ドラマは偽医者
主役トレンディ俳優のドラマは放映された。
オフィス街に働く快活なOLさんは寄るドラマに。
触ると俳優に
そしてその斬新さに話題が集まる。
「新しいドラマ見たかしら。キャストがすっごいわ」
今のテレビ出演者って豪華タレント
「皆さんドラマに揃い踏みじゃあないの」
普段テレビで見掛ける俳優の出演数がやたらに多い。
初回から有名どころが出演し目まぐるしい展開があった。
「私も見たわ」
見るつもりなかったのになあ。
「最初からはつまんないかなってねっ。期待しなかったんだ」
第1話『医院の息子たち』
主人公成長前は子役が好演を博す。
「民放のトレンディドラマに子役なんていないわね。なんとなくNHK大河ドラマの様相かしらっと錯覚よ」
テレビ局は気合いが入っている証拠である。
初回から出た子役は賢くてかっこいい小学生である。
「いつも見る恋愛ドラマはもうお腹いっぱいなんだなあ」
恋愛ドラマに不釣り合いな子役の男の子
「あのかわいい男の子ってブレイクしそう」
ワイワイ
「コマーシャルに出たらいいかもね。ヤダァ~私好きになってる~」
キャアキャア
給湯室の片隅はドラマ評論家が集う。
「あまりドラマには期待していなかったんだ。また証拠にもなくトレンディなやつかなって。うんざりしそうだったけどね」
OLさんの社交場給湯室に二人三人と集まって同じ話題を繰り広げていく。
「初回見ただけでよくわかんないね」
有名俳優は
ちょっと出ただけ
子役が目立つから
「次回のさわりだけという指向みたい」
次回に出演する俳優・女優が豪華キャスティングという入れ込み。
ところで
「よく知らないけど」
トレンディ俳優さんがドラマのモデルになるんだって。
モデルがあるの?
「ほらっワイドショーでやっていたでしょ。シンデレラ姫になった女子高生と医者が密会したってやつ」
モデルがある
「実話なんだってね」
子役の脇を固める端役は素晴らしい役者揃いで放映回数を経るたびに続篇を期待させていた。
局は大々的に宣伝を打っている。
初回から期待は大きくトレンディドラマの続編かと思われ高い視聴率を記録している。
「へぇ~あの俳優って医者の息子さん?ねぇねぇドラマって本当のことを演じるんでしょ」
そういえばどことなく知的なイメージもあるわ。高校教師やパイロット役はインテリっぽい雰囲気だったもの。
「医者の息子さんなの?医者にならないで高校中退し芸能界にいるのはなぜ」
給湯室のささやかなドラマ評論は止まらない。テレビには登場していないトレンディ俳優のプライバシーに華が咲く。
ドラマを騒ぐ女性たち
職場の華たるOLたちだけではない。
年齢層が低い女子高生
前宣伝をより信用し遮二無二に初回ドラマを見ていた。
「このドラマって本当のことなんでしょ。本当の俳優や女優が自分たちのことを演じるんでしょ」
女子高のクラスメイトたちは"ドキュメンタリー"という触れ込みに新鮮さを見出だし敏感に反応する。
ドラマという名を借りた世界にとんでもない事実や落とし穴があるのではないかと疑心暗鬼にもなる。
医者の息子さんだよ?
「あのトレンディ俳優ってすごいんだね」
ドラマいつも見ているけど知らなかった。
「サラリーマン家庭じゃあなかったのね。都心の一等地にある大きな医院なんだって」
クラスメイトの話題
ドラマ云々より
俳優の家柄
「医者の家庭ってどんなのかしら」
俳優の環境
「子供の時から婆やがいてお手伝いさんに甘やかされてかな」
ふつうの会社社長の金持ちとは違うのだろうか。
「となると。あの子役は頑張って勉強するんだね。双子だったからひとり医者でひとり俳優なんだろうかなあ」
第2話『幼少~高校生』(子役)
主人公を演じるトレンディ俳優はマネージャーより台本を渡される。
売れっ子脚本家の作品はなんどとなく演じ違和感はなかった。
だが…
医院がドラマの背景にあると知り目を吊り上げた。
「医院に生まれた双子!なんだこれ」
手渡された台本は数回分の脚本だけ
全体ストーリーはわからない。
「おいっマネージャー!」
なんだっこれは
医者のドラマは嫌だっと言ってある。
「白衣を着るのは嫌だってば!」
ドラマのそれは見るからに偽物医師でございます。
「だから俺は医者は演じないぜ」
事務所を通してくれ。
テレビ局に文句だ。
台本を書いている脚本家に苦情を入れてくれ。
我が儘な性格は人気俳優の特権でもある。
好きなドラマだけを受け
やりやすい役柄を選ぶことが出来る
それが売れっ子の立場だと過信する。
「それがですね」
待ってましたとマネージャーは携帯を取り出す。
「事務所への苦情は…『社長』でよろしいでございますか。ハイハイ」
この手の"ややこしい話"を待ってましたと通話する。
「やあっ久しぶりだな。折り入って社長の私に話しがあるんだって」
なんだい?
「ギャラをあげよっかな。休みをたくさんくれ」
それ以外なら承諾してやっても構わない。
のらりくらりな社長である。
「ふぅ~とどのつまり。おまえは医者の役は御免だというわけなんだな」
トレンディ俳優は雑誌やテレビのインタビューで"医者は演じたくない"と広言をしている。
フアンの間でも俳優の異様なまでの医者嫌いは有名だった。
では…
「おまえの我が儘な希望に添うか」
ドラマの役柄は医者以外にしてやる
「病院の医療スタッフに替えてやる。医師から他の資格者に格下げしてあげよう」
それなら
医者の息子は気が晴れるのか
看護士・レントゲン技師・理学療法・医療事務
薬品会社のプロパー
病院の日本庭園の庭師
「好きな役をあげるよ。医者以外なら。病院に携わる役柄なら良いんだろ」
このドラマのオファーがあったことは芸能事務所にタレントの配役がわんさかときた。
「おまえが主役を務めることは間違いない。今をときめくトレンディな俳優はおまえしかいない」
だが単にだ
「医者がやりたくはないと我が儘ならば…」
事務所はテレビ局と主役を含む複数のタレント契約を締結している。
「スポンサーさんとも提携済みなんだ。つまりガタガタ言われても」
すべては後の祭り。
「なあっ~困ったことはもう言いっこなしだぜ」
事務所は周章てないのである。
社長はこの手の所属タレントを幾多も抱えて商売をしている。
タレントの我が儘やスキャンダルぐらいでガタガタしないのである。
「どうだろうかな。大人しくおまえがドラマの主役を演じてくれたら問題はない」
毛嫌いしていることが有名な"医者"に化けてドラマの主役をしてくれたら
芸能事務所はわんさかオファーが舞い込み潤っていく。
「わかったか!台本をもらいたまえ」
ドラマは面白いらしい。
売れっ子脚本家が渾身の力を入れた問題作
「おまえの自伝的要素があるんだろ」
事実は小説より奇なり
ドラマを演じることは俳優の筋道である。
脚本はドキュメンタリーを標榜している。
"モデルの存在"をおざなりにしないのである。




