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第15話:ゼノビアの皇帝と、隠し扉の奥の棚

 大陸随一の威容を誇るゼノビア帝国の帝宮 。その最奥にある謁見の間は、今日も石像のように微動だにしない精鋭騎士たちが並び、重苦しいまでの静寂が支配していた 。

 玉座に深く腰を下ろすのは、冷徹なまでの合理性で帝国を導く覇王、ゼノビア皇帝である 。


 そこへ、アルカディア王国からの使者が、巨大な荷を携えて現れた 。


「申し上げます。アルカディアの第一王子、リオン殿下より 。我が国の第一公女シルヴィア殿下の手紙、ならびに贈り物が届いております」


「……ふむ。アルカディアの第一王子からか。そして、シルヴィアからの便りとな?」


その名が出た瞬間、皇帝の纏っていた覇気が、霧が晴れるように霧散した 。


「……ふむ、シルヴィアからの手紙であるか。……シルヴィア? シルヴィアたん! シルヴィアたんからの手紙だってえええ!? チュッチュ」


皇帝は玉座から身を乗り出し、使者から手紙をひったくると、公衆の面前で封書に頬ずりをし始めた 。並み居る側近たちは、その光景を見ても眉一つ動かさない 。


「そっかー、シルヴィアたんはカスピとかいう田舎で頑張ったんだねぇー。パパは嬉しいぞぉ。ふむふむ、リオンとはうまくやってるのかなぁぁ? ……『彼はいい加減ですが、私がしっかり見守っています』だって! 聞いたか国務尚書ぉ! おお、なんという責任感! ぐうたら王子を教育してやっているのだな、さすが私の――」


そこで、皇帝の指が止まった 。

 垂れ下がっていた目尻が、鋭利な刃物のように吊り上がる 。一瞬にして、謁見の間に「覇王」が帰還した 。


「…………クローバーだと? 『彼がクローバーを植えるとなぜか生産量が劇的に上がりました。彼は底知れない御方です』……とな?」


皇帝は、手紙を持ったまま立ち上がった 。その瞳には、もはや親バカの影はない 。


「おい。シルヴィアが、クローバーによって不毛の地の生産量が上がったと報告してきた。……あり得るか?」


「はっ。シルヴィア皇女殿下がそうおっしゃるのであれば、まごうことなき真実かと愚考いたします」


側近たちは一切の疑いを持たず、深く頭を下げた 。彼らににとって帝王の言葉は絶対である 。

 潜む影から現れた人物がゼノビア皇帝に一言耳打ちをする 。


「私もそのように報告を受けております」


「よし。ならば我が国でもすぐにクローバーを植えて実証させろ。……して、この贈り物はなんだ!?」


皇帝の鋭い視線の先で、衛兵たちが巨大な荷の梱包を解いた 。

 現れたのは、ルネが描いたあの大作『聖なる家族の肖像』である 。そこに描かれた、羞恥に染まりながらも神々しく輝く娘の姿に、皇帝は満足げに深く頷いた 。


「……ふむ。シルヴィアたんの絵画か。きゃわいい……いや見事であるな。……いつも通り、収めておけ」


「はっ。ただちに保管庫へ!」


「……アルカディアへ返礼を。リオン王子には、我が娘を支えてくれていることへの礼を伝えよ」


「はっ。仰せのままに」


衛兵たちは慣れた手つきで、皇帝だけが入室を許される「皇帝の大事なものを入れる部屋」と書かれた隠し扉の奥へと、巨大な絵画を運び込んだ 。

 その際、一人の衛兵が絵と共に送られてきた作者の名前に目を留めた 。


『ルネサンス』


(……作者の名前か。陛下が大切にされる品だ、棚を分けて管理せねば)


衛兵は保管庫の巨大な棚に、迷いのない筆致でラベルを貼り付けた 。


 【ルネサンス】と

読んでいただき、ありがとうございます。


タイトルを本編に沿うように少し変更しました。


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