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第11章:暴かれし荒野 その3

 行く手にそびえる岩山の頂から切れ切れの噴煙が、茜色を帯び始めた空に薄墨を流すように立ち上っていた。その岩山をひたと見据え、アラードたちは沈みゆく夕日と競うかのようにひたすら馬を駆っていた。言葉を発する者はなかったが、低い夕日はその険しい顔を照らすことで、彼らの受けた衝撃や憤りを包まず暴き出していた。

 それは、水源の村の惨状を目撃したことによるものだった。



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「こ、これは!」

「なんという……」


 天頂から降り注ぐ陽光の下、村の大半が灰燼に帰した姿に思わず立ち尽くすオルトとアルバをよそに、アルデガン出身の三人は黙々と焼け跡を調べていた。平穏な日々を送ってきた二人とは異なり、彼らは何度も戦火に焼かれた街や村を目にしなくてはならなかったため、そのこと自体に自失するほど衝撃を受けることはもはやなかったのだ。

 とはいえそれは、彼らがなにも感じなかったことを意味するのでは無論なかった。その状況に彼らが読みとったものは、人々を災いから守ることを使命としてきたアルデガンの戦士たる三人にとって憤りを押さえ難いものだったから。


「……どの骨も牙が伸びておる。どうやら村の者は残らず亡者となり果てたようだ」

「そして強力な炎の術でまとめて焼き払われた。その炎の延焼により、この村は焼け落ちたとみて間違いないだろう」


 グロスとボルドフの押し殺した声に、やっと我に返った老アルバが呟く。

「二百年前にここで滅ぼされた金髪の民の骸には、牙を生やしたものはなかったと伝えられていたが……」

「往時の真相はもはやわからんが、少なくともこの状況からいえるのは、恐るべき魔道の徒が忌まわしい術を村人たちに振るい、あげく焼き殺したということだ」


 答えたボルドフの言葉に、ついに耐えきれなくなった赤毛の戦士が叫ぶ。

「そんな血も涙もない悪党がこんなことを! 許せない。なんとしても探し出して倒さねば!」

「ああ、もはやこれ以上放置はできぬ。今こそこの地を毒する禍根を断たねば。そうだろう?」

 白衣の神官の熱っぽいまなざしに仲間たちも頷き、短い休息の後いまだ薄い煙さえ立ち上る焼け跡を後にした彼らは、天蓋から下りゆく太陽と競いつつひたすら北上してきたのだった。村人を亡者となさしめた者と彼らを焼き払った者が別であることを知るすべもなく、ましてそれらが誰によりどんな思いでなされたか、想像すらできぬまま。



--------------------



 地平線に迫りゆく巨大な夕日が赤銅色に染める岩山を睨んだまま、先頭をゆくアラードは最後の追い込みとばかり鞭を当てた。後ろを走るオルトの瞳が浮かされたような光にゆらぐことなど、気づけるはずもないままに。


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