街の中での豹変。2ページ
んで、その明日。いや今日か。いや……とにかく約束の日曜日の事である。
集合時間の十五分前に待ち合わせ場所に着く様に家を出た俺は、欠伸を噛み殺しながら、金島公園の北口を目指していた。
今回の目的であるボウリング場は、バスで向かう事になった為、四人の集合場所はこの金島公園になったのだ。
集合時間の十五分前に着く様に移動しているのは、一般的なマナーである。橘さんや白羽がどんなに真面目で律儀な人だとしても、流石に遊びに行くだけの集まりに、三十分前に集合場所にいるなんて事は無いだろう。
「あ、朝道君おはよう」
「おはよう朝道、随分と早いね」
いや、居たよ。二人揃って公園の北口に居ましたよ。
二人とも無難なジーンズで、舐めちゃいけない日差し対策からかおしゃれな帽子を被って仲良く居たよ。
「お、おはよう二人とも。まだ約束の時間じゃないけれど、何時ごろから居たんだ?」
片手をあげてぎこちない笑みを浮かべながら、俺は二人に近づいた。もう一人約束をしている健はまだ来ていない様で、待ち合わせ場所にいたのは二人だけだった。
「何時頃って言われても、私達は今さっき来たばかりだよ」
白羽は少し戸惑ったような顔で言った。その『今さっき』は、はたして何分前のことを指すのだろう。五分前か。十分前か、三十分前か。それはやっぱり気になるのだが、俺は「そうか」と呟いて、二人の横に並んだ、あとは、健が来るのを待つだけだ。
しかし、健が来るまで、もう少し時間が掛かりそうだ。それまで、ずっと無言というのは少し気まずい。
取り敢えず、軽い話題でも振ろうか。なんとなく、あたりを見渡す。
しかし、軽い話題ってなんだ?趣味でも聞くか?いまさら?誕生日……ちょっと馴れ馴れしいか?じゃあ、どうする?
話題を振るって、結構難しい気がするぞ。いや、でも、健や藤田とはいつも普通に話してるそ?あー、じゃあなんで今日は話を振れ無い!
「あ、朝道君てさ……!」
そんな感じに俺が悶々としていると、隣から橘さんの声がした。顔を上げて、橘さんの方を向く。
「朝道君って、そういった服を、よく着るの?」
「えっ?」
橘さんに言われて、俺は自分の服に目を落とす。俺が今している格好は、無難に無難な二本のラインが走ったTシャツに、シンプルなジーンズである。
意外と思われているのか、ダサいと思われているのか。取り敢えず俺は、学校外で会うのは初めてなので、少し気になった程度だろうと思う事にした。ダサいと思われていても、今更服は変えられない。
「ああ、まぁな。橘さんも、普段はそんな感じなのか?」
だがせっかく出来た話題でもあるので、俺は繋げる。橘さんの服装はさっきも言ったとおりに、動き易いズボンタイプの服だ。
さっきはジーンズと一口に言ったが、彼女が履いているのは脚のラインがよく見えるスキニーデニムだ。その上には、英字がプリントされたTシャツを着ていて、明るい色の半袖パーカーを羽織っている。
「うーん、今日は運動するって感じだから、いつもとは少しだけ違うかな。……変じゃない?」
「変じゃないよ。まぁ、素人のボウリングが運動に入るかどうかは、分かんないけど」
そう言うと、橘さんはパーカーの裾を掴み、「じゃあいつもの格好でもよかったのかな?」なんて呟いていた。その奥で白羽が、口元に手をやりクスクスと笑っている。
いつもはしてないヘアピンを付けている彼女は、静かな笑い方をするんだな。
「白羽、どうしたんだよさっきから笑って」
ただ、さっきの会話、あるいは行動のどこに笑どころがあったのか。
「ああ、ゴメンなさい。別にバカにしてる訳でも、滑稽に見えた訳でも無いの。なんか二人って面白いなぁって思っただけ」
そんなことは無いって言ってるのかな……笑顔の白羽は、右手をヒラヒラと振って答えた。
「……おかしいと思うって、バカにしてるんじゃないのか?」
「あ、愛香ぁ。人見て笑っちゃ駄目だよ」
俺は呆れた口調で言い、橘さんが軽い口調で言った。
「はいはい。で、二人共、さっきから二人の前に犬飼君がいるんだけど……気付いてる?」
「「えっ?」」
白羽に言われて、顔を横に向ける。
「おい、わざと無視してた訳じゃねぇのかよ!」
そこには、不機嫌な顔した健がいた。
「わ、悪いな健。全く気付かなかった」
苦笑いを零しながら、俺は健に謝った。健は白い目で俺を見ていたが、しばらくすると、気を取り直した様に宣言した。
「色々と引っかかるが……まぁいい。それじゃこれから、遊びに行きますか!」




