第二十二話:運命の伏線回収
ルシアンの「愛の奴隷」宣言と暗殺未遂事件を経て、ライラは「愛」という新たな論理を学習し始めまた。ルシアンは「愛の報酬」として、ライラに「完璧な休日をデザインせよ」と命令したのだ。
ライラが設計したのは、「公爵の満足度を最大化する」という論理に基づいた完璧なデートプラン(博物館、オペラ、高級レストランという効率的なルート)だったが、ルシアンは非合理的な愛の衝動に従い、そのプランを完全に無視した。
彼が向かったのは、公爵邸から遠く離れた、静かで美しい湖の畔だった。
ルシアンは、ライラの手を取り、湖畔の静かな道をただのんびりと歩いた。ライラにとっては、これは「何の意味もない、非効率な時間の浪費」でしたが、ルシアンの「愛の命令」に従い、論理を捨てて付き従う。
ルシアンは、その静けさの中で、ライラに最大の秘密を打ち明けることにした。
「ライラ。君は、君が持つ全ての論理で、私がなぜ君を公爵家の一員として迎え入れたのかを、恩義の返済という言葉だけで処理しているのだろう?」
ライラは静かに頷いた。「それが、最も合理的で、事実に基づいた結論です」
ルシアンは、湖面に光るさざ波を見て、微かに微笑んだ。その微笑みは、いつもの支配的なものとは違い、深い陶酔を含んでいた。
「フフッ。君の論理はいつも完璧だ。だが、その論理には、致命的な欠落がある」
ルシアンは、ライラの手を握る力を強くした。
「ライラ、君と私の運命は、君がクレール伯爵家で没落するよりも、ずっと以前から始まっていたのだよ」
「私が幼少期、ヴァイス公爵家の跡継ぎとして、退屈な社交界を訪れた時のことだ」
ルシアンは、ライラが全く覚えていないであろう、ライラが8歳か9歳頃の記憶を語り始めた。
「君の父である故・クレール伯爵が、君の知性を誇りたがり、社交界の賢者たちの前で、君に複雑な数字の計算や、難解な歴史の論証をさせていた。君は、感情を一切交えず、正確無比な論理で、それら全てを処理してみせた」
ルシアンの瞳は、初めてライラの知性に触れた時の衝撃を映していた。
「あの時、私は悟った。『感情』という名の非効率的な泥沼に満ちたこの世界で、君だけが、『私と同じ、純粋な論理の光』を持っていると。君の知性の高さは、幼い頃からすでに完成されていた。あの瞬間、私は決めたのだ。この世界が、君の知性を『道具』としてではなく、『脅威』として見なす時、私が、君を支配し、所有し、君の論性を永遠に私だけのものにする、とね」
ライラは、驚愕した。彼女の「恩義の返済」という論理の根底には、「ルシアンによる幼少時からのマーク」という、彼女の知性を巡る「運命」が存在していたのだった。
(私の「論理的な生」は、彼にマークされたことで始まった。私の知性は、彼にとって最も価値のある資産だった。ならば、彼に支配されることが、私の知性にとって最も合理的な結果である、という新たな論理が導き出される……!)
ルシアンは、ライラの驚愕した瞳を見て、最高の愛の満足を得た。
「だから、ライラ。君が私に愛の論理を学ぶことは、運命なのだ。君の論理的な生を、非合理的な愛の支配へと昇華させること。それが、君の真の使命なのだよ」
この「運命」の物語は、ライラの「愛の論理」を論理的に正当化し、二人の歪んだハッピーエンドを、より強固でロマンチックなものにしたのだった。




