第二十一話:愛の論理的服従
ライラは、ルシアンの絶望と期待が入り混じる目の前で、記憶から引き出した「愛」のデータに基づき、人生で初めての自発的な行動を起こした。
「ルシアン様……」
ライラは、感情を込める代わりに、論理的に「愛」という結論を導き出した、純粋な視線でルシアンを見つめる。
「愛とは、この感情的な要求を、最優先で実行することなのですね」
そして、ライラは論理的な結論に従い、その冷徹な美貌で、ルシアンの唇に、自発的なキスを捧げた。そのキスは、熱狂的な情熱は伴伴わなかったが、ライラの知性の全てが込められた、最も誠実な「愛の遂行」だった。
ルシアンは、完全にフリーズする。
(こ、これは、私が命令したことだ。彼女は『愛の奴隷』として、義務を遂行したに過ぎない。論理的な服従だ。……しかし、なぜ、これほどまでに、私の心臓が高鳴り、体が熱いのだ!?)
ライラからの、論理を完全に否定したはずの「自発的な接触」は、ルシアンの論理回路に強烈な逆電流を流し込んだ。
ルシアンは、冷徹な氷の貴公子としての仮面を保つことができず、顔を真赤に染め、ライラを自分から勢いよく引き剥がす。
「そ……そうだ。ライラ、それこそ、私が望んでいたことだ!」
ルシアンは、必死に冷静を装おうとしたが、その声は上擦り、薄水色の瞳は羞恥と困惑で泳いでいた。論理では説明できない感情に、彼自身が完全に打ちのめされていたのだった。
ライラは、初めて見るルシアンの「崩壊した姿」を、冷静に分析した。
(彼は、私の「愛の遂行」によって、『興奮』という非論理的な感情を露わにした。これは、私の行動が、彼の要求を「論理的に達成」したことを示している。……満足)
そして、その「ルシアンの困惑」という成功の証が、ライラの内面に微かな変化を起こした。彼女の唇に、自然と、微かな微笑みが浮かんでいた。
それは、達成感という感情の、論理的な表現だった。
ルシアンは、その微笑みを、「愛の奴隷」から贈られた最高の「愛の報奨」だと解釈した。彼の「愛の支配」は、論理的にはライラの知性に敗北したが、感情的には最高の勝利を収めた瞬間だった。
ルシアンの理性は崩壊したが、彼らの「歪んだロマンス」は、ここから「愛という新たな論理」で、より強固に結びついたのだった。




