第1話 プロローグ
宮廷の廊下の闇は、真っ暗ではなく、ベルベットのように濃く、包み込むようなものだった。それを切り裂くのは、金色の燭台で揺らめく炎の舌だけで、祖先の肖像画で飾られた壁には、落ち着きない影を投げかけていた。空気は、蝋、古い木材、そして不安の香りで濃厚だった。
その生ける闇の中、厳かな静寂を破るのは、ただ必死で、慌ただしい足音と、嗄れた、途切れ途切れの息遣いだけだった。廊下を男が走っていた。彼の高価な胴衣は汗で濡れ、顔は疲労というよりは、極度の緊張で歪んでいた。彼は、まるで死そのものに追われているかのように走っていた。
彼は重い樫の扉を勢いよく開け、広々とした書斎に闖入した。室内では、分厚い黒檀の机の向こう、たった一つの魔法ランプの灯りの下で、若い男が座っていた。彼の両側では、まるで彫像のように、青いマントを纏った二人の衛兵が静止している。入って来た男は、息をほとんど整えられず、棒のように硬直し、空気を飲み込もうとしていた。
「卿……コーヴィンス・オキンシル様が……」彼は吐息と共に言った。その言葉は書斎の静かな空気の中に浮かんだ。「女王陛下が……」。彼は大声で咳き込み、口元にハンカチを当てた。「イザベル・リバークロフト女王陛下が……ご出産されました。王女をです。」
机のそばの若い男――卿コーヴィンス――はゆっくりと振り向いた。彼は二十五歳ほどに見え、優雅で洗練された面立ちには鋭い知性が窺えた。最初、彼の顔は無表情な仮面のようだったが、やがて口元に幸せの小さな火花が踊り、目には本物の炎――狂おしい、制御不能な歓喜――が燃え上がった。彼は今にも飛び上がり、重要な国家文書の真っ只中で躍りだしそうに見えた。
しかし、代わりに彼はただ滑るように椅子から立ち上がった。抑制――それは彼の第二の天性だった。彼の動作は洗練され、静かな権力を感じさせた。
「余はイザベル陛下のもとへ参る。即刻だ」彼の声は鋼のように、平然と冷たく、内側で荒れ狂う激情の影すら感じさせなかった。
彼は銀縁取りの濃紺のマントを肩に羽織ると、部屋に再び静寂が満ちるのを残して、立ち去った。
王族の居室には、静かで、疲労に満ちた恩寵が満ちていた。夜は既に明け、夜明けが迫っていたが、ここではまだハーブと微かな血の香りが漂っていた。巨大なベッドの中、シルクのシーツの海にほとんど埋もれるように、イザベル女王が横たわっていた。彼女の美しい顔は青白く、汗の滴で覆われており、しおれかけた花に宿る朝露のようだった。傍らでは、優しく彼女の濡れた髪を撫でながら、エルドレッド国王が座っていた。普段は厳格な彼の顔は今は柔らかく、目は限りない優しさと心配で輝いていた。
主治医は、小さな、泣き叫ぶ包みを慎重に腕の中に抱えていた。別の医師が、少女を極上の白いタオルで包むのを手伝っていた。医師のわずかな手の動き、嬰児の額へのかすかな指先の接触――そして一瞬、空気が柔らかな黄金の光、静かな診断魔法で照らされた。
「お祝いを申し上げます、陛下。お嬢様はまったくご健康でございます」医師は厳かに宣言し、軽く会釈をすると、嬰児を、力強くも今は非常に慎重な国王の腕の中に渡した。
「感謝する」エルドレッドの声は震え、その小さな顔に向けられた彼の眼差しは、世界全体を温められるほどの衝撃と愛を表していた。
「エルドレッド……私にも見せて……」イザベルはかすかに囁いた。彼女のまぶたは、筆舌に尽くしがたい疲労からようやく持ち上がるほどだった。
国王は慎重にベッドの端に腰を下ろし、娘を妻に差し出した。彼女は最後の力を振り絞ってそれを受け取り、胸に抱きしめると、青白い頬を静かで、清らかな涙が伝った。彼女は微笑んだ――その微笑みの中に、彼女の人生の全ての意味があった。
「エイラ……私の小さな……ずっと貴女を待っていたの……」彼女の囁きは子守唄のようだった。
イザベルは目を閉じ、癒やされる眠りに落ちていった。顔には限りない幸福が漂い、腕の中には娘がいた。彼女の呼吸は均等で穏やかになっていった。