忍び寄る非日常①
続きを書いてみました。上手く書けているか不安ですが、よろしくお願いします。
朝ーー何気ない日常を知らせる目覚まし時計が意識を覚醒させる。一階から何かを焼く音が聞こえてくる。きっと母さんが家族のために早起きをして作ってくれているのだろう。
リビングの扉を開けると、食欲をくすぐられる匂いに思わず腹がなってしまう。
「おはよう光、今日は早いじゃない? この前みたいに寝坊しないようにね」
光とは俺ーー槙野光のことだ。まだ寝癖で髪がぐちゃぐちゃの俺に話しかけているのは俺の母ーー佳子である。最近少し顔のシワが目立ってきた。
「母さんの言うとおりだぞ光、学費だって安くは無いんだからな」
髭剃りでジョリジョリ髭を剃っているのは俺の父ーー重明である。天然パーマが特徴のしがないサラリーマンのおっさんだ。俺は密かにこの天然パーマは遺伝しなくてよかったと思っている。
「美乃梨を起こしてきてくれないかしら? 今ちょっと手が離せなくて」
「えー、俺いろいろ準備しなきゃなんだけど⋯⋯ しかもあいつ中々起きねえしなぁ」
「もう起こさないと高校に遅刻しちゃうから、あの子の方が遠いし」
「はいはい」
俺は二階へ上がり、困った我が妹を起こすべく扉を叩く。
「美乃梨ー、学校遅刻すんぞー、また家に電話かかってくるぞー」
いつまでたっても返事が無いので、実力行使をすることにする。俺は扉を開け、すやすやと眠っている妹の布団を引っぺがす。
「う〜ん、お兄ちゃんおはよ〜」
「おはようじゃなくて何時まで寝てるんだよ。 また夜更かししてたのか?」
「いやー、友達とのラインが終わらなくてさ〜」
この黒のセミロングの髪をぼさぼさにしているのは俺の妹ーー美乃梨だ。パジャマ姿によって残念なお胸が強調されてしまっている。美乃梨は高校一年生であり、入学してから遅刻を繰り返している常習犯らしく、授業は専ら睡眠学習をしているようだ。顔は俺に似ずにかなり良い方だと思うのだが、彼氏はいないらしい。
「お前試験とか大丈夫なのか? 授業いつも寝てるらしいじゃないか」
「へいきへいき! 何とかなるって!」
この妹はポジティブなのか考え無しなのか⋯⋯
まあそんなところも羨ましく思ったりもするのだが。
「飯出来てるみたいだから早く降りてこいよ」
「はーい」
俺は朝食をとった後、身支度をして家を出る。いつも寝坊するとき以外は早めに大学に着いているのだ。
最寄駅へはチャリで十分ほどの距離にあり、近くの駐輪場へチャリを止める。この路線は人が多いので電車が着く前にはホームに並んでいなければならないのである。
「間もなく電車が参りますーー黄色い線の内側に下がってお待ちください」
たまに通学時間に人身事故で電車が遅れてしまうことがあるのだが今日は大丈夫らしい。
俺はいつものように大学へ通うために電車に揺られていた。季節は春であり、少し肌寒くもあるのだが、車内の温度は快適に保たれている。
ところで俺ーー槙野光は大学ニ年生であり、首都圏の理系の大学へ進学した。何故理系かと聞かれるならば何となく就職が楽そうだという理由だ。
大学へは自宅の最寄駅から電車で二十分ほどなので、近すぎず遠すぎずの距離に俺はそこそこ満足している。しかし、以前一人暮らしをさせろと抗議しに行ったのだが、あんたは私立で金がかかるからダメ!!と言われてしまった。
最近の趣味は専らネットサーフィンやアニメを見ることだけである。これでも高校時代は武道系の部活を三年間続けていたのだが、いや、顧問が怖くて続けざるを得なかったというのが正解かもしれない。とんでもなくスパルタだったのである。ちなみに、大学でサークル活動や部活動は一切やっていない。これには理由があり、高校三年間の部活動の謎の拘束感が嫌になってしまい、何事にも縛られぬ大学生活を送ろうと考えた訳だ。
しかし、そうなると当然友達など出来なくなってしまっていた。知人と呼べる人は何人かはいるはず⋯⋯ なのだが、友達と呼べる人が全くいないのだ。大学生活は高校時代とは違い、他人と関わろうとしなければそのまま生活できてしまうという恐ろしいところなのである。自分から他人と深く関わろうとしない俺にとっては中々居心地が良い。
俺は今3ちゃんねるという匿名掲示板で速報をチェックしている。普段テレビでニュースを見なかった時はネットニュースなどを見ているのだが、気が向いた時には3ちゃんで勢いがあるスレッドを探す。
【速報】アメリカで猟奇殺人事件が多発!まるでB級ホラー映画!!
珍しいスレだな⋯⋯ ちゃんとソースあんのかこれ?俺はそのスレッドを開く。
1:腐肉の名無しさん
5月4日 19:04
アメリカ〇〇州で住民らが地元警察官ら三人に噛みつき、怪我を負わせるなどして拘束されました。他にも住民同士での争いによる死傷者が出ており、地元当局が対応に追われています。
http...
これヤバくね?
2:腐肉の名無しさん
釣り乙ww
3:腐肉の名無しさん
↑ソース見ろ
4:腐肉の名無しさん
これまんまゾンビじゃん!!
5:腐肉の名無しさん
お前ら騙されすぎだろ、こんなの嘘に決まってる
何でこんなに勢いがあるんだ?ゾンビってあの映画とかに出てくるゾンビのことか?確か人を食べるとか何とか言ってたような気がする⋯⋯
俺はさらにスレをスクロールする。
26:腐肉の名無しさん
これって前にあったマイアムゾンビ事件みたいなやつじゃねえの?薬かなんかでおかしくなったんだろ
27:腐肉の名無しさん
こんな大勢が薬やるとかアメリカSUGEEE!
28:ゾンビハンターさん
俺はもしもの時のために備えるわ、悪いこと言わないからお前らも備えとけよ
俺はそっとスレを閉じる。怖えーよ!! ゾンビなんか現実にいるわけ無いだろ⋯⋯ こんなデマ信じるようじゃ、日本に未来はありませんね。
そうこうしているうちに大学の最寄駅に着いたのでドアの近くに移動する。この駅は大学に通う学生たちが多いので、後ろから押されてしまう。
「キャッ」
声のした方を見ると先に出ていた女子大生が倒れていた。辺りにはその子の荷物であろうものが散らばってしまっていた。おそらく後ろから押されてしまったのだろう。俺はそのまま通り過ぎようとすると⋯⋯
「うおっ!?」
俺も押されてしまい、彼女の筆記用具を蹴飛ばしてしまう。
さすがにこのままスルーは出来んよなぁ⋯⋯ 俺はこの子の荷物を拾う手伝いをしてやる。
「蹴っ飛ばしちゃってすみません、大丈夫ですか?」
そういうと彼女は何故か慌てたように話し始める。
「あ、あの! ありがとうございます!」
彼女は荷物を拾い終えたようで、俺に頭を下げてくる。今どきには無い礼儀正しい子だなぁ。
彼女の見た目は少し大人しそうな風貌で、髪は少し色素が抜けて太陽の光が明るく照らしていた。特徴としては、大きな瞳とすらりと鼻筋の通った鼻で、体格は小柄で線が細い。女の子の膨らみは大きくもなく小さくもなくといったところであろうか。
「じゃあ、俺はこれで」
あんまりジロジロ見るのもアレなので、早々に切り上げることにする。彼女は何か言いたげな様子であったが、俺は特に気にすることは無かった。
今回も読んでくださりありがとうございました。




