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僕らは度胸、彼らは臆病

こんにちは、薬師実です!

今回の話は大学を脱出するお話です、どうぞご覧になってください!!

 俺たちは少しずつ落ち着きを取り戻し、どうやって大学を脱出するかの作戦会議を行っていた。そのためには情報を整理する必要があるため、ホワイトボードの前に椅子を並べて会議のように話し合っているところである。


 「俺と伊織による第一回ゾンビ実験の結果は成功に至りました。 そこで質問です、ゾンビが一番気になっちゃうものってなーんだ!」


 「はい」


 望月先輩がちょこんと手を上げている。真っ直ぐ上げないあたりあがり症なのが分かってしまう。


 「はい望月先輩!」


 「ん、人間の⋯⋯、 肉」


 「ぶっぶー、残念! 正解は大きな音でーす!」


 俺は初めての仲間が出来たことに浮かれているのか、テンションが上がってしまい口調が少し変わってしまっている。


 「槙野よぉ、お前なんかキャラ違くねぇ? お前はもっとジメジメしたような感じだったろ」


 「そこ、私語は慎むように」


 「ちょっ! お前ほんとにどうしーー」


 「はい、次のクイズです! 俺たちは大学から脱出しなければいけません、キャンパス内はゾンビだらけ、さて、どうやってゾンビの魔の手から逃げればいいんでしょうか!」


 「えーと、ゾンビを全部倒しちゃえば良いんだよ!!」


 上迫さんが元気よく手を挙げる。


 「ぶううぅぅぅ!! 正解は誰か囮になってキャンパス内のゾンビを引き付けてその間に大学のバンを確保して脱出するでしたー!」


 「「はああああああ!?」」


 そう、この状況で大学から脱出する方法はそれしか無いと思う。幸い運動会館は非常口やサークル棟とラウンジ棟の扉だけでは無く、裏と表に外へ通じる扉があるのだ。


 慎重になるところは慎重に、時には大胆に行動することが生き残るための秘訣であると俺は思う。結局動くべき時に動けない奴は、八方塞がりになってしまう確率が高いのだ。


 「ちょっと待ってくれ槙野、誰かって誰が囮になるんだ?」


 「足が速くて、力も強くて、戦闘力の高い奴⋯⋯、 お前しかいないだろ中山」


 「はあ!? 俺一人でキャンパス内のゾンビを引き付けるのかよ!!」


 「俺も囮になるよ、言い出しっぺだし」


そして俺はホワイトボードに作戦を書き出す。作戦の概要としては、俺と中山が、音を出しまくってキャンパス内のゾンビを引きつける。


 その際には、広くて動きやすいサッカー場を使うことにする。サッカー場は運動会館に近いので、途中で奴らに捕まる心配は無い。


 「君たち二人だけで良いのかい? 俺も付いていったほうが⋯⋯」


 「小野寺には、伊織と望月先輩の護衛を頼む、ゾンビを引き寄せるとはいえ、女子二人じゃもしもの時に対応出来ないからな」


 すると、望月先輩が手を挙げる。


 「ん、私に良い考えがある」


 「良い考えがとは?」


 「二人とも丸裸で囮になるのは勧められない、だからあるものを使う」


 「あるものってなんだよ、もっちー」


 「ん、バレーボールとかバスケットボールとか入れる金属製の荷車に、運動会館にあるものを使って装甲する、二人のうち片方はそれに乗って、前のゾンビを倒す」


 これはまた大胆な⋯⋯、 しかしこれならば防御面は確実に対応できる。


 「装甲とはいってもどのようなイメージを持っているんですか?」


 「荷車の先端にはトンガリを付けて、ゾンビに真正面から押されるのを防ぐ、荷車の床にも木の板を敷いて足場を作る、工具や釘ならあるからきっと出来る」


 「よし、それならすぐにでも作業に取り掛かりましょう、大学を上手く脱出出来たら、道守高校へ向かう! 美乃梨から返事が来たら場所を変更するつもりで! 以上!」


 俺の言葉を皮切りにそれぞれが作業に取り掛かり始めた。


 俺は美乃梨にラインを送り、現在どこにいるのかを聞く。


 『今からお前を助けにいく、場所を教えてくれ』


 するとすぐに、美乃梨から返事が来る。


 『道守警察署』


 『分かった、すぐに行くから待ってろ!』


 俺は伊織を呼び止める。


 「伊織! 美乃梨は道守警察署にいるらしい! 大学から道守高校までのルートを色々考えておいてくれ! 途中で通れないところもあると思うから!」


 「任せて光くん!」


 俺は望月先輩を手伝うべく、運動会館へ向かう。


 「槙野くん!? 君たちは一体何をするつもりなんだ!?」


 すると、俺たちが作業していることに気がついたのか、長澤先生が話しかけてくる。


 「俺たちは美乃梨を助けるために大学を脱出します。 先生達も脱出したいなら、俺と中山がゾンビを引き付けている間しか無いと思います」


 「なら僕たちも連れていってくれないか!?」


 「申し訳ありませんが、この人数の車を確保することは俺たちには出来ません、なのでそちらで車を確保してください、俺たちが引き付けている間は、ゾンビは少ないと思うので」


 「あ、ああ、そうさせてもらうよ」


 俺は望月先輩たちが作業しているところへ向かう。


 「今どんな感じですか?」


 「私は用具室にあった木材で荷車の床を固定してる、中山くんと小野寺くんは前につけるトンガリの木材をノコギリで切ってる」


 「了解です、行き先は道守警察署に決まったので把握よろしくお願いします、それと運転免許を持っている人も聞いておいてください」


 「ん⋯⋯、 わかった、ちなみに私は免許持ってるから」


 望月先輩は誇るように胸を張る。すごく大きいですありがとうございます。俺はゾンビを引き付けるアラームなるものを探すため用具室を漁っていると、競技用ホイッスルを見つけたのでそれを拝借することにした。


 俺たちは数十分ほど作業を続けた結果、なんとか装甲車的なものを作り上げる。前面にはトンガリが付いていて、正面からの衝撃に強そうに見える。


 「じゃあ俺と中山は正面の両開き扉から、これを押していくから、三人は大学教務本部でバンの鍵を手に入れて来てくれ! バンを確保出来たら、ラインに連絡を頼む!」


 「わかった! こっちは任せろ槙野!」


 「光くん気を付けてね! 中山くんも!」


 「私の装甲車があるから大丈夫」


 俺と中山は装甲車を押しながら、正面玄関へと向かう。


 「これで死んだらすまない、先に謝っとく」


 「けっ! どうせ何もしなかったら飢え死だぁ、死んだらてめぇを見つけて食ってやんよ」


 「その時はお前の頭をかち割ってやるから安心しろ」

 

 「そりゃありがてえ」


 俺たちは正面玄関に着くと、ガラス張りの扉の鍵を開ける。扉の前に奴らはいないが、奥のメインストリートにはちらほら徘徊しているのが見える。


 「さあ開けようぜ、地獄への扉をよ」

 

 「ああ」

 

 俺たちはガラス張りの天国から、地獄へと足を踏み出した。



ーーーーーー




 「ピィーーーー!! ピィピィピィーーー!!」


 運動会館の裏に回るために、俺は装甲車の上に乗り、中山がそれを押していくことになった。


 「おい! 前からゾンビ来てんぞ!!」


 俺は中山の声に、笛を鳴らすのを中断し、ゾンビの顔にバールをフルスイングしてやる。


 「後ろからもゾンビどもが迫って来てやがんぞくそがあ!」


 中山の声に反応し後ろを振り向くと、五十に近いゾンビが建物から迫ってきていた!


 「押せ押せ! サッカー場までもうすぐだぞ!」


 「人使いが荒いんだっつの、くそったれ!!」


 俺は再び笛を吹きながら、前のゾンビにバールをお見舞いしてやる。すぐに横からもう一体のゾンビが出てくるが、装甲車のトンガリに弾かれて吹き飛ばされる。


 俺たちはサッカー場に着くと、装甲車を後ろのゾンビの群れにぶつけてやる。


 「さあ死のマラソンだぜ、覚悟はいいか?」


 「当然!」


 俺たちはサッカー場の外周を周りながら、ゾンビと一定の距離を取りながら走り続ける。もちろん、笛を鳴らして。


 気がつけばキャンパス内のほとんどのゾンビが俺たちの後を付いてきていた。その数はざっと見ても三百を超えているようにも見える。


 外周を走っていると時折群れから外れたゾンビが俺たちの元へやってくるが、中山が次々とバットでゾンビの頭を粉砕していく。


 外周を三週ほど走った時、スマホから連絡が入る。


 『こっちはバンを確保出来たよ! 今美遊先輩がメインストリートに止めてるから!』


 「おい金髪ヤンキー! バンの確保に成功したみたいだ!」


 「だからヤンキーじゃねえっての! こんなところさっさとズラかろうぜ! じゃねえとゾンビのくせえ臭いが移っちまう」


 俺たちがメインストリートへ向かおうとすると、引き連れていたゾンビが一斉に向きを変えてくる。


 「おい、後ろのゾンビは俺たちの事見えてない筈だよな? 何であいつらまでこっちに来るんだ!?」


 「あん? きっと友達ごっこでもしてんだろうよ!」


 そう言いながら前のゾンビにバットを振り下ろす中山。


 おかしい、外周を走っていた時は笛を鳴らしていたから、後ろのゾンビにも聞こえていた筈だ。だが、俺たちは音なんて出してないし、後ろの奴らには分からない筈なのに⋯⋯


 「そういうことか畜生!」


 「いきなりどうしたんだよ槙野?」


 「あいつら群れになる習性があるんだよ! 後ろの奴らに俺たちのことが分かるはずが無い! でも周りのゾンビの音に反応して付いて行ってんだよ!!」


 「はあ!? そんなん有りかよ!?」


 これが本当だとしたらかなりヤバイ事態だ。ゾンビに群れる習性があるなら時間ともに奴らは群れを増やしていくだろう。きっと人間がほとんどいなくなる頃には、ゾンビの軍団の完成だ!!


 メインストリートに着いた俺たちの前には、中央にバンが停車しているのが見え、さらにバンの付近では、数体のゾンビに小野寺が木刀で応戦しているのが見えた。


 「お前たち無事だったんだな!!」


 「今は喋ってる場合じゃない! すぐに三百のゾンビが向かって来るぞ!」


 「光くん、みんな! 早く乗って!!」


 伊織がバンの扉を開け、俺と中山と小野寺はすぐに乗り込む!


 「望月先輩! 出してください!」


 「ん! 任せて!」


 「うわっ!」


 望月先輩がアクセルを思い切り踏んだのか、俺たちの体は車の後方へ引き寄せられていく。さらにどこに潜んでいたのか、両側の建物からもゾンビが溢れてきていた。


 「槙野! 前の駐車場を見ろ!!」


 前方脇の駐車場には数台の車とそれに群がる数匹のゾンビが町田を囲んでいた。


 「少し止まってください!」


バンは正門近くで停止する。 俺は様子を伺うべく、窓を開けた。


 「おい貴様ら!! 私を置いていくつもりか、この薄情者め!!」


 町田の大声により一層周りのゾンビが向かっていく。すると車に乗っていた長澤先生が木材を持って助けに入った。


 「町田先生!  早く車へ乗ってください!」


 長澤先生がゾンビへ立ち向かおうと近づいた瞬間に、町田が長澤先生へ足をかけようとするも、体格差によって自分が転んでしまう。


 町田は挫いた足を抑えながら長澤先生へ頭を下げる。


 「な、長澤先生! 私が悪かった!! だから私を助けてくれ!」


 その言葉に長澤先生は反応する、しかしその顔はとても冷え切った表情をしていた。


 「申し訳ありません、流石の僕でも自分を殺そうとした人を助けるつもりはありません」


 「なっ!?」


 長澤先生は車へ乗り込み、正門へ向かっていった。


 「呪ってやる!! 貴様らを末代まで呪ってやるからなぁ!!」


 町田の周りにはゾンビが群がり、それが死に際の最後の言葉だった。車内では何とも言えない空気が漂っている。


 「あっけねえな、あいつにはお似合いの死に様だったぜ」


 俺が最後に見たのは三百のゾンビが町田の肉を喰らうべく群がる光景と、運動会館の中から俺たちの様子を見ている学生たちだった。


 彼らはきっと助からないかもしれない、これだけ学内で音を立てて外からゾンビどもが来ないなんてことは無いだろう。


 俺たちは彼らの不安そうな眼差しを背に受けながら、キャンパスを脱出した。

今回も読んでくださりありがとうございます!

ゾンビ映画とかだと性格が悪い人は最後に死にますよね!そんな感じを表現してみました(^O^☆♪これからもよろしくお願いしますm(_ _)m

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