表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔術世界の非魔術師  作者: まこと
プロローグ
2/36

プロローグ2

 王都ルーファリスの貴族街、その中でも特に大きい屋敷の一室に僕はいた。指先から力を出すようなイメージをして集中する。1分、2分と時間が過ぎるけれど何も起こらない。ほどなく僕は力を抜いてため息をついた。


「ふぅ、まただめかぁ………」


日課の魔術練習を行ってみたけれどやはり失敗だ。魔力は他の人よりもあるのに一向に使えるようにならない。


「一体何が駄目なんだろう?」


いや、何が駄目かはもう分かっている。魔素(マナ)を放出することができないからだ。


 僕、アインスレイ・クロス・グランドールは6歳になるまでは両親に5歳年上のマリアンヌ姉さん、それに屋敷に仕えている人全員から沢山の愛情を受けた。だけど6歳から魔術を使う訓練が始まり段々と周りの態度が変わっていった。

 僕がどれだけ練習しても一切魔術が使えなかったからだ。魔術を使えるようになる年齢にはずれがあるけど、簡単なものなら大体6~8歳の間には使えるようになるらしい。今僕は10歳だ。なのに魔術が一切使えない。そのせいで周囲のほとんどの人は僕が魔術を使えるようになることをあきらめ、高い魔力を持つのに魔術を使えない僕を蔑んでいる。僕と変わらずに接してくれるのは僕の付き人であるライルに3歳年下の妹ルナフィリア、そしてその付き人のカーラさんぐらいだ。


 自分が魔術を使えないことを再確認し、はぁ…と再びため息をつくと、コンコンと扉がノックされた。はい、と返事をするとルナフィリアとカーラさんが部屋に入ってきた。


「兄さん、お疲れ様です。一緒におやつをしましょう」


長い黒髪をたなびかせて入ってきた妹はにっこりと笑いながらそう言った。


「そうだね、ちょうど休憩しようと思ってたんだ」


そう言って僕も微笑む。

すでにカーラさんがテーブルの上に持ってきたクッキー入りのバスケットを置き、紅茶を淹れ始めている。僕たちはイスに座ると談笑を始めた。


 僕の妹、ルナフィリアは黒髪だ。髪が暗い色の場合明るい色の人とは対照的に、魔力が少ない場合が多い。実際にルナフィリアの魔力はかなり少ないし、そのせいで僕以外の家族から蔑まれている。だけどルナフィリアは4属性も使えるし、そんなに嫌わなくてもいいんじゃないかと僕は思う。そもそも魔術至上主義なんて必要ないんじゃないか等と考えていると最愛の妹から話しかけられた。


「そういえば兄さんは明日から出掛けるんでしたっけ?」


「うん、そうだよルナ。 ライルと一緒に魔素集中点(マナスポット)に行くことになってる。周囲に魔素が溢れてる分魔術が使いやすいらしいからね。予定だと往復で3日間だったかな?」


「けど濃い魔素は体に毒なんでしょう? ……大丈夫なんですか?」


「僕は魔力が高いからある程度耐えられるし大丈夫だよきっと。 それに一度魔術を使う感覚を覚えればずっと使えるようになるかもしれないし」


そう、魔素集中点に行けば僕は魔術が使えるようになるかもしれない。生き物は呼吸等で魔素を取り込んだり出したりする。そして許容量を超えそうなほど魔素を取り込むと体が勝手に放出しようとする。だからこそ魔素集中点では魔術が使いやすいし、その放出する感覚さえつかめれば普段も魔術を使えるようになる。それならなんで今まで行かなかったかというと危険だからだ。魔素集中点では魔素の放出が間に合わず、魔素許容量を超えてしまうことがある。そうなると死んでしまうし、最悪魔物になることだってある。


 それを知っている妹は不安そうな顔をしているが、僕が大丈夫だよと微笑みながら頭をなでると少し安心したようだった。



*****



「……………」


魔素集中点からの帰り道、馬車の中で僕は無言だった。御者をしているライルも同じだ。


 結局魔素集中点の力を借りても僕は魔術が使えなかった。そう、使えなかったんだ。これは一生魔術が使えないと宣告されたのと同義だ。そのせいでひどく落ち込んでいた僕は気づかなかった。この馬車の進路が王都への道から外れていることに……


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ