魂には届かない。 [千文字小説]
「君を好きだった ずっと想っていた」
それだけは、言いたかったんだ。
君と俺とは、いわゆる両想い。
それは、周りの誰もが知っていたし、俺達には当然のことだった。
しかし、そんな想いを言葉にしたことは、告白した時と、君が死んでからの2回だけ。
なぜそれまでに、もっと言わなかったのだろう?
君は、「言わなくてもわかってる」と思っているだろう。
けれど、それを口にしていなかったことの悔しさが、今込み上げてくるんだ。
「くっそ!くっそ!」 ・・・とね。
君は死んでいて、俺は生きている。
例え、悔やんだとしても、君を想ったとしても、この現状は変わらないのに。
なぜ、君が先に死んでしまったのだろう?
僕が先に死んでいれば、君を見送る必要なんてなかったのに。
悲しむ必要なんてなかったのに、君は僕にそれを強要したんだ。
人生とは悲しいものだよ。
現代人が死ぬには、ほとんどが“ガン”にならなければ・・・。
そう、、、そんなことは知っていた。
けれども、自覚があったわけではない。
だから、君が“ガン”と宣告された時には驚いた。
けれども、君を見ていて、本当に元気だったし、楽しそうだったから、安心しきっていた。
だけど、医者は言ったよ。
「末期です」・・・とね。
悲しいかな、これが現実と言うものだよ。
医者が言った途端、君の調子は“ガタン!”と崩れていった。
「あぁ、私死ぬのね」 これは君が死ぬ数日前に発したセリフ。
戦うことのできる体力まで失われた君、
俺達に、希望なんて言葉は無くて。。。
「なんで、君じゃなきゃダメなんだ?」
「俺が不幸にしたのか?俺と出会わなければよかったのか?」
「俺が不幸にしたんだ。 そうだ、絶対に」
「くっそ!! くっそ!! くっそぉぉ!!!」
そう叫び続けた。
どれだけ叫んでも、君の心には響かないのに。
どれだけ愛していても、所詮は届かないのに。
僕も病になったよ。
鬱という、全てを萎えさせる病気にね。
何もかもが嫌だ。
君がいなければ、立ち上がることすらも面倒に感じる。
だって、君がいないのに立ち上がったところで、そこに何があるのか?
俺には分からない。
君が全てだった俺には、皆目理解などできない。
だから、俺は気が付くんだ。
俺が死ねば、君に逢えるかもって。
だって、こっちの世界で、君に出逢えたんだ。
所詮、世界は狭いものさ。
だったら、向こうの世界でも、君に出逢えるさ。
そう思ったから、僕は死ぬことを決める。
逢えるかどうかわからない君のためにね―――――