからだ。


「小僧。レベルも弁えないで何調子乗ったことをしてるんだ。これは冒険者の掟だ。ギルドは何も小僧を馬鹿にしたい訳じゃない。小僧の身を思ってこそ断ったんだ。頭を冷やして出直してこい。」


「でも────!」


でも(・・)じゃない。冒険者が強い敵と遭遇して『でも死にたくないので助けて下さい』と言ったら助けてくれるとでも思っているのか?冒険者をなめんなよ。甘ったれたんじゃねえ。冒険者は甘い稼業じゃねえんだ。そんな事を言う内はお前には依頼を任せれないな。」


 キツい言葉だった。だが正論だ。フロウは今度こそ言い返す事が出来なかった。出かかる言葉を必死に抑えて、怒りと恥ずかしさが混じったグチャグチャな感情のままギルドを出た。


 街を歩いていると前から来た男とぶつかった。


「……」


「……チッ。当たってきて何も無しか。ガキが。」


 フロウにはそう言った男の声も聞こえていなかった。兎に角自分の感情を抑えるのに必死だった。


 その後どのような経路を辿ってきたのかは覚えていない。気付いた時には薄暗い裏路地にいた。そしてフロウは男達に囲まれていた。


「おいおい冒険者様じゃねえか!冒険者様がこんな所に何か用ですかい?ハハハハッ!!」


 男達は笑った。その通りだ。今の時間は丁度正午。冒険者達は稼ぎの為にダンジョンへと潜っている時間帯だ。薄暗い裏路地に来る用事などないのである。裏路地は盗賊などが蔓延っていた。


「おい、まさか俺ら(盗賊)がいると分かってて来てんのか?まさか勝てるとでも思ってんじゃねえだろうな。裏路地は俺らのホームだ。勝てると思うなよ?」


 フロウは焦った。実力はまだまだなのだ。自覚もしている。盗賊……それも二人の成人男性に勝てる筈が無い。この都市のルール……要するにギルドのルールでは盗賊などは正当防衛のみ殺人が了承されている。正当防衛との判断技術は曖昧だが、攻撃の姿勢を見せた時点で正当防衛成立とされている。


 この状況では正当防衛成立しているが……フロウは短剣を持っている。短剣術などあってないようなものだが。フロウは動けずにいた。


「どうしたー?冒険者様よー!ハハハッ!!!おい、震えてやがるぞ!」


 最後は嘘であるが動けないのは事実だ。ギルドでの事といい、ここでの事といい、フロウは恥ずかしさでいっぱいだった。


「俺、イイこと考えたぜ。おい、冒険者様よ、命乞いしろ。土下座しろ。金を貢げ。お前の持ち物全て渡せ。さっさとしろ!」


 ……死にたくない。まだダンジョンにも入ってないのに。だけどこれからの人生を全て金を貢ぐことに終わるのも嫌だ。だけど命に比べたらプライドなんて捨ててしまってもいい。フロウは土下座しようと膝をついた。盗賊二人は笑っている。


 悔しかった。全ては僕が悪かった。薬草採取などの依頼を受けていれば今はこうなっていなかっただろう。今からでもやり直したかった。


「だけど……もう遅い。」


「まだだよ。」


 空耳だろうか。どこかから声が聞こえた。それも少女の声。煩わしそうなそれでいて興味がありそうな声。その声は優しくフロウへと掛けられていた。


「誰だっ!」


 盗賊の一人が叫んだ。まさかこんな薄暗い裏路地に人がいるとは思ってもみなかったのだろう。実際フロウも知らなかった。ここまで来た記憶が無いフロウが覚えている筈も無いが。


「姿を見せる必要も無いね。そのまま【眠れ】。」


 フロウは驚いた。これはかつてたった一人のみが可能とした技術である〈特殊詠唱〉。通常の魔法発動時の詠唱とは異なり、短く素早く詠唱が可能であるため、高難易度な技術とされた。


 この〈特殊詠唱〉を使った人物はこの〈アスターテ〉で知らない人はいない。歴史上の中で唯一無二のレベル10。ダンジョン最高層の71層を単独制覇(ソロクリア)した天才。その天才が使った技術を使っていた。〈催眠魔法〉だ。盗賊達は抵抗する事も出来ずに寝てしまった。


「よく耐えたね。」


 その声は近付いていた。フロウは辺りを見回した。前後左右。だが誰もいなかった。声はさらに近づく。


「君は強くなれる。私と一緒に冒険しない?」


 フロウは気配に気付いた。上だ。咄嗟に上を見上げるが誰もいなかった。


「正解~。でも0.1秒遅かったね。私はここだよ?」


 フロウの背後にいた。高速移動だ。速すぎる。音一つ無かった。気配も寸前まで無かった。敢えて気配を強めたのだろう。気付かせるために。


「私の名前はリリアーナ・アルデラ。よろしくね、フロウ君。」


 僕はこの都市で〈天才〉と呼ばれる少女であるレベル10の冒険者リリアーナ・アルデラと出会うのであった。

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