街の中での豹変。 3ページ
保灯駅北口から、少し北側に歩いて行くと、やや小さめのボウリング場がある。全国展開していて知名度のあるお店だが、どうしてか、駐車場には空きがある。俺達のように徒歩で来ている人が多いのか、それともあまり人気がないのか……。
お店の屋根に乗っている巨体なボウリングのピンを眺めながら、俺はそんな事を考えた。ついでに、あの巨体ピンでボウリングをした時、ボールの大きさはどれくらいになるのだろう? とも考えた。
「ボウリング場って言うからもっと大きな建物を予想してたんだけど、思ったよりも小さいね」
白波が、建物全体を見上げるようにして呟いた。いやいや、三階建てで市民体育館ぐらいある建物を見て小さいってどうよ?大分大きい方だとおもうよ?
「とにかく中に入ろうぜ」
健、お前は元気だな。周りの人がついつい注目してるぞ。そう思いつつも、俺達はボウリング場の入り口に向かって歩く。
ふと、後ろから小さな声が聞こえる。確か、今俺の後ろに居るのは橘さんのはずだ。何を言っているのだろうかと振り返ると、
「よしっ、目指せパーフェクト!」
と、ガッツポーズで本日の意気込みを述べる橘さんがいた。
いや、パーフェクトって普通はとれないから……。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ボウリング場となっているのは、主に二階のスペースである。一階はゲームセンターやコンビニになっていてた。
そんな訳で二階、ボウリング場。受付でワンゲーム注文し、シューズを借りて、指定されたレーンに荷物を置いて、俺達は一旦落ち着いた。
名前を登録し、暫くするとスコア表が画面に現れる。最初に投げるのは、どうやら健の様である。
「健、あんまり倒すなよ」
「なんで倒しちゃ駄目なんだよ。見てろよ。完璧なストライクをみせてやるから」
そう言って、健はボールをもって上がり、第一投を投げる。
ボールはゴロゴロと転がっていき、豪快にピンを倒して見事ストライク!
……をしたのは隣のレーンで、実際に健が投げたボールはやや右側に逸れ、ピンを倒していった。
その数、七本。
「ストライク取れなかったな」
「るっせ」
からかってやると、短く言葉が帰ってくる。俺は一階のコンビニで買っておいたグミを開けて、白羽達に渡した。白羽はありがとうと言って受け取ったが、橘さんはモニターだったり他のレーンだったり、色んな所を忙しそうに見ている。
珍しいと思っているのかな。健が投げた第二投を目で追いながら、ぼんやりと考える。
「優香、食べないの?」
「え?……あっこれの事?」
「うん。朝道がくれた」
「じゃあ、一つ貰おうかな……わ、なんか凄い形してる」
「あ、わかるそれ。凄いヘンな形してるよね」
ぼんやりとしながらでも、二人の会話は耳に届く。
そんなに変な形をしてるのか?そのグミ。
スペアを逃し、初回を八本で終えた健を見ながらそんな事を思う。
「よし!次は私か」
グミを一気に頬張って、白羽が立ち上がった。この人ノリノリのようである。
「愛香、自信満々だなぁ」
オレンジ色のボールを手に持ち、アプローチへと登る白羽を見ながら、橘さんが呟いた。確かに、堂々とした後姿は、自身に満ち溢れている様に見える。
「っらぁっ!」
おー勇ましいかけ声だ。
そんな感じで勢いよく放たれたボールは、やや左に曲がり、大きな音を立てながら先頭の一番ピン以外すべてを蹴散らしていった。
「あーっしいなぁ」
スイープバーによって片付けられていくピンを見ながら、大きく落胆した声を上げた。でもその言葉には、「お」が抜けている気がする。
「白羽ってさ」
「何?愛香がどうかした?」
「噂とかだと、小鳥が肩にとまる程穏やかな人とか言われてるんだが……」
「……本当に?」
橘さんが心底驚いた様な顔をしてきいて来た。俺だって、今の勇ましいかけ声と今の豪快なフォームを見ると、噂を信じる信じないではなく、うわさを流した奴は何を見て穏やかな人だと思っただろうか。という事が気になってくる。
そう考える俺の目の前で、白羽は二投目でしっかりとスペアを取った。




