表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/24

生きる屍

こんにちは、薬師実です!

今回は大学を脱出した後の話となります!

主人公たちは無事警察署へたどり着くことが出来るのか、お楽しみください(^O^☆♪

 「そこの道路を右で、もし通れなかったら迂回して左へお願いします」


 「ん、了解」


 俺たちは大学を脱出した後、道守警察署に向かうべく車を走らせていた。伊織はナビゲーターとして望月先輩のサポートをしている。道路には乗り捨てられた車や、原型を留めていない死体が転がっていた。


 街は予想していた通り、酷い有様だ。スーパーに立て籠もっている人たちがゾンビに侵入されて食べられていったのには、目を背けるしかなかった。


 生きている人たちをちらほらと見つけ、その人たちは助けを求めてくるが、俺たちは見ないようにしてきた。


 人の命を背負うというのは途轍もなく重い。ほとんどの人が自分の命さえ守れていないというのに、どうして他の命を守れるだろうか。


 たとえ守れる実力があるとしても、守るべき人たちを履き違えてはならない。本当の危機になった時、俺は守るべき人を選ぶことが出来るだろうか⋯⋯


 いや、選ばなくてはならない。選ばなければ死の順番は俺に回ってくるのだから。大切な時に迷わない奴だけが生き残る。


 まっすぐ、ぶれずに、己の目的を果たすためだけに行動する。それだけの意志が俺にあるだろうか。


 そんな中、中山が頭の後ろに腕を組みながら、ダルそうな声で話し始める。


 「しっかしよぉ、街はゾンビだらけだし、警察も動いてねえし、どうなっちまってんだよ日本は」


 「もしかしたらこの近くにはもう生きている人はほとんどいないのかもしれないね⋯⋯、 インターネットも繋がらなくなってしまったし」


 そう、現代における文明の賜物であったインターネットは、過去の遺物となってしまった。これで本格的に終末(アポカリプス)へ向かっていっているといったところであろうか。


 「ラジオも同じ内容を流してるだけだしね⋯⋯、 もうラジオ局に人はいなくなっちゃったのかなぁ」


 「それは無いと思うよ伊織、多分政府からの新しい情報が入ってきて無いんだと思う」


 「どうしてそう言えんだよ」


 「おそらく総理大臣や官僚、議員たちはゾンビのいないところへ避難していると思うよ、多分そこで今国会が開かれているんだよ」


 ゾンビのいないところは、きっと北海道か四国、九州、沖縄のどれかだ、何故なら自衛隊がすでに橋を封鎖させてゾンビの侵入を防いでいるはず。また、政府はおそらくアメリカのように政府要人を移動させているため、新しい情報が入っていないのだろう。きっと残った議員で国会を開いているに違いない。


 「ん、内閣が生きているなら国が再建される可能性があるかも」


 「そうですかね? 俺の予想だと本島は捨てられると思います」


 「そりゃそうだろ、本島にいる数千万のゾンビを相手に出来る力なんて、日本にはもうねぇだろうし」


 問題は自衛隊がどこまで残っているのかだ、もし少数でも生き残っていれば、俺たちが生き残る可能性は格段に上がっていく。まずはそういった人たちとの合流を視野に入れてもいいかもしれない。


 俺がそんなことを考えていると、近くにガラスがボロボロになったコンビニを見つける。どうやら、ゾンビたちによって蹂躙し尽くされた後のようだ。


 「中山、コンビニに行って食料を調達するぞ、付いてこい」


 「また俺かよ、たまには小野寺も連れてけや」


 「小野寺は運転免許を持ってるから、車にいた方が良いに決まってんだろ、お前は免許無いんだから働け」


 「光くん気をつけるんだよ、絶対に噛まれないでね?」


 俺と中山が出て行こうとしたとき、伊織に注意を促される。


 「一杯食料取ってくるから待ってて」


 「うん!」


 望月先輩はバンを道の端へ止める。俺と中山は音を立てないようにドアを閉め、向かいのコンビニへと向かう。その際に放置された車の陰に隠れることで、ゾンビに発見されにくくなるのだ。


  俺たちがコンビニの前の車に影を隠したところで、中山が小声で話しかけてくる。


 「おい、コンビニの周りを確認するぞ、食料運んでるときに隣から襲われたんじゃひとたまりもねえ」


 俺たちは車の陰に隠れながら、コンビニの外周を周る。俺は壁から顔を出しながらゾンビがいないかを確認しながら進んでいく。


 「待て」


 小声で中山に待てのサインを出す。角の先にはゾンビが二体ほどうろついていた。


 俺はアイコンタクトでやるか逃げるかの合図を送ると、中山はやるの合図を返した。


 俺はバールで地面を軽く叩きゾンビを呼び寄せる。ゾンビについてもう一つ分かったことがある。


 奴らは音が聞こえただけじゃ、速く移動はしないのだ。あくまで人間の姿を確認したときに競歩並みのスピードで追ってくる。だから、陰に身を隠すことでゾンビの奇襲を避けたり、こちらから奇襲をかけることが出来るのだ。


 俺は一体目のゾンビが角から姿を現わすのを、じっと息を潜めて待つ。


 中山が今だの合図をした途端、俺は角から現れたゾンビの手を下へ引き込む。すると、ゾンビは対応出来ず体制を崩していった。


 すかさず中山がバットを振り下ろす。中山の腕力は凄まじいらしく、一発でゾンビの動きを止めた。


 遅れてやってきた二体目のゾンビを倒すために、バールで足の膝小僧を粉砕する。そこで体制を崩したゾンビの何度も叩きつける。ゾンビが動かなくなったところで、俺は気になることを中山へ告げる。


 「やっぱりそうだ⋯⋯、 ゾンビにも反射はある」


 「あ? 反射だぁ?」


 反射は感覚神経によって脳に伝わり、運動神経へ伝達し、筋肉を動かすことを言う。さっきゾンビの手を引っ張った時のことだ。あのゾンビは手を引っ張られたとき、一瞬の抵抗をしたのだ。それは脳が引っ張られたと知覚し、体制を戻そうとした反射の一種だと考えられる。


 「ゾンビに触覚や痛覚は無い⋯⋯、 だけどいくつかの感覚は残っているみたいなんだ」


 「じゃああれか、俺たちがこうして頭かち割ってんのは死体じゃなくて、ちょっとおかしくなった人間って事かよ? 笑えねえ冗談だなそりゃ」


 中山はうすら笑いを浮かべている。


 「やけに軽いじゃないか、もっと人を殺してしまったとか無いのか?」


 「はっ! 襲ってくる奴の命の心配をするほど、頭がおめでたいわけじゃねえ、正当防衛ってやつだ」


 「俺はちょっと複雑だよ、もしかしたら人間に戻るかもしれないって思ってしまったし」


 「少なくとも戻してくれそうな奴が、限りなく少ねえのは分かってんだろ」


 「そりゃそうだけどさ」


 「今は食料を手に入れて、妹のとこに行くのが先だろうが、考えるのは後でも良いんじゃねぇか?」


 「あ、ああ」


 俺たちはコンビニの中を覗き込み、ゾンビがいないことを確認する。


 俺は止まっているバンに合図を送り、コンビニの前へ駐車させる。


 「二人ともありがとう、すぐにでも運びだそう」


 俺たちはコンビニ内で缶詰や乾麺など保存の効くものや下着類、使えそうな小道具を次々と運び出していった。


 十数分も経つと、必要なものは全てバンの中へ運び出すことが出来た。


 俺は最後にスタッフルームの扉を叩き、中には誰もいないかを確認する。扉を開け中を確認するが誰もいないようだ。


俺は中へ入り、部屋の中を物色していると後ろからゾンビが飛びかかってきた!


 「くそっ!」


俺はすかさずバールをゾンビの口の中に入れ噛まれないようにする!


しかし、ゾンビの力は凄まじく、壁際に追い詰められてしまった!後ろを見ればロッカーの扉が開いていたため、噛まれた人が隠れていたらしい。何故気づけ無かったのかと過去の俺を恨む。


 すると、グサリという音が聞こえた途端、ゾンビの力が緩み、地面へ倒れていった。


 前を見ればドライバーでゾンビの頭を刺している望月先輩がいたのだ。


 「望月先輩助かりました⋯⋯、 今回ばっかりは本当にヤバかったです」


 「単独で動いちゃダメ、必ず複数人で動かないと対処出来ない」


 「はい⋯⋯、 気をつけます」


 俺と望月先輩はコンビニの外へ出て駐車場に座り込みながら、コンビニ内にあったコーヒーを飲む。空を見ればあと数時間もすれば夕方になるであろうことが分かる。現在の時刻はおそらく14時ほどだろう。


 「光お疲れ、これあげる」


 すると望月先輩が白いタオルを差し出してくれた。こうして下から見上げると、大きい胸が存在を主張しているようにも見える。


 「タオルですか、ありがとうございます、望月先輩」


 「ん、その望月先輩って言うのはやめてほしい、なんか他人行儀だし」


 「じゃあ何て呼んだらいいんですか?」


 「ん⋯⋯、 名前で読んでほしい」


 「えっと⋯⋯、 じゃあ美遊先輩で」


 「よろしい」


 美遊先輩は隣に座り込む。


 「光は美乃梨ちゃんが心配?」


 「はい、父さんが死んで、母さんと連絡が取れなくなって⋯⋯、 そんな中で美乃梨が生きているって分かりましたからね⋯⋯ 」


 「ん、大丈夫、光の妹ならきっと生きてる」


 美遊先輩は俺の方へ体を寄せてくる。

 

 「光は頑張ってる、いいこいいこ」


 美遊先輩は俺の頭を子どもにするように撫でる。


 「ちょ、ちょっと! やめてくださいよ美遊先輩⋯⋯ 」


 「あ! 二人ともイチャイチャしてる!」


 そこへ伊織がやってきて俺たちを引き離す。


 「ちょっ、何すんだよ伊織」


 「だめー! イチャイチャするのはだめ!」


 「イチャイチャなんかしてないから!」


 こんな非常時にそんな事を考えられる奴は、肝が据わっていると思うぞ。そいつはよっぽど俺より生き残ることが出来そうだ。


 「ん、伊織嫉妬してる、かわいい」


 「か、かわ!?」


 すると、バンの陰から小野寺が顔を出した。


 「三人ともそろそろ出発しよう、あんまり遅くなったんじゃ美乃梨ちゃんがかわいそうだからね」


 小野寺と中山は荷物をあらかた詰め終わったらしい。俺たちはバンに乗り込むことにする。


 俺は死んでしまった父さんのためにも美乃梨だけは絶対救わなければならない。それが父さんや母さんの願いだと思う。


 そして俺は絶対に生き残ってやる。それこそが今まで殺してきた、ゾンビでは無いかもしれない人たちへの、唯一の償いだと思うから。

今回も読んでくださりありがとうございます!これからもよろしくお願いします!!(^O^☆♪

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ