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朽ちる定めのぬいぐるみ

掲載日:2026/02/04

 どうぞわたしに触れないで。


 わたしは朽ちる定めのぬいぐるみ。


 この森の中に捨ておいてください。


 倒れ苔むし腐り果てた木の根に置かれたのには理由があるのです。


 可愛いぬいぐるみだからといって、抱き上げたりしないでください。


 わたしは誰の物にもならない。


 わたしの大事なお友達はひとりだけ。


 わたしの体に触れないで。


 そこにある白骨にも、触れないでください。


 その骨はわたしの大切な、お友達の骨です。


 わたしを大事に大事に抱いていた、小さな小さなプリンセス。


 この森の奥へと逃げ延びて、それでも剣の露と消えた、わたしの可愛いお友達の骨なのです。


 悲鳴を上げて放り投げたりしないでください。


 ああ、プリンセス。痛かったでしょ?


 こちらへ、どうぞこちらへ。


 もどっていらして、白い骨のプリンセス。


 わたしはあなたのぬいぐるみ。


 大事な、大事な、お友達。


 ずっと一緒にいましょうね。


 バチンと弾いて砕いたあの人間が、どうなったかは分かりません。


 そんなことには興味はないの。


 あぁ、わたしも早く朽ち果てたい。


 わたしの体が惨めに汚く朽ち果てて、この森に溶け込んでしまったら。


 残るのは身軽なわたし。


 中綿よりもふわふわな、とっても軽いわたしになるの。


 ぬいぐるみの体を脱ぎ捨てて軽いわたしになったなら、一緒に虹の向こうへ渡りましょう。


 ねぇ大事なプリンセス。


 わたしを抱きしめることも、わたしの体に顔を埋もれさせることも、できなくなったプリンセス。


 ただ立って、わたしを見下ろすしかないプリンセス。


 そんなに悲しい顔をしないで、大事な、大事な、お友達。


 わたしはあなたが大好きよ。大好きよ。


 だからお願い、そこにいて。


 わたしの体が朽ちるまで。


 もう誰にも奪わせない。


 もう少し、もう少しだけ待っていて。


 この体が朽ちるまで。

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