彼女の豹変への対策。2ページ
白羽に連れられて、屋上に出る。保灯北高校の屋上は、本来立ち入り禁止の筈だ。どうして屋上に出る事が出来たのか、白羽に尋ねると
「優等生の特権」
と、合鍵を見せて来た。
優等生の特権と言う事で合鍵が貰える。優等生の基準が分からないが、少し勉強しようかな?なんて思ってしまった。
しかし、それよりも、と、俺は白羽に向かって、
「で、屋上に俺を連れて来た理由は?」
と訊いた。だが白羽は、俺の言葉を無視して、黙って屋上に広げられたシート|(初めからあるのか、持って来ていたのかはわからない)にこしを下ろした。
「……ね、ねぇ。とりあえず、シートに、座らな……りませんか?」
おずおずと、橘さんが、俺に話しかけて来た。俺が視線をよこすと、橘さんは急に俯いてしまう。
突然屋上に連れてこられて、自分の質問を無視して、視線を向けただけで俯かれてしまった。その事に少しイライラしながら、俺はシートに座り込む。俺が座った事を確認すると、橘さんもシートの上にあがり、持っていた荷物をゴソゴソと弄る。俺は苛立った気分を鎮めようとしながら、その動作を見ていた。
「朝道君、左腕折れてるでしょ?お昼、どうするつもりだったの?」
橘さんを見ていると、白羽が話しかけて来た。シートの上に座って居るのに、姿勢が体育座りなのが気になるが、そこは流す事にした。
「どうするって、パンを食べるつもりだよ。そりゃ袋は片手じゃ開けにくいだろうが、何とかなるだろ」
まだギプスがついている左腕を見ながら、俺は言った。
「そう。実はさ、直ぐに話したかったし、君の分のお弁当……作ってあるんだけど……」
苦笑いの様な、微笑みの様な表情で、白羽はこんな事を言う。その言葉が俺の耳に届き、脳に送られ、情報処理を受けてから俺は
「…………マジで?」
と呟いた。
「えっと……本当、です。ほ、ほら……」
橘さんが、ゆっくりと俺に手を出して来た。その手には、女子が食べるにしては大きい。お弁当箱が乗っていた。
さっきのストレスなんてどこ吹く風。弁当箱を受け取り、蓋を開けると、手作り感満載。とても美味しそうな料理が、綺麗に詰め込まれていた。ご飯は柄などある訳ではなく、ふりかけがかかっているだけのシンプルさだが、その隣のおかずゾーンには、卵焼きから野菜炒め。弁当だと言うのに、バジルチキンまでが並ぶ。
………………やべ、よだれ出てきた。
口元をぬぐい、白羽と橘さんを見ると、二人共弁当を広げ、俺を見ている。俺は弁当を一旦シートに置いて、両手を合わせた。
「「「いただきます」」」
屋上で三人、声が合わさった。




