第11章:暴かれし荒野 その4
火の山が近づくにつれ、古い街道の痕跡はいつの間にか岩場に続くゆるい登り坂に溶け込み姿を消した。馬を止めた五人と岩山の間には岩だらけの荒れ地が横たわっていたが、山裾をなしているその荒れ地に一筋、岩がなく坂道のように見えなくもない箇所があった。それは火の山の北側から南西に向けて流れ出している川に向かって下っていた。
この川が水源の村を経てはるか南のイルの村へと大きくうねりながら流れつつ、恵みをもたらしていることは五人の知るところだった。だがその同じ川は、黒髪の民の村に舟に乗った災いをも運んだのだ。そして水源の村は壊滅し、すんでのところでイルの村も、いや、エルリア大陸全土すら破滅に呑まれかねないところだった。そしてそれを生み出した何者かは、この火の山のどこかに潜んでいるのだ。敵愾心を剥き出して岩山を睨んでいたアラードは、ふと誰かに見られているような気がして思わず周囲を見回した。するとボルドフが背後から呼びかけた。
「日が暮れる。今夜はここで野営するぞ」
「こんな場所でですか?」
不審に思いつつも若者は岩山から目を離してボルドフのもとへ戻り、仲間たちともども馬を繋いで岩陰に荷物を集めた。地面に向いた視線がおのずと川へと下る坂にとまり、アラードは鳶色の目を見開いた。川に向け下る一群の足跡や鎖の跡を赤毛の戦士は認めたのだ。ではこの坂の上から、あの亡者たちが?
反射的に振り向こうとしたその肩を、だが背後から分厚い手ががっしりと抑えた。
「気取られてはならん。気づかぬふりをしろ」
囁くボルドフの声は緊迫していたが、手を放し自分を追い抜き川辺のグロスのところへ下ってゆくその足取りはさりげないものだった。アラードも極力それに倣い師の後を追った。少し離れた水辺で水を飲む馬たちを繋いだオルトとアルバがこちらを向き、歩み寄ってくるのが見えた。やがてグロスの隣に並んだボルドフが岩山に背を向けたまま、耳打ちするのが聞こえた。
「俺のいう場所を呪文で撃てるか?」
「……なにかおるのか?」
小声で返す白衣の神官に、巨躯の戦士は頷いた。
「ああ、俺の勘が確かなら厄介な相手だ。一撃で倒さねば面倒なことになる」
その会話に身をこわばらせたアラードに、やってきたアルバが囁きかけた。
「岩山になにかおるようだ。気配を感じる」
「ええ、我が師も気づいておられます」
それを耳にしたオルトが目を輝かせた。
「なにかが隠れているというのか? ならば私が追い出してくれる!」
「やめろ!」
ボルドフとアルバが叫んだときはもはや遅く、振り向きざまに少壮の院長が放った幾筋もの炎は長大な尾を引きつつ岩山の各所に着弾した。たちまち起こるいくつもの爆発! だがその中から飛び出してきた二体の魔物は無傷だった。突き出た岩棚の上に跳び乗った黒い魔獣のさらに高みへ舞い上がった妖鳥が、暮れゆく空に虹色の色彩をまき散らした。




