第十一話:論理による断罪
裁判所の正面玄関。重厚な石造りの建物が、冷たい朝日に照らされている。
ルシアンは、今日のための誂えられた黒と白の正装に身を包み、蒼天を見上げた。そのプラチナブロンドが朝日を反射し、まるで神話の英雄のようだ。
「素晴らしい復讐日和だ」
彼は美しく微笑んだ。その瞳の奥には、知的な興奮と、勝利への確信が燃えている。
「ライラ、舞踏会でのデビュタントに続き、今日も世間に君の知性を披露しなくてはならない。彼らが君から奪ったものを、君自身の論理で、公的に断罪するのだ」
ルシアンの言葉は、愛する者への激励ではなく、最高の共犯者への、支配的な命令だった。
「はい。準備万端、寸分の怠りもありません」
ライラは、ルシアンの隣で、白銀のサファイアの指輪を光らせながら、淡々と応じた。彼女の表情は、デビュタントの時と同じく無表情な完璧さを保ち、復讐という最終目的を果たすための道具としての役割に徹している。
「フフフ。良い返事だ。さぁ、華麗なる復讐劇の最終章の幕が上がる!」
ルシアンはライラの手を取り、氷のような冷たさのエスコートで裁判所の階段を上り始めた。その背後には、ヴァイス公爵家の権威が壁となって立ちはだかっている。
彼らの行く手には、すでにセシリア一族が、不安と絶望に顔を歪ませて待っているはずだ。
ライラの知性とルシアンの権力が融合した「論理の鉄槌」が、今、彼らを社会的に完全に消滅させるために振り下ろされようとしていた。
舞踏会でのお披露目があったせいか、裁判の傍聴席は満員御礼状態だった。天下に名だたるヴァイス公爵とその可憐な婚約者が原告となるなんて、これ以上ないゴシップといえた。貴族たちは、清廉な公爵の愛の物語と、没落令嬢の劇的な復讐劇という二重のドラマに飢えていたのだ。
その中、ルシアンにエスコートされたライラは、寸分の乱れもない優雅さで、傍聴席からの熱い視線を完全に無視して法廷に入ってきた。彼女の白銀の装いと青白いサファイアの輝きは、冷たい法廷に圧倒的な光を持ち込んだ。
対照的に、被告席に座るセシリア一族は、青白く怯え、視線を彷徨わせていた。セシリアは、舞踏会での屈辱と、ルシアンの権威が背後にあるという絶望的な現実に打ちのめされている。
その様子は、まるで光と闇の対比のように、あまりにも劇的すぎた。
「それでは、開廷します」
裁判官の開廷の声が静かに響き、その声で法廷は張り詰めた静寂に包まれた。




