朽ちる定めのぬいぐるみ
どうぞわたしに触れないで。
わたしは朽ちる定めのぬいぐるみ。
この森の中に捨ておいてください。
倒れ苔むし腐り果てた木の根に置かれたのには理由があるのです。
可愛いぬいぐるみだからといって、抱き上げたりしないでください。
わたしは誰の物にもならない。
わたしの大事なお友達はひとりだけ。
わたしの体に触れないで。
そこにある白骨にも、触れないでください。
その骨はわたしの大切な、お友達の骨です。
わたしを大事に大事に抱いていた、小さな小さなプリンセス。
この森の奥へと逃げ延びて、それでも剣の露と消えた、わたしの可愛いお友達の骨なのです。
悲鳴を上げて放り投げたりしないでください。
ああ、プリンセス。痛かったでしょ?
こちらへ、どうぞこちらへ。
もどっていらして、白い骨のプリンセス。
わたしはあなたのぬいぐるみ。
大事な、大事な、お友達。
ずっと一緒にいましょうね。
バチンと弾いて砕いたあの人間が、どうなったかは分かりません。
そんなことには興味はないの。
あぁ、わたしも早く朽ち果てたい。
わたしの体が惨めに汚く朽ち果てて、この森に溶け込んでしまったら。
残るのは身軽なわたし。
中綿よりもふわふわな、とっても軽いわたしになるの。
ぬいぐるみの体を脱ぎ捨てて軽いわたしになったなら、一緒に虹の向こうへ渡りましょう。
ねぇ大事なプリンセス。
わたしを抱きしめることも、わたしの体に顔を埋もれさせることも、できなくなったプリンセス。
ただ立って、わたしを見下ろすしかないプリンセス。
そんなに悲しい顔をしないで、大事な、大事な、お友達。
わたしはあなたが大好きよ。大好きよ。
だからお願い、そこにいて。
わたしの体が朽ちるまで。
もう誰にも奪わせない。
もう少し、もう少しだけ待っていて。
この体が朽ちるまで。




