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第17話:教授回:500年後の歴史、絵画の迷宮

――あれから、500年の歳月が流れた。


 大陸最大のアルカディア学術都市にある、王国大学院歴史講義棟。

 そこでは一人の歴史学の権威である老教授が、熱心にメモを取る学生たちを前に、興奮気味に教鞭を執っていた。


「諸君、静かに! 今日は歴史学、そして美術史における世紀の大発見について講義する!」


「その前に、教科書に書かれている君たちもよく知っている『簒奪の7日間』で残された有名な言葉を紹介する」


***



『聖母リーゼの手記』より引用

「リオン、あなたの救済は本当はご自身のためだったんでしょう?……私だけは知っているんだから。本当にずるい人」

――聖母リーゼ(聖母戴冠より五年後、かつてのアルカディア王宮の一室にて綴られたとされる断片より)



『現代語訳 大陸統一史・第四巻(ゼノビア崩壊前夜編)』より引用

「ゼノビア帝王。私にゼノビア帝国の全てを渡してもらうよ」

――愚帝リオン(簒奪の七日間始まりの日にて)



『現代語訳 大陸統一史・第四巻(ゼノビア崩壊編)』より引用

「愚かな人民よ、あなたたちが納得するなら、私を殺しなさい。そして私とリオンがこの国をどうしようとしたのか、私を殺した後に思い知るがいい」

――銀魔女シルヴィア(帝都最後の夜、反乱軍の前にて)



『ゼノビアへ物資を運ぶ船員の航海日誌』より引用

「リオン、認めんぞ。貴様の欲望おもい一つで、この国をどうこうするなど烏滸がましいと思わぬか?……私は断じて、認めぬ」

——(旧ゼノビア改革派指導者グレモリーが語る言葉として)



***



「これらは君たちが知っている歴史だね。」


「さて……」


 教授は投影機を作動させ、巨大なスクリーンの前に立った。

 そこに映し出されたのは、旧ゼノビア帝国王宮の隠し扉の奥底に厳重に保管され眠っていた一連の絵画群――通称『ルネサンス』の作品だ。



「これは、今まで史実において語られることのなかった、のちに『希代の愚帝』と蔑まれることとなるリオン。そしてそのリオンをたらしこみ、国を混乱へと導いた銀魔女シルヴィア。彼らの真の意図を暴く、新しく発見された史料である!」


 教授は教鞭でスクリーンを叩き、言葉を強める。


「まず、諸君に事前に叩き込んでおきたい知識がある。この時代の絵画、特にこの『ルネサンス』期の作品を紐解く上で、欠かせない概念がある。

 いいかね? 当時の画家たちは、描きたいものをそのまま描くような真似はしない。描かれた物の形、色、配置……そのすべてに特定の意味を付与したのだ」


 教授は板書を続けながら、さらに熱を帯びていく。


「たとえば、そこに百合が描かれていれば『純潔』を。

 髑髏どくろがあれば『死を想え(メメント・モリ)』を。

 これら図像学的記号の知識がなければ、我々は歴史の真実という迷宮で遭難することになる。この愚帝リオンという男は、一見無能を装いながら、こうした『高度な知的ゲーム』を仕掛ける極めて狡猾な統治者だったのだよ!」


 教授の熱弁が響く中、最前列に座る女子学生アリアは、手元のペンダントをそっと開いた。

 中には、鮮やかな赤で描かれた一輪の薔薇の絵が入っている。


「先生。……たとえば、赤の薔薇にはどういう意味があるんですか?」


 教授は眼鏡の奥の目を光らせ、満足げに頷いた。


「素晴らしい質問だ、アリア君。薔薇は『流血の予感』や『権力への執着』という意味もあるが、一般的に『情熱的な愛や欲望』の暗喩だ。

 ……いいかね? この時代の絵画において、『ただの花』などというものは存在しない。すべては、描かれるべき大きな筋書きを補完するための『装置』なのだ!」


 教授は再びスクリーンを指し、声を張り上げた。


「さて、今回発見された絵画を見てみよう。これは単なる肖像画ではない。一部の学者はこれを『日常の風景』と呼ぶが、それはあまりに浅薄な見方だ。

 これは愚帝リオンが、周りを欺き、自身の欲望を持って、世界を『不毛という名の厄災』で塗り替えるという凄まじい宣戦布告……。

 高度に暗号化された『邪悪な予言書』なのだよ!」


 アリアは小首を傾げ、自分のペンダントの中の薔薇をじっと見つめた。


(……ただの綺麗な花にしか見えないんだけどなぁ。歴史って、そんなに『裏』を読まないとダメなものなのかな?)


 教授の熱弁は、もはや「絵画」を超え、「史実」を裏付けるための狂気じみた解釈へと突入していく。


「諸君、心して見るがいい。これが、大陸を混乱の渦に陥れた『愚帝』と『銀魔女』の呪いのメッセージだ!」

読んでいただき、ありがとうございます。


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