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【流行りの】悪役令嬢......?

悪役令嬢とかおもしろいですが、深雪にはかなり大変そうだということがわかりました......。

ベッドの中で目を覚まして早々に、七恵はパニックに陥っていた。


どうしたどうした、何が起きた。

何か、記憶が抜けてるのか?

自分の部屋で課題片手に力尽きたとこまでしか記憶ないんだけど。


パニックの理由は簡単。ついさきほど自分が目を覚ました場所にまったく見覚えがない。

ベッドに限らず、部屋全体に対して。


ここどこなのよ。

なんか視界がピンクなんだけど。

ここまでピンク一色だとちょっと、ねえ。

というか、誰の部屋よ。そろそろ誰か答えろ。

いや、お前の部屋だろ。

あ、そうだった。私の......、部屋なわけないでしょ!


七恵にしては珍しく、パニックがなかなかおさまらない。

自分の思考に自分でつっこむ、とまあ忙しい状況が頭の中に展開されている。

すっきりしない感情をいつもよりふかふかな枕にぶつけて少しは冷静になれただろうか。


なんだ今のやり取り。

どうしてお前の部屋だろなんてツッコミが湧いてきたのさ。

しかもなに一瞬納得してんのさ。

七恵、こんなどぎついピンクに部屋を染める趣味はないし。

つまり。ここは七恵さんの部屋ではありません!

これだ。結論これでしょ。


なんの結論かもわからない結論とはいえ、七恵をある程度落ち着かせる効果はあったらしい。少なくともまともな脈絡のある思考をするようにはなった。ようやっと。

「真面目に、......ここ、どこ......よ?」

疑問を口にして、おかしなことに気がついた。

見知らぬ部屋のベッドで寝ていたことよりも、ある意味理解できなかった。

「あーーー、いうえおーー」


なにこの声。


寝ている間に自分の位置が変わったなり、部屋が様変わりしたなり、ドッキリか何かだと思えばあり得ないこともないとは思えていたのに。

「これ、ヘリウム? じゃないよねぇ」

実際に吸ったことはないが、こどものような可愛らしい声になるものではなかったはずだ。

「やばいな。

本当に状況の把握ができない」

こどもらしい無邪気(そう)な声がこんな台詞を話しているのを聞くと、何か違和感のようなものを感じる。

自分の口から出てくるのだから、自分の声で間違いはないのだろうが。


「落ち着こう。一旦落ち着きましょうか、七恵さん」

こうして自分に話しかけるのは七恵が混乱しているときの癖だ。 

先程から必死に頭を働かせているのに、一向に役立つ考えが浮かばないというのはどうしたことか。

落ち着くためにまずは、今浮かぶ少し前の記憶から順番にたどることにした。


明日、あれ? もしかしてもう今日か? ちょっと今何時だ。ここはどこなわけなの。

いやいや待て待て待て、とりあえず整理しないと。急ぐときほど落ち着かないとダメなんだから。

えーと、翌日に課題提出が迫ってたから、参考にするページとか画像を探してたでしょ。

で、携帯は動作遅いし、パソコンも家のWi-Fiが調子悪くてネット使えないしで、なかなか良いのが見つかんなくて疲れてきた、と。

それから、眠気でちょこちょこ意識が飛んじゃって。

あーもー眠いーって半ば諦めた感じで横になったんだよね、うん。

それから、......それから?

いやいや、まだ何かあるはず。

横になって、目を閉じて、寝ちゃって。

あれ? ここで終わりなんだけど。


ゆっくりと落ち着いて振り返ってみても、その後のことは思い出せない。

思い出せそうで思い出せない時の、あのひっかかった感じもない。


「あれー、落ち着いたら余計にわかんなくなったんですけど。

誘拐ですか、拉致られたんすか」

混乱がむしろ深まってきたところで状況に変化がおきた。

やたらと広いピンク部屋のドアがノックされた。


これって返事するの?

でも七恵の部屋じゃないのに七恵がどうぞーとか言っていいものなの?


「失礼いたします」


なに、なんか凄いていねいな対応だよ。

誰だ。


ピンク部屋に入ってきたのはメイドさんだった。

メイド服を着た女性をメイドさんと呼ばずになんと呼ぶ。

きっちりとしたおだんごに結った髪からしても、控えめな化粧からしても、なによりスカートの丈からしても、正統派のメイド。


目もくっきり大きくて美人メイドだなー......。

......もしかするとこんな感じなのかな。

ピンク部屋でお嬢様対応してもらえる的なサービス! を提供してくれる従業員の人! みたいな。

だとしてもどうしていいか不明だけど。


「お早いですね。よくない夢でもご覧になりましたか」


怖い夢って言わないんだー......とか言ってる場合じゃなくてだね。


「すいません、あのー」


「はい」


いま、返事をする声がちょっと裏返ってなかったかい。

微笑みは微動だにせず完璧に美しかったけど。

気のせいだったのかな。


「ここって、どこ、です?」


「ここはお嬢様のお部屋でございますが、どうなさいましたか」


ねえ、メイドさんの反応がリアルすぎやしませんか。

メイドさんに隙が無さすぎる気がしてしかたないんだけども。

客にしてはノリが悪すぎるはずなのに、どもるどころか沈黙すらおりないよ。

めっちゃスラスラ喋ってるよ。打ち合わせとかしてるのを疑うレベルで淀みない。


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