私の親友②
こんにちは、薬師実です!
今回は美乃梨たちが警察署に逃げ込んでからの話になります!
私が深い海の底から上昇し、意識が覚醒してはいく頃には署内の玄関にはバリケードが張られていました。何やら警察官の方々が真剣な表情で話しあっています。
「美乃梨!」
私は親友の一言で完全に、意識が戻ります。ふと、横を見れば私の親友が心配そうな顔で覗き込んでいるのです。
「え、なに?」
「なにじゃないよ全く、さっきから何回も呼んでるのに全然返事してくれないしさ」
「あ、ううん、ちょっと気分が悪くなっちゃって」
「大丈夫なの? あんたは少し抜けてるとこがあるから心配だったんだよ⋯⋯? 私、あんたが戻ってこないかもって思って⋯⋯ 」
ふと夏海を見れば、目に涙を浮かべた夏海がぐずっています。私はそんな優しい親友を抱きしめることにしました。愛おしく、壊れてしまわぬように包み込みんで。
「ありがとう夏海⋯⋯、 心配かけさせちゃってごめん。 もう大丈夫だから、ね?」
「うん⋯⋯、 うん⋯⋯」
夏海は私の胸へ顔を埋めながら鼻水をすすっています。彼女は気が強い女の子ですが、友達想いな女の子でもあるのです。
私たちは警察官の方に、どうなっているのかを聞きに行くことにしました。
「あの、これって一体何が⋯⋯ 」
「今外で大規模な暴動が起きているんだ、上からの鎮圧の命令で現場に出ていたんだが、それが署の近くにも発生したとの要請を受けてね、急いで引き返したらこの有様さ」
「あの人たちはなんで人を襲うんですか?」
夏海が核心を突いた質問をしました。彼女のこういうハッキリ言える性格は羨ましく思います。やっぱり夏海はすごいです、夏海はいつだって誇らしいのです。
「分からない⋯⋯、 けれどアメリカで起きていることと同じことが起きているのは確かだ、上からは署内の安全確保と銃の発砲許可、暴動の鎮圧の命が出ているが、最後のはいつになることやら⋯⋯ 」
「あの人たちに噛まれた人は同じようになるんです! この中に噛まれた人はいるんですか!?」
夏海が焦ったように警察官の方へ詰め寄って行きます。どうしたのでしょうか? 彼女らしくありません。
「落ち着きたまえ、我々もアメリカと同じことが起きているとすぐに把握したし、一般人もそれほど署にやってくる人はいなかったさ、おそらくここは騒動が始まった近くのようだからね」
私は二人の会話を聞きながら、バリケードを張られたガラス扉の向こう側を見ました。
そこにはガラスに手をついたゾンビたちが扉を引っ掻いています。それは私たちが出てくるのは今か今かと、こちらにおいでと言っているようにも思えたのです。
「じゃあ私たちはいつまでここに居ればいいんですか!? この騒動はいつになったら⋯⋯ 」
「そ、それは⋯⋯ 」
夏海は責めるように警察官の方へ疑問をぶつけています。警察官の方はとても困った表情をしていました。
夏海は疑問という名の感情をひたすらにぶつけ続けます。
本当にそう思っているの?
本当は分かっているんでしょう? 誰も悪くないってことくらい。世界中の誰よりもあなたのことを知っています。
だって私は、あなたの親友なのですから。
「夏海もうやめようよ、警察官の方が困ってるよ」
「美乃梨⋯⋯、 でも⋯⋯ 」
「今は私たちに出来ることをしようよ、それでいいよね?」
「うん⋯⋯ 」
私は警察官の方へ向き直ります。
「友達がすみませんでした、よかったら私たちに出来ることを教えてくれませんか? こういう時は助け合いが大事だと思うので」
「あ、ああ⋯⋯、 じゃあ昼時になったら、ここにいる方たちへの食事の配膳を頼んでもいいかな?」
「はい、任せてください」
すると警察官の方は、他の警察官の方々と何やら話し合いを始めました。私たちは邪魔にならないように、ホールの椅子で座りながら待つことになりました。
しばらくすると私たちは女性の警察官の方に呼ばれて、食事の配膳をすることになります。
食事を渡した時の、あの人たちの喜びの表情は私にとても元気をくれました。その表情を見ると辛いことや悲しいことにも負けないぞって思うことが出来たのです。私はあの人たちの表情を忘れないでしょう。きっと夏海も同じことを考えたはずです。
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それから何時間経ったのでしょう。私は未だにあの人たちの喜んだ顔を鮮明に思い出すことが出来ます。あの人たちのおかげで、人に感謝を伝えられる喜びを知ることが出来たのです。あの幸せそうな顔は一生忘れることが出来ないと思います。
何故なら私のすぐ目の前で。
あの人たちの恐怖に歪んだ顔が私の瞳に焼き付いているのですから。
すぐ隣には、同じように恐怖に歪んだ夏海の表情が、私の目の奥へ膠着いて離れません。
どうしたの夏海。 いつもの夏海は勝気で、頼りになって、自信に溢れた顔のはずでしょ?
もしかしてゾンビが怖いのでしょうか、そんなことは無いと思いますが。
「美乃梨! 何やってんの!! 早く行かないと奴らが⋯⋯ 」
私は再びあの人たちの顔を見ます。あの人たちはゾンビにお腹を貪られながら、無表情な顔でこちらを見ています。死んだのに目が開いているなんて不思議なことです。
ゾンビたちが私たちの元へ歩いてきますが、別に焦るようなことは無いと思います。だって、ゾンビの動きは鈍いのですから。
夏海はちょっとおかしいです。きっと疲れているから、そんな顔になってしまったのでしょう。疲れた時はお部屋でゆっくりするのが一番です。
「夏海おかしいよ? きっと疲れてるんだね、だから休めば大丈夫」
私は親友の肩に手を置いて、諭すように話しかけます。
夏海はとても驚いた顔で、信じられないようなものを見る顔で私を見てきます。
「おかしいのは美乃梨の方だよ! すぐそこまでゾンビが迫ってきてるんだよ!? ゾンビがバリケードを破って、署内に入って来てるんだよ!?」
私がおかしい? 冗談もほどほどにしてよね夏海。
そんなことよりどうしてそんな顔をするのか私には分からないなぁ。どうしてなの?
夏海はいきなり私の手を引きながら走り出します。
また夏海から手を繋いでくれたね。やっぱり私たち世界一の親友だよね。
すると夏海は、どこかの部屋に入って鍵をかけます。何をそんなに慌てているのでしょう。トイレなら奥にあるよ、夏海。
「いい? 私たちは奴らが出ていくまでここで待つよ、奴らがいなくなったら二人でここを抜け出そう?」
いつもの夏海が帰ってきました。私の親友は私の元へ帰ってきてくれたのです。
やっぱり夏海には私がいないとダメだよね、夏海もそう思うでしょう?
それからどれくらいの時間が経ったのでしょうか、外の騒がしさが無くなっていました。きっとゾンビがここから離れていったのでしょう。
夏海は私の手をずっと握ってくれていました。私より大きくて、少しゴツゴツしている手。私は彼女のそんなところも大好きです。
すると突然夏海が、手を離してしまいました。
「外の様子を見てくるから、美乃梨は私が戻ってくるまでここを動かないでね? すぐに戻ってくるから」
夏海はそう言って扉の外へ出て行ってしまいました。
どうして私から離れちゃうの? もしかして私よりゾンビに会いたいのかな?
まあ夏海ならゾンビに食べられちゃうなんて、あり得ないと思うけど。
それより私たちいつも一緒だったよね。 親友はいつも一緒にいるものだよね。
私から離れていっちゃう夏海なんて夏海じゃない、もう夏海のことなんて許してあげないんだから。
そんな時、私のスマホがピコンと音をたてました。
送信してきたのは私のお兄ちゃん。
私のちょっと変わったお兄ちゃんは、いつだってちょっと変わったお兄ちゃんなのです。
ちょっと変わってるけど、誰よりも家族想いなお兄ちゃん。
だから私は、そんなお兄ちゃんが大好きです。
今回も読んでいただきありがとうございます!
次回からは主人公視点になりますのでよろしくお願いします!(^O^☆♪




