彼女の豹変への対策。9ページ
二重人格。
まるで一つの躰に二人の心が入っている様に、突然その人の人格が変わること。本当は、ショックな出来事の記憶を思い出さない様に隔離する、脳の働きが行きすぎたもの。
隔離した記憶や感情が勝手に成長し、今までと全く別の思考パターンを持って、今までの人格と入れ替わる様になる。
これが、二重人格、または、隔離性同一性障害。
これは、今さっき携帯で調べたものを、俺なりにまとめた物である。
ここに、ショックな出来事を無理矢理忘れようとする頭の働きが行きすぎたものと書かれていたが、一体どこまで行ったら身体が変わるまでになるのだろうか?
はっきり言うと、俺は調べた事を後悔していた。
二重人格と調べて見て、橘さんの事が分かった訳じゃない。それに、二重人格に対して書かれていた事は膨大で、俺の普段使っていない脳みそでは、対処する事が出来なかったのである。
しょうがない。と観念して、俺は携帯をしまった。授業はいま、教壇に立っている先生がのんびりとした声で、教科書を読み上げている最中だった。
ふと、窓の外を見やる。もう葉桜と言った方が良いくらいに花を散らした桜が目に留まる。
桜が植わっている中庭には誰もいない。……あ、違った。先生が居た。呑気にタバコ吸っていやがる。禿げた頭で堂々と、年なんだからもうちっと健康に気をつかえよ。
その時、授業終了のベルが鳴る。俺は視線を教室に戻す。教室は、先生が去ったことでガヤガヤと騒がしくなっており、落ち着きがない。次の六時間目は国語なので、俺は続けて起きている気になれず、先生が来る前に机に突っ伏した。
次の日の事である。
登校する時、校門の所で、俺はふと空を見上げた。空は青く晴れ渡っている。屋上にはブルーシートが掲げられ、貯水槽を隠している。
橘さんは、一体いつから、『暴走状態』なるものがあるのだろう。働かない頭でそんな事を思いつつ、俺は下駄箱で上履きに履き替える
「木陰、腕の調子はどう?」
不意に誰かに呼び止められた。誰だと思って振り返ると、藤田がそこに立っていた。
「よう。腕は……そうだな。軽くぶつけても大丈夫って感じだ。強く打ったら痛いけどな」
「そうか。早く取れるといいな」
「そらそうだ」
そんな事を藤田と話しながら、俺は教室に向かった。




